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次世代建設DX
次世代建設事業のDX(Degital Transformation) |
2023.6.3 |
土木学会誌,第108巻,第3号(2023) 特集 「こころ弾む次世代建設現場」より
建設技術者・技能者の高齢化と若年層不足という直面する課題に対し、2015年12月、国交省により「i-Construction」が表明されたことで変革が始まった。各企業による変革が始まって7年、現場の状況は大きく変わり、UAVによる地形測量と土量算出は一般的となり、2023年度からは国交省発注の小規模工事を除くすべての詳細設計および工事でBIM/CIMが原則適用となる。
1)座談会その1「現場の生産性と労働環境 (平成初期からの)30年の軌跡を振り返る−今こそ好機、ICTで現場を変える−」
・バブル後、リーマンショック、政権交代(民主党政権政策「コンクリートから人へ」)でしぼむ投資に対して、1993年に始まった長崎県雲仙普賢岳火山災害に対する無人化施工が契機となり建設ロボット技術の発展があった。
・日本の総人口は'08年をピークに減少に転じており、人手不足の中、他産業ではICT (Information and Communication Technology)やデジタル技術の開発・普及が進み、社会的にデジタル・トランスフォーメイション Digital Transformation(DX)の波が押し寄せている。
・ICTやDXを導入する意義の一つは効率化・省力化にあるが、もう一つ、技術者の技術力を高めることにある。
・顧客からCIMによって3次元データをもらっても、設計図書は2次元図面。3次元と2次元のデータがリンクしていないので、2次元図面を修正して3次元データに反映させることが出来ない。それを双方向で反映できるようにするなど利便性が上がれば、普及は加速するだろう。
2)座談会その2「次世代の建設現場を描く−技術革新の起点であり続ける現場へ−」
・時短や働き方改革、労働環境改善による理想の建設現場像について議論された。
・中小の建設会社においては、現場の技術者不足と働き方改革に対して、ICTのデータ処理と様々な書類作成の後方支援が必須であり、「建設ディレクター」という資格、教育制度が生まれ、新しい職域が創出され、実積が出てきた。
3)新技術の開発状況と開発に携わる人の思い
・3次元複合現実MR技術(MS社開発HoloLens)を活用した施工現場の生産向上の取り組み、革新的技術として3Dプリンターによる無筋およびRC構造物の自動作製技術、プレキャスト工場の生産性向上の取り組み、スウェーデンの鉱山等で実用化されているトンネル施工の完全オートメーション化、油圧駆動重機のリアルハプティクス技術などについて紹介されている。
表-1 建設工事と土木設計のDXのと課題(当サイト私案)
ICT&DX |
建設工事 |
計画・調査・設計 |
3D-CAD |
[BIM] 2D-CADとの連携使用
(工事管理および設計変更
に迅速対応) |
[CIM] 2D-CADとの互換性
確立,3D-CADによる設計
技術 |
レーザ測量 |
3次元地形測量(設計変更,
土量計算)設置型とドロー
ン型 |
任意断面取得による設計
の高精度化(現場状況に
適合) |
ドローン |
高所危険作業の改善
近接空中映像の活用 |
高所構造物劣化調査
近接空中映像の活用 |
ICTによる書類
作成・統括 |
迅速な作成・管理システム,
建設ディレクター,時短と
業界のイメージ改善 |
発注者対応の煩雑な書類
作成の迅速化と時短 |
MR技術 |
3次元複合現実(MR; Mixed Reality) 技術の利活用Microsoft HoloLensを使ったアプリ(Holostruction)が開発され,建設生産プロセスを可視化する.
3D-CADデータを実物大の直感的イメージで複数人が共有可能となる. |
動く3次元パース,施工計画の可視化,合意形成への活用,遠隔地の打合わせや会議のリモート化によるSDGs |
建設機械・作
業全自動化 |
ダム・トンネル・海洋・災
害復旧の危険作業安全化 |
機械・システム設計 |
3Dプリンター |
型枠なしの無筋CおよびRC構
造物,建築物の自動製作 |
土木設計物の模型化,高
耐久化,補修補強工法へ
の展開 |
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2023.6.3 |
同上誌 木ノ村幸士,大成建設(株)「3Dプリンティングとの出会いと建設イノベーションへの挑戦」
・3Dプリンティングを活用してコンクリート工事に変革を起こそうとするムーブメントが今、海外を中心に大きく広がりつつある。
・建設用3Dプリンティング材料を開発した後、材料押し出し方式の3Dプリンターを開発し、2018年には意匠的な部材を型枠なしでデザイン通り作成出来るところまで開発が進んだ。しかし、対象はあくまで無筋コンクリートであった。
・PC技術と組み合わせ人が渡れる歩道橋を製作した。
・その後、短繊維補強モルタルを使い外殻を3Dプリンティングで構築し、内部に鉄筋を建て込み、高流動コンクリートを打ち込んで省人化施工を試みたデモ橋脚の構造実験を行った。
・海外では3Dプリンティングで複数階の建物を作ったり、橋を架けた等の事例が増えている。しかし、この新技術の導入は大変ハードルが高く、個別に構造審査を受けているのが実情で、社会に実装するためには構造審査に多大なコストと労力が、かかっていることが課題である。
(※)3Dプリンティングは日本でも機械分野や模型工作ですでに利用されている。今後の動向に注目したいと思います。
(勉強中)
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MR技術を活用した施工現場における生産性向上に関する取り組み |
2023.6.3 |
同上誌 中靜真吾,小柳建設(株)専務取締役COO
1.建設現場での業務改善の試行錯誤の中でMR技術に衝撃的に出会う
Microsoft社が開発した HoloLensによって、SF映画に出てくるような3次元複合現実(MR; Mixed Reality) 技術が実現している。このMR技術の建設業務での利活用を目的とし、Microsoft社とアプリケーションを共同開発した。アプリはホロストラクション(Holostruction)と名付けた。
2.本アプリケーションの主な機能
・3次元シミュレーション機能
3D-CADデータや書類データを、実物大のモデルによる直感的なイメージとして複数人で共有できる。
・リモートコミュニケーション機能
時間的・場所的制約から解放され、新しいワークスタイルが実現する。
・タイムスライダー機能
登録した3次元モデルに時間や段階を設定することで、連続的な時間属性をもった4次元データが完成する。これにより、すべての建設生産プロセスが可視化し、自由な時間の操作による段階確認を行うことが実現し、様々なシナリオに活用できる。
3.実証試験とその効果
・国交省の革新的技術導入プロジェクト(PRISM)にて、2019〜2021年にわたり次の工事で本アプリの実証試験を行った。
1)分水路地山掘削工事;ホログラフィックで現場を可視化し、施工時の課題を洗いだした。(フロントローディング)
2)バイパス工事;非対面の打ち合わせを行い、月5回の対面打ち合わせの3回が置き換え可能であること確認した。また、リモートの打ち合わせのため移動時間の60%を削減した。
3)JR跨線橋軽量盛土工事;大容量点群データの最適化作業について、最新テクノロジーであるリモートレンダリング技術を活用し、90%の時間削減効果があった。
4.今後の取り組み
MR技術の建設現場への利用はスタートしたばかりであるが、建設業の現状に鑑み、DXの推進は必須であり、次のような課題がある。
1)3次元データやICTデータを如何に利活用するか
2)BIM/CIM工事の拡充
3)3次元データを扱える人材の教育
また、本アプリは建設業の働き方そのものを変えうるソリューションである。これまで本アプリの導入を検討している企業や教育機関でデモンストレーションを行っており、次の世代へ「建設業の明るい未来」、「かっこいい建設業」を示すことが出来るという実感がある。これからの建設技術者はICT化を強力に進める事で、より安全でよりスマートな働き方にシフトすべきであると考える。
(勉強中)
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