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粘土鉱物試験


粘土鉱物
2022.7.12
 粘土鉱物とは、土の粒度試験で細粒分(径75μm以下の土粒子)のうち径5μm程度以下の粘土を構成する細かな鉱物であり、雲母類(イライト)、カオリナイト、緑泥石(クローライト)、モンモリロナイトなどがある。土壌、海の底質、泥質岩、火山噴出物や岩石の風化物、熱水変質岩等に含まれる。

粘土鉱物の種類と膨潤性粘土鉱物
2022.7.12
1.粘土鉱物とは?

Q1 粘土鉱物にはどのようなものがありますか。
 粘土鉱物のほとんどのものはフィロ珪酸塩鉱物に分類され、層状の結晶構造を持ち、薄板状の形態をもちます。一般的には次の四種類がある。
 @雲母鉱物(イライトや絹雲母ともいう)
 A緑泥石
 Bモンモリロナイト(正しくはモンモリロナイト族あるいはスメクタイトと呼ぶ)
 Cカオリナイト

他に次のようなものが産する。
 D混合層鉱物
 Eバーミキュライト(ひる石)
 F蛇紋石
 Gアロヘン
 H加水ハロイサイト,ハロイサイト

Q2 膨潤性粘土鉱物にはどのようなものがありまか。
 上記粘土鉱物のうち以下のものが膨洞性を示します。
 @モンモリロナイト(モンモリロナイト族,スメクタイト)
 A混合層粘土鉱物(モンモリロナイト−雲母混合層,モンモリロナイト−緑泥石混合層など)
 Bバーミキュライト
 C蛇紋石

Q3 粘土鉱物の膨潤現象はなぜ起こるのですか。
 モンモリロナイトなどの膨潤性粘土鉱物は層間に交換性イオンと層間水を持つことで他の粘土鉱物と異なり、水を追加すると水分子層が次々と平行に層間に積み重なり、層間隙を拡大する。これを内部膨潤とよぶ。
 また、粘土鉱物の粒子間に水分子が入りこみ粘土粒子の集合体全体を膨潤させる現象を外部膨潤とよぶ。
 実際、膨潤性粘土鉱物を含む岩石や土質の膨張現象は内部膨潤と外部膨潤の両者の総合作用であるとされている。

2.粘土鉱物の試験・分析法
2022.7.12
2.粘土鉱物の試験法

Q4 粘土鉱物の定性分析,化学組成分析にはどのようなものがありますか。
 粘土鉱物の定性分析の方法には次のようなものがあります。
 @X線回折(X線粉末回折)〜鉱物種の認定(同定)
 A示差熱分析〜同定、脱水反応などの熱特性
 B赤外線分析〜同定、赤外線吸収スペクトル
 C偏光顕微鏡〜産状(初生鉱物やガラスを置換しているか、空隙に産するか)偏光顕微鏡の平行ニコルと十字ニコルでの光学特性は?
 D電子顕微鏡(透過型、走差型)〜特徴的形態

 粘土鉱物の化学組成分析には次のものがあります。
 @化学分析(全岩分析)〜化学組成
 AEPMAによる鉱物の化学分析〜微小部分の化学組成
 Bエネルギー分散型X線分析〜電顕像上の点分析

 これらのうち粘土鉱物種の認定(同定)にはX線回折試験が信頼性、経済性ともにすぐれている。粘土鉱物が初生鉱物をどのように置換しているかとか変質の程度を知るには偏光顕微鏡観察が用いられる。化学組成分析は、岩石学や鉱物学で一般に使用される分析であるが、粘土鉱物の化学組成的な特徴を詳細に調べる必要がある場合に用いられ、土木工学的には優先度は低い。

Q5 膨潤性粘土鉱物の定量法にはどのようなものがありますか。
 1)化学分析による定量法
 ・陽イオン交換容量(CEC)分析
 ・メチレンブルー吸着率
 2)X線回折法による定量法
 ・内部標準法
 ・鉄道技研法(1986)
 3)簡易吸水量試験による定量法
 ・鉄道技研法(1986)
 4)薬品に対する反応を用いたおおよその定量法
 ・尿素溶液に浸した場合の崩壊率(北海道開発局、1985)
 ・パラフェニレンジアミンによる呈色反応(青色)

 以上の方法の中で、従来陽イオン交換容量が常用されてきたが、膨潤性粘土鉱物の含有量を求める測定値としては、ばらつきが大きく、得られた含有量はひとつの目安にすぎない。鉄道技研報告(桜井・立松・水野,1986)は、X線回折法や簡易吸水量試験による定量法を改良し信頼度の高い方法を提案した。

3.X線回折による定性分析

Q6 X線回折の原理を簡単に説明してください。
 X線回折は試料面にX線を照射し反射してくるX線の強度を測定する方法です。どのような物質が試料に含まれているかは、反射X線の位置(2θ)と強度(I)によって決まります。2θは平板試料の表面と入射X線のなす角θの2倍の角度を意味しています(図参照)。
 2θはX線回折装置(diffractometer)によって高角度から低角度に操作されます。得られたX線回折パターンから、各ピークの2θと相対的な強度比I/I1、(最強線の強度I1を100とする)を読み取り、2θから結晶の格子面間隔dを計算します。d−I/I1の組み合わせとJCPDSデータファイル等の文献とを照合し鉱物を同定します。
[参考]照射X線 CuKα
・2θ=2sin-1(1.5418/2d) (2θ;2〜60度)
・2θ=2sin-1(1.5405/2d) (2θ;60度以上)



図-1.X線回折の原理


Q7 X線回折法による定性分析の手法について説明してください。
 X線回折法による定性分析は未知物質の回折図形と既知物質の回折図形とを比較し、前者の中に後者の図形が含まれていれば、前者には後者の物質が含まれていると判定する方法で行なわれる。この方法で定性分析を行なうことから、粉末X線回折法による定性分析のことを同定(identification)とよぶ。
 既知物質の回折図形の標準としてはJCPDSカードのデータおよび信頼の高い文献が広く使われている。比較参照の方法として、通常Hanawalt法が用いられる。この方法はd−I/I1の特徴的な3つの最も高い強度線をJCPDSカードと比較し、この3強線が試料の回折データに含まれていれば、他の全回折データもカードの回折線データと比較、確認する方法である。また、粘土鉱物や岩石鉱物では特徴線(3強線及び他の特徴的なピーク)を利用する方法が行われている。

Q8 不定方位試料と定方位試料の違いを教えてください。
 X線回折装置で粘土鉱物の測定を行なう場合、原則として粉末試料を用いる。測定用の粉末試料は、粘土粒子の並び方により、定方位試料と不定方位試料とに分けられる。
1)定方位試料
 粘土鉱物のほとんどのものはフィロ珪酸塩鉱物であるので、層状の結晶を持ち、薄板状の形態を示す。この結晶の層面が、平行に配列した粉末試料を定方位試料という。粘土鉱物の研究において、色々の粘土鉱物の特性は粘土の結晶の厚さ(結晶の層面に垂直方向の大きさ)から知ることができるので、普通この定方位試料が用いられる。
 定方位法は、粘土試料に対し、薬品処理に熱処理をほどこして、粘土鉱物線を明確に同定する上で常用される。定方位試料は、一般に岩石や土壌を粉砕後、水中での粒子の沈殿速度を利用し回収(水ひ)した2μm以下粒子を用いる。

2)不定方位試料
 不定方位試料は、粘土鉱物の結晶の3次元的な格子に関係した回折線の測定を行なうものである。不定方位試料中の個々の結晶は、定方位配列をとらず、様々な方向を向いている状態にある。岩石全体に対する粘土鉱物の量比(多,中,少,微量と表現する)は、全岩の不定方位試料の回折結果から求められる。全岩の不定方位試料は、岩石の小片を鉄乳鉢などで粉砕後、さらに、メノウ乳鉢でよくすりつぶし、指頭に感じない粒径(75μm以下)にして得る。

Q9 粘土鉱物の検出に必要な一般的な試料処理とは?

 採取試料を粉末にし、蒸留水を満たした1リットルビーカー中で、懸濁(けんだく)させ、一定時間後サイホン(ガラス管とゴムチューブの簡易な道具)で2μm以下粒子のみを分離回収する。これを水簸(すいひ)という。ストークス則によると、放置時間が4時間のとき水面から5pまでの水中には2μm以下の微粒子だけが含まれる。

 a)無処理(走査範囲;2θ=40度→2度)
 2μm以下粒子をスライドガラスに風乾後30mg程度になる量だけ塗布し、風乾後X線回折を行なう。
 b)エチレングリコール処理(走査範囲;2θ=15度→2度)
 モンモリナイトと緑泥石の区別およびモンモリナイトの確認のための処理。無処理試料にエチレングリコールを吹きつけ30分間以上放置後、X線回折に供する。この処理により、モンモリナイトグループは最強線(001)面の反射ピークが15Åから17Åにシフトする。



 図-2 スメクタイトのエチレングリコール処理

 c)塩酸処理(走査範囲;2θ=30度→2度)
 カオリナイトと緑泥石が共存する場合、カオリナイトを検出するための処理。試験管にとった泥水状試料2mリットルに対し、6N塩酸を3mリットル加え、ウォーターバス中で1時間煮沸し、蒸留水を加えて塩酸を洗浄後、一定量をスライドガラスに塗布し、風乾後X線回折を行なう。
 d)熱処理(走査範囲;2θ=30度→2度)
 粘土鉱物を加熱(100〜800℃)すると脱水し、回折の強度と位置が著しく変化する。例えば、加水ハロイサイトは100℃で1時間熱すると10Åの回折線が7Åに移行する。

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