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スメクタイト定量法


膨潤性粘土鉱物の定量法
2022.7.12
 ここでは、膨潤性粘土鉱物として代表的なスメクタイト(モンモリロナイト族)の定量法として、信頼性の高い陽イオン交換容量試験(CEC)および検量線を用いたX線回折(X線粉末回折)について解説する。

陽イオン交換容量試験(CEC)
2022.7.12
4.膨潤性粘土鉱物の定量分析

Q10 陽イオン交換容量(CEC)の測定法と測定値の利用法は?
 粘土鉱物中の全部の交換性イオンをアンモニウムイオン(バーミキュライトを含む試料に対してはカルシウムイオン)と交換し、交換性イオンの総量をアンモニウムイオン相当量として求める化学分析である。
 高いCEC値を示す粘土鉱物は次の2種類である。
・スメクタイト(モンモリロナイト族)80〜150 meq/100g
・バーミキュライト100〜150 meq/100g
 ここで、meq=milli-equivalent;ミリグラム当量(元素の原子量を原子価で割った値が化学当量で、その1/1000の単位)

 上記以外の非膨張性粘土鉱物のCEC値は3〜50meq/100gを示す.(主としてGrim(1962)および須藤俊男「粘土鉱物学」)
・カオリナイト           3〜15  meq/100g
・雲母粘土鉱物(Al,di.)      10〜40
・ハロイサイト           40〜50
・メタハロイサイト         5〜10
・セピオライト,パリゴルスカイト  20〜30
・緑泥石              10〜40

 また、変質鉱物あるいは続成作用による自生鉱物としてグリーンタフ地域の軟岩に普遍的に産出する沸石は次のように高いCEC値をもつものがあり、膨潤性粘土鉱物と沸石が共存するときには注意を要する。
・沸石(Zeolite)150〜450 meq/100g

 例えば、粘土鉱物としてスメクタイトが主体で沸石を含まない物では、次式でスメクタイトの概略の定量が可能となる。

 スメクタイト含有量(%)=[CEC/(80〜150)]×100



 図-3 陽イオン交換容量(CEC)測定法

【須藤俊男「粘土鉱物学」1974から引用】
 12-3. 陽イオン交換容量の測定
 極めて多くの測定法があるが,ここでは,従来もっとも広く用いられているSchollenberger and Simon(1946)の方法を述べる。
 温度変化の影響をできるだけ避けるため,恒温室(20〜25℃)で行う。試薬の濃度,pHは,できるだけ正確に調整する.
 バーミキュライト群,またはそれを含む試料は,別項に記する方法に従う.また水可溶性の陽イオンを含んでいるものは(海底土のように),予め蒸溜水で洗い,風乾したものを用いる.試料は乳鉢で指頭に感ぜぬ程度の粉末とし,室温で十分乾かしたものを用いる。
 次の試薬をつくる。
(1)1Nの酢酸アンモニウム液(2Nのアンモニア水と,2Nの酢酸を等容に混じ、濃アンモニア水,または,酢酸を滴下し,pH=7とする)
(2) 80%(容量)のエチルアルコール(99%または96%のエチルアルコールを蒸溜水で所定の濃度に薄め,濃アンモニア水を滴下し,pH=7とする)
(3) 10%の塩化ナトリウム液,の3つである。

 浸出管(E)は,長さ12cm,内径1.3cmの下部に,長さ4cm,内径0.3cmの管(T)がついている(図12-1).洗浄容器(W)の容量は約100ccで,10cc毎に目盛がついている。



 図12-1 イオン交換容量測定装置の一部

 浸出管の最下部に脱脂綿を少量つめ,その上に濾紙乳を流して5mm程度の層をつくる。
粘土塊の部分は,水が通りにくく,必要以上に時間がかかるので,石英砂(0.1mm以下)を1gの粘土粉末に,等量または2倍加えて,よく混合したものを浸出管につめる.浸出管の中に,少量の1Nの酢酸アンモニウム液を入れ,その中に,試料と石英の混合物を少量ずつ落下させ,濾紙乳の上に沈積させる。
洗浄容器を浸出管に連結させ,洗浄容器の中に約100ccの1Nの酢酸アンモニウム溶液を入れ,その下部のコックをひらいて,100ccの1Nの酢酸アンモニウム液が,約10時間で浸出管を通るよう,コックの開きを加減して,滴下速度を調節する。
 酢酸アンモニウム液100ccが,試料を通り終わったならば,80%のエチルアルコールで,浸出管の上部の内壁を洗い,更に約50ccの80%のエチルアルコールで試料を通し,余分の酢酸アンモニウム液を除去する。以上の操作により,試料中の交換性イオンは全くアシモごウムイオンで交換されている。

 次に,10%の塩化ナトリウム溶液100ccを,試料層を通して試料を洗浄すると,試料中のアンモニウムイオンはナトリウム(またはカリウム)イオンと交換し,アンモニウムイオンは,前下部のびんに浸出される。このびんの中に浸出された液をビーカーに移し,中のアンモニウムイオンを,蒸溜法(セミミクロケルダール窒素蒸留装置など)で定量する。

 結果は,風乾試料100g中の飽和したアンモニウムイオンの量で示され,ミリグラム当量(me⇒milliequivalent)(元素の原子量を原子価で割った値が(化学)当量である.その1/1000の単位)で示され,これをイオン交換容量(CEC)として示される。この値は,いうまでもなく,原試料中に現実に含まれている交換性イオンの種ならびに各の含有量を出しているものでなく,全体をアンモニウムイオン相当量として示しているのである。

(注)アンダーラインは当サイト

X線回折(検量線)による定量法
2022.7.12

Qll X線回折による定量方法とその精度について教えてください。

 X線回折の場合、原理的には定量が可能であるが、回折線強度に及ぼす因子が多いことと、鉱物はしばしば固溶体をなし、化学組成が一定せず標準サンプルの入手が一般に困難であるため、精度の高い定量は大変難しい。ここでは、もっとも一般的な内部標準法と、膨潤性粘土鉱物の結晶度を考慮した鉄道技研法(1986)について説明する。

1)内部標準法
 入手し得た膨潤性粘土鉱物の標準的サンプルを石英などと混合して希釈し、それに一定量の内部標準物質(シリコンなど)を加えた試料を用いて検量線を作成する。次に測定試料に同様の操作を施しX線回折装置にかける。 膨潤性粘土鉱物の底面の反射強度と内部標準物質の注目するピークの反射強度の比をとり、検量線に照らしあわせて膨潤性粘土鉱物の含有量を求める。
 一般に、対象とする地質に広く認められる膨潤性鉱物と同じ化学組成および同じ結晶度を有する標準的サンプルは入手困難であるから、現地から最も膨潤性粘土鉱物の含有量の高い試料を採取した後、実体顕微鏡下で岩石中から選別し、CEC分析等で膨潤性粘土鉱物の含有量を定めたのち、検量線作成に供する。

2)鉄道技研法(桜井,立松,水野;1986)
 結晶性を考慮した複数の検量線を作成する定量法。膨潤性粘土鉱物をカルシウム溶液で処理し、交換性イオンをすべてカルシウムイオンに置換する。 この試料に一定量の非晶質物質を混合後、加圧してディスク状にし、X線回折に供する。膨潤性粘土鉱物の底面の反射ピークの半価幅から検量線の傾きを選び、反射強度を検量線に照らしあわせて含有量を求める。
 もとめた含有量は±2.5%程度の精度であるため,5%ごとのきざみ値とするか,10〜15%いうように範囲をもたせて表示する。

 以上のように、スメクタイトをはじめ膨潤性鉱物は化学組成および結晶度にバラツキが大きいため、含有量の表現は5%刻みで表現することが、工学的な利用時に留意すべき点と思われる。


         
         図-4 内部標準法
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