岩盤分類マトリックス |
---|
2021.8.29 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
岩盤の風化、キレツ間隔、キレツの平滑性、キレツの介在物質、岩石自体とキレツ周辺の風化状態や変質状態、および岩質の硬軟などの各要素の組み合わせ状況によって、岩級区分が行われている。我が国の岩盤分類基準として、田中治雄、菊池宏吉ほかのA、B、CH、CM、CL、D分類[電力中央研究所式]が有名である。 表-1 ダム基礎岩盤分類基準(田中治雄)
田中の分類は、菊池宏吉・藤枝 誠・岡 信彦・小林隆志「ダム基礎岩盤の耐荷性に関する地質工学的総合評価」応用地質特別号(1984)などで、分類に岩石の一軸圧縮強度quや亀裂・節理の間隔などの数量表現を加え、かつ岩盤物性試験値(せん断定数と変形特性)と関連づけて整理された。また、岩石の一軸圧縮強度quの区分(仕切り値qu=80MPa,40MPa,20MPa)を行って、硬質岩(A〜D)、中硬質岩(B〜D)、軟質岩(CH〜D)の岩級区分基準を示した。さらに、下表のように、ボーリングコアの性状に基づく岩盤分類表を提示した。 表-2.ボーリングコア岩級区分例(菊地宏吉ほか1984に準ずる) 以上の各要素の判定は一種のマトリックスであり、この岩盤分類マトリックスをMRとすると、Y(結果)=MR・X(誘因)という関係式が、場合分けをして、可能となるものと考えられる。 Q値やRMRはこの類ではあるが、日本式の岩級区分に対応するこの岩盤分類マトリックスの数学的、岩盤力学的研究は公表されていない。 なお、国交省(旧建設省)の管轄するダムでは、次のような岩盤分類が使われている。 表-3 土木研究所式の岩盤分類の例 (a)岩盤の区分基準 (下うけダム 花崗岩・安山岩の例)
2)ハンマーで強打して1回で割れる程度 3)ハンマーで崩せる程度 (b)岩盤の評価(下うけダムの例)
(引用)土木学会「ダムの地質調査」p110. |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
岩盤の物性値(地盤定数) |
---|
2019.3.8 |
岩石の物性値はボーリングコアや岩塊からコア抜きした円柱試料を用い、単位体積重量測定、一軸圧縮試験(静弾性係数、静ポアソン比測定)、三軸圧縮試験が行われる。他に、不定形の岩片で実施可能な見かけ比重・有効間隙率試験(含水状態によって自然、飽和、乾燥の三状態の数値を得る)がある。有効間隙率はコンクリート骨材で重要な吸水率に換算できる。 岩盤の試験には、ボーリング孔内で行う水平載荷試験やPS検層をはじめとする各種物理検層(比抵抗電気検層、密度検層、超音波検層などがある)、ダムなどの大規模構造物設計のために行う横坑内での平板載荷試験、せん断試験がある。 岩盤はキレツを非等方性であるため、岩盤を露出、整形した坑道内等のある程度広い試験面での平板載荷試験、せん断試験が望まれるが、この試験は経費が高く多数の実施も困難であるため、一般土木設計では、ボーリングコア試験、コアの岩石組織と風化状況、孔内試験値などから岩盤分類を行い、岩盤物性値を推定する経験的手法(研究機関による論文や基準書による)が用いられている。 なお、一部の橋梁などの構造物設計では、数少ない孔内水平載荷試験の実測値を他の既存のデータと照合する検討を軽視し、そのまま利用している場合があり、道路橋示方書下部後編等の軟岩の一般値以上のデータで安全側であったとしても、適正な設計計算のためには不用意な取り扱いと考えられる。 菊地宏吉ほか(1982)ダム基礎岩盤の安定性に関する地質工学的総合評価について,第14回国際大ダム会議提出論文. (注1)垂直荷重、せん断強度(kg/cm2) 強度1.0kgf/cm2=10,000kgf/m2=100,000N/m2 =100kN/m2=0.1MPa (注2)弾性係数Eや変形係数D E1=1,000kgf/cm2=1,000(kg)×10(m/s2)×1.0E+4 =1.0E+8 N/m2=100E+6N/m2=100MPa |
|