GEOENG 地質学と建設コンサルタント(理学と工学の融合へ)

耐震設計の方法


耐震設計の方法について
2022.1.10
 「活断層調査から耐震設計まで」池田俊雄監修、岡田勝也+池田研一+長谷川達也=共編、鹿島出版会,2000年3月1日発行,全203pageから耐震設計の方法や実例の概要が学ぶことが出来る。

 本書前半では、1995年(平成7年)1月の兵庫県南部地震(M7.2)の野島断層沿いに発生した地震断層および1891年(明治24年)10月に発生した国内最大級の内陸地震・濃尾地震(M8.0)で高さ6mの断層崖を出現させた根尾谷断層などの国内及び国外の主な地震断層・活断層について現地状況や被害について解説を行い、活断層のメカニズム及びトレンチ調査や地形調査、物探、ボーリング調査などについて紹介している。
 後半は、地震動の特性値(固有周期,減衰定数,応答スペクトル)について解説し、耐震設計の手法(震度法,応答変位法,動的解析)について詳しく述べ、耐震設計の実例から、設計地震力と地震動等の予測の実例,土構造物の液状化危険度の評価,活断層を考慮した高架橋の計画設計,震災を受けた地中構造物の耐震設計,既設水路橋の動的解析と耐震診断について概要を説明している。

第1章活断層調査から耐震設計までの流れ
第2章どんな活断層の事例があるか?
 根尾谷断層,丹那断層,深溝断層,石廊崎断層,稲取断層,野島断層,立川断層,神縄・国府津・松田断層帯,富士川断層系,アルパイン断層(ニュージーランド),サンアンドレアス断層(サンフランシスコ),北アナトリア断層(トルコ),台湾縦断活断層
第3章活断層と地震はプレートテクトニクスで説明できる
 プレートテクトニクスと地震,活断層の分類・定義・評価・地形・分布
第4章活断層の調査はどうするのか?
 活断層調査の実施例;野島断層系,有馬−高槻構造線,活断層の調査法;地形・地質調査,物理探査,ボーリング・トレンチ調査
第5章震源から出た地震波は構造物にどのような地震力を与えるか?
 地震波の広がりと被害の実例;濃尾地震,福井地震,地震の発生;断層モデル,活断層の規模とマグニチュード,震源からの地震波の伝播と減衰,表層地盤の影響とサイスミックマイクロゾーニングSeismic-Microzoning耐震設計法に応じた入力地震波
第6章地震力に対して構造物はどう設計するか?
 実例に見る地震力,入力地震動の固有周期と地盤・構造物の応答,耐震設計法,震度法,応答変位法,動的解析法
第7章耐震設計に必要な地盤情報は?
 地盤の固有周期,土の動的ひずみ,せん断弾性係数G,減衰定数h,液状化判定法
第8章設計地震力と耐震設計の実例を示そう
 設計地震力と地震動等の予測の実例,土構造物の液状化危険度の評価,活断層を考慮した高架橋の計画設計,震災を受けた地中構造物の耐震設計,既設水路橋の動的解析と耐震診断

 

静的耐震解析について
2022.1.10
 ・耐震設計法の分類;1)静的解析法 震度法/修正震度法/応答変位法,2)動的解析法 応答スペクトル法/時刻歴応答解析法(直接積分法など)/周波数応答解析法。以下、主に上記「活断層調査から耐震設計まで」6.3耐震設計法pp126-133より参照
・応答スペクトル
 応答スペクトルとは、ある地震動がいろいろな振動特性をもった構造物に対してどのような応答を及ぼすかを示したものである。加速度応答スペクトルは横軸に建築や構造物の固有周期、縦軸に最大応答加速度を取って整理した曲線から成る。他に速度応答スペクトル、変位応答スペクトルがある。
 例えば加速度スペクトルの場合、固有周期1s、1.5s、2sの建築群があった場合、それぞれの地震観測記録波形(応答加速度記録)から読み取った最大加速度値を順にS1,S2,S3とし、固有周期を横軸に、最大加速度値を縦軸にプロットする。さらに異なる固有周期の建築群のデータを同様にプロットしたのが加速度応答スペクトルと呼ばれる曲線であり、耐震設計の重要な地震特性面の設計条件となる。

・震度法
 震度法は地上構造物に対して地震力を静的な力(慣性力)に置き換えて構造物に作用させて応力を計算する方法である。震度法の現象は剛な地盤の上に剛な構造物を想定する。このモデルで、地盤が水平方向に最大加速度αmaxで運動するとき、構造物はNewtonの運動の法則第1則から静止状態を続けようとする抵抗を示すので、構造物の重量をWとすると構造物に作用する慣性力はFh=−αmax・W/gとなる。ここでgは重力加速度(9.8m/s2)を表す。
 したがって、設計震度khとは、設計条件から想定した地震動の最大加速度と重力加速度の比といえる。よって、地震時の地盤の水平最大加速度が重力加速度と同値であるとき、設計水平震度kh=1.0となる。
 震度法における地震力は構造物の重心あるいは構造物各部の重心に作用すると考え、一般に水平方向の地震力のみを考慮し設計計算を行っている。なお、鉛直震度を考慮する場合は水平震度の1/2とする場合が多い。
 上記から、震度法の耐震設計に用いる水平方向の地震力は次式によって求める。
  Fh=kh×W
なお、khは、地震タイプ別の基準値(レベル1地震、レベル2-1海溝型地震、レベル2-2内陸地震)に対して、地域ごとの地震活動に関する補正係数、地盤条件に関する補正係数、構造物の重要度に関する補正係数などを乗じて補正した値を用いる。

・応答変位法
 応答変位法は、地中構造物のように構造物の動きが地盤の動きに追従する場合には、慣性力による影響よりも周辺地盤の相対変位によって構造物に応力が発生することに着目した解析法である。
 ボックスカルバートや埋設パイプライン、シールドトンネルのような構造物は、一般に見かけの単位体積重量が、中空のため、地盤の単位体積重量と同等か小さくなり、また構造物の剛性も地上構造物に比べて小さい。このような構造物は周辺の地盤に拘束されているため、地震動に対して地盤と一体に振動する。したがって、地上構造物のように構造物自身での振動はしにくく、慣性力の影響は受けにくいが、地盤変形に対しては支配的な影響を受ける。このような観点から、地震時の地盤変形を対象とした応答変位法が、下水道施設やシールドトンネル等の設計法として基準化されている。

・応答変位法の特徴
1)構造物が地震動に対して地盤と一体となって振動する。
2)構造物の変位と周辺地盤の変位の関係は構造物を弾性床上のはりとして取り扱う。
3)構造物の変位は地盤の変位までを考える。
4)地震動は正弦波動変位とする。

・応答変位法の手順
1)応答変位スペクトル曲線から次式を用いて地盤変位を求める。
 Uh(z)=2/π2・Sv・TG・K'h・cos(πz/2H)
ここに、
 Uh(z):地表面から深さz(m)における地盤の水平変位振幅(cm)
 z:地表面から深さ(m),H:表層地盤の厚さ(m)
 Sv:基準地震動の単位震度当たりの速度応答スペクトル(cm/s)
 TG:表層地盤の固有周期(s)
 K'h:耐震設計上の基盤面における設計水平震度
この式は、耐震基盤面(通常砂質地盤ではVs=300m以上)から上部の表層地盤をせん断ばりと仮定した場合の1次振動モードから求める変位を表している。
2)地盤のばねを算定する。(道路橋示方書など)
3)構造物をはりや骨組み構造でモデル化し、1)で算出した地盤変位を2)で設定した地盤ばねを介して構造物に作用させ部材、部位の断面力、応力度を求める。
4)構造物の安定計算および断面照査を行い、構造物の形状寸法、配筋を決定する。

・応答変位法の問題点
 地盤ばねの設定法が確立されておらず、各種の方法で設定される地盤ばねの値により得られる結果が異なる。最近では地盤ばねを用いることを避けるために、有限要素法(FEM)等を用いて地盤から構造物の全体系を一度に計算して構造物の変形と断面力を直接求める方法が提案されている。代表的な解析法として、応答震度法、地盤応答法、FEM応答変位法等がある。

以上 

inserted by FC2 system