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山岳工法トンネル


山岳トンネルの調査設計
2014.12.28
 山岳トンネルにおいて地質調査とトンネル地山区分・支保構造・補助工法設計は緊密な関係があります。坑口設計では坑口斜面の安定性、崩壊・地すべり・落石の危険性に配慮する設計、一般部では切羽・天端の安定性、湧水、膨張性地圧などの発生を想定した支保設計、補助工法設計が必要です。
 このために、坑口斜面と地山の評価、地質構造の把握が肝要です。特に土木工学的な「地質構造」の把握は、新幹線や青函で長大トンネルの建設に実績のある鉄道関係者の中で重要視されています。

具体的な手法
2018.8.16
【地質調査】文献調査,地形調査,保全物件調査,環境調査,地表地質調査,概略設計に対するボーリング調査・試験,詳細設計に対する調査・試験,補足調査など。

【山岳トンネルの設計】
 地形・地質の整理と評価、地山分類(地山区分)、地山物性値、断面形状の決定 道路規格,建築限界,交通量,経済性、標準設計,類似設計,数値解析FEM等による支保構造設計、補助工法の選定と設計, 排水設計,坑門工設計,斜面安定工設計,土石流対策,有害な物質を含む掘削ずりの安定処分など

【詳細設計の流れ】
1)目的;道路、鉄道、導水路・放水路(発電,農業用水)
2)準用基準書の選択;標準示方書、技術指針、設計要領
3)ルート検討;平面線形、縦断線形
4)横断計画;幅員、内径、建築限界、交通量、計画流量
5)断面設計;上半1芯円、上半3芯円、馬蹄形、円形等
6)地山分類と支保工標準設計
7)類次地山トンネルの支保工準用
8)数値解析による支保工設計、補助工法の必要性
9)補助工法の選定と設計(施工時修正設計要す);長尺鋼管式フォアパイリング、注入式フォアポーリング、鏡ボルト、支保工沈下対策、仮インバート、二重支保工
10)坑口設計;坑門工・坑口法面設計、地すべり対策工
11)排水工設計;水理地質データによる恒常湧水、集中湧水の推定、中央排水工、横断排水工の設計
12)舗装設計;コンクリート舗装、コンクリートスラブ
13)計測工計画;A計測(変位)、B計測(応力測定、地質・水質)
14)施工計画;仮設ヤード、機械設備、運搬仮設、足場・構台
15)環境対策;水質、地下水低下、騒音、振動

【点検と補修設計】
1)トンネル点検(維持管理、5年毎の定期点検)
2)補修設計;剥落対策工、断面修復工、表面改質工、漏水対策工
3)補強設計;内巻工、ロックボルト、インバート構築、繊維シート等

山岳トンネルの基本的な設計方法
2021.12.8
 トンネル設計には次の三つの方法がある。

1)標準設計の適用

 土被りや湧水・地下水条件を含めた地山条件(トンネル地質)から地山区分を行い、標準支保パターンを選定する。最も適用が多い一般的設計手法である。

2)類似設計の適用

 地山条件や設計条件が特異なトンネルで、類似条件の既設トンネルの支保構造を適用させる。類似性の着眼点は、トンネルの用途、断面の形状や規模、地形条件、岩種・地質年代などの地山性状、土被り、地下水状況、掘削工法(矢板工法、NATM、シールド、開削、沈埋工法)、掘削方法(機械の機種や火薬の使用方法)などがある。また、著しい膨張性を示す地山を対象に試験施工を行い、この結果を設計に反映させる方法も行われている。

3)解析手法の適用

 標準設計や類似設計が適用できない条件で、理論解析(数値解析の事前検討)、大型模型による模擬実験(特殊事例)、FEM等の数値解析(汎用)を行い、支保構造を決定する方法。

 本方法は標準設計や類似設計に不適当なトンネルで、土砂地山や強度が著しく低い軟岩地山を主体とする都市トンネル、土被りが非常に小さく支保構造や補助工法を設計するトンネル、大断面トンネル、鉄道や地下鉄ほかの保全物件と近接するトンネル、めがねトンネル、あるいは著しい膨張性地圧や塑性地圧等の特殊条件下トンネルで適用されることが多い。

 トンネル掘削による地表面沈下や周辺地盤の挙動等に関しては施工ステップを反映させた有限要素法解析(FEM)が利用される。また、二次覆工の設計を行う際は骨組み構造解析(構造計算プログラムによるフレーム計算)が適用されている。2次元FEMとフレーム計算は、通常の紙ベース設計図と同様に実施設計標準断面レベルの横断面で行われ、詳細設計に直結する。

 3次元解析は拡幅断面や枝分かれトンネル等の3次元構造での解析が要求される場合のほか、最近ではPCの性能が著しく向上しているため、本来三次元の切羽−地山関係を解析することから掘削開放率の検討や支保構造設計・補助工法検討への適用が広まっている。

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