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土質と地盤定数


土質分類と物理特性
2019.3.8
 土質は、一軸圧縮強度が1.0MPs(1000kN/m2)より小さな第四紀の堆積物をいう。いわゆる、粘土、砂、砂礫、礫、未固結軟岩を指す。
 土木工学分野においては、土の物理的性質とは、JIS規格による土の含水比試験、土粒子の密度試験、粒度試験(ふるい分け、沈降分析)、塑性限界試験、液限界試験による試験値をいう。この物理特性は土の一般的挙動の分類に直結する。すなわち土の工学的分類が行われる。
 例えば、粒度試験で細粒分(径75μm以下の土粒子の粘土及びシルト分の合計含有率)が10%を切ると、地下水位以深の飽和土層では液状化が懸念される。また、含水比が液性限界に近いか以上の場合、その土質は流動化しやすい不安定な土質であることを意味する。

力学的性質(地盤定数)
2019.3.8
 土質は大半が亀裂を持つ岩盤とは異なり、比較的狭い範囲では等方体であるため、不かく乱状態で採取された土質試料の力学的試験で、地盤の力学的特性を代表するとみなされる。
 力学試験には、一軸圧縮試験、圧密試験、一面せん断試験、三軸圧縮試験がある。なお、単位体積重量は物理的特性ではあるが不かく乱試料の供試体作成時に同時に測定可能となる。
 土質地盤の原位置試験には、ボーリング孔でボーリング掘削と一連の作業で行われる標準貫入試験(N値)、PS検層などの物理検層、孔内水平載荷試験(LLTやプレシオメーター)がある。N値によりせん断定数(粘着力C、内部摩擦角φ)、PS検層により弾性波P波速度、S波速度(動ポアソン比、動剛性率、動弾性係数を算出できる)、孔内水平載荷試験により静的な弾性係数(厳密には、加圧応力とひずみが線形関係からずれており、加圧が除荷されてもひずみが残るため変形係数と呼ばれる)が得られる。これらの地盤定数は地盤の支持力、変形量、沈下量、斜面安定性などの評価、推測に使われ、土木構造物の設計・施工に直結する重要なデータとして利用される。
 他に地下水に関して、土質試料による透水係数を求める透水試験、原位置地盤で行う現場透水試験や粘性土地盤で行う間隙水圧測定試験があり、地下水の挙動把握、工事における地下水対策に用いられる。

地盤の強度定数について
2021.7.7

 地盤、特に土質地盤の強度定数は、原位置試験や不かく乱試料採取後に土質試験によって得られる。
 ただし、礫質土など不かく乱試料が採取困難であることが普通であり、設計計算のためには、旧日本道路公団(現在NEXCO)によって一般値が提案されており、近年は、同様な一覧表が、国交省以下の道路土工-盛土工指針にも掲載されるようになった。
 
 表-1.擁壁工における裏込め土・盛土の強度定数
    (H24道路土工-擁壁工指針,p66)
裏込め土・盛土の種類
せん断抵抗角

(φ)
粘着力

c(注2)
礫質土
35°
砂質土 (注1)
30°
粘性土(ただしWL<50%)
25°
 注1)細粒分が少ない砂は、礫質土の値を用いてよい。
 注2)土質定数を上表から推定する場合は、粘着力cを無視する。

 せん断力τは、モール・クーロンのせん断理論から、
 τ=c+N・tanφ (Nは垂直応力)で表されるため、c-φは組み合わせで初めてせん断定数となることが分かる。擁壁工の土圧理論はφに依存し、cの影響は軽視されるため、上表のようなφは30度前後であるが、c=0とする構成になっている。

 

  図-1 標準貫入試験によるN値によるφ推定式

(1)砂質土のN値によるφの推定
 かつては、図-1の大崎式や道路橋示方書にも掲載され式が土木設計に使用された。
ここで、N値10、15、20、30のとき、
大崎式φ=√(20N)+15で、φ=29.1°,32.3°,35°,39.5°
道示式φ=√(15N)+15で、φ=27.2°,30.0°,32.3°,36.2°
となり、道示式は安全側である。
 近年、道路橋示方書の下部工編巻末やH24道路土工-擁壁工指針は、土中の標準貫入試験深度のφは有効上載荷重σv’によるとする次の式を推奨している。
 φ=4.8・lnN1+21,N1=170N/(σv’+70)
 ここで、地盤の湿潤密度が18kN/m3で深度10mの標準貫入試験深度のφは、N値10、15、20、30のとき、
 N1=6.8,10.2,13.6,20.4
 φ=30.2,32.1,33.5,35.5
 この式は、地層の層状分布や地下水位の深度(以深水中重量になる)の影響を受け、ある地点の地盤状況に依存した違いが反映される。
 ただし、設計では地層区分ごとの平均値としてまとめ使用されるため、過去の簡易式による概略値を踏まえた確認も大切と思われる。

(2)粘性土のN値によるcの推定
 c=6・N〜10・N (kN/m2)
  また、シンウォールサンプリング等の不かく乱試料による一軸圧縮強度をquとすると、cは次の関係式があり常用されている。
  c=qu/2 (kN/m2) モール円でφ=0とした場合

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