平面ひずみ問題 |
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2022.9.17 |
実際のトンネルやその他の構造物は三次元問題であるが、二次元FEMでは、三次元条件を二次元条件に置き換える方法で解析する。 【平面ひずみ問題】 二次元断面をX-Y平面とし、平面の法線方向をZ軸とする。対象とする構造物が、トンネルや堤防、擁壁等のように、Z軸方向に無限に延び、Z軸方向の変位、ひずみを生じないとするモデル。この場合、次式が成り立ち、Z軸方向には応力が発生する。 σZ≠0,τyz=0,τzx=0 εZ=0,γyz=0,γxz=0 したがって、次の量を計算する。 1) 変位;Δx,Δy 2) ひずみ;εx,εy,γxy 3) 応力;σx,σy,σz,τxy 【平面応力問題】 二次元断面X-Y平面を薄い板とみなすモデル。このようなモデルではZ方向に応力が生じてもモデルが容易に変形するため応力が打ち消される。 σZ=0,τyz=0,τzx=0 εZ≠0,γyz=0,γxz=0 したがって、次の量を計算する。 1) 変位;Δx,Δy 2) ひずみ;εx,εy,εz,γxy 3) 応力;σx,σy,τxy 【軸対称問題】 円筒形の立坑や深礎杭等のように中心線の周りに断面を回転して生じる形態から成るモデル。鉛直方向Y軸を回転とし、半径方向をX軸とする。 モデルは第一象限に構築する。モデルの変形は回転軸Y軸方向と半径方向X軸から成る断面で表される。このため、二次元平面ひずみと同様に二次元解析で変形を取り扱うことができる。ここで力=応力×断面積について、軸方向力は対象となる要素面積(軸から外側に向けて扇型要素の面積が広がる)が異なるため注意が必要となる。 軸対称条件モデル |
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主応力とモール円 |
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2022.10.7 |
【主応力とは】 二次元のある四辺形要素x-yに応力とせん断力が作用していると考える。 すなわち、x軸方向の作用力をσx,y軸方向の作用力をσy、せん断力をτxyとする。 ここで、この四辺形要素内に、X軸とθで交差し、X-Yに直交する面(線分で表す)A-A’を想定すると、A-A’に直交する法線方向応力をσn、面にはたらくせん断応力τnとする。 微小矩形要素と任意仮想面A-A’の法線応力とせん断応力 すなわち、σn=f(σx、σy、τxyの反作用力ベクトルのn方向成分)はsinθ,cosθを用いて下図のように表わされる。同様に、τn=f(σx、σy、τxyの反作用力のA-A’面方向成分)を加算して表す。 σn;力のつり合い図 τn;力のつり合い図 したがって、 σn=σx・sin2θ+σy・cos2θ+2τxy・sinθcosθ τn=τxy(sin2θ−cos2θ)+(σy−σx)sinθcosθ ここで、三角関数の公式からθの三角関数の二乗を2θで変換する。 σn=1/2(σx+σy)+1/2(σy−σx)cos2θ+τxy・sin2θ ・・・・(式-1) τn=1/2(σy−σx)sin2θ+τxy・cos2θ・・・・(式-2) 【三角関数の基本式】 sin2θ+cos2θ=1 (公式-1) tanθ=sinθ/cosθ (公式-2) 【三角関数の加法定理変形式】 cos2θ=(1+cos2θ)/2 (公式-3) sin2θ=(1−cos2θ)/2 (公式-4) 2sinθcosθ=sin2θ (公式-5) 【仮想面に働く法線方向の応力σnおよび主応力とは】 σnの最大値、最小値(極値)を求めるため、式を微分しゼロと置くと、σn max、σn minは、σx、σy、τxyの関数で表される。 d σn/d θ=−(σy−σx)sin2θ+2τxy・cos2θ=0 よって sin2θ=2τxy・cos2θ/(σy−σx)・・・・(式-3) ここで、式-3と公式-1から [4(τxy)2/(σy−σx)2] (cos2θ)2+(cos2θ)2=1 これを変形し、 cos2θ=±(σy−σx)/√As ,As=4(τxy)2+(σy−σx)2 ・・・(式-4) 同様に、 (sin2θ)2+[(σy−σx)2/4(τxy)2](sin2θ)2=1 これを変形し、 sin2θ=±2τxy/√As ,As=4(τxy)2+(σy−σx)2 ・・・(式-5) 式-1に式-4、式-5を代入し、 σn=(σx+σy)/2 ± (√As)/2・・・・(式-6) ただし、As=4(τxy)2 +(σy−σx)2 すなわち σn,max=(σx+σy)/2 + (√As)/2 ・・・・(式-6.1) σn,min=(σx+σy)/2 − (√As)/2 ・・・・(式-6.2) このとき、A-A'の面方向を決めるθは式-3を変形し次式で求まる。 tan2θ=2τxy/(σy-σx) ・・・・(式-7) (注)最大値と最小値を与えるθは90度異なる。 また、σyをσ1(主応力)、σxをσ2(主応力)と置き換え、式-3を式-2に代入して τn=1/2(σ1−σ2)sin2θ+τxy・cos2θ =1/2(σ1−σ2)2τxy・cos2θ/(σ1−σ2)−τxy・cos2θ =τxy・cos2θ−τxy・cos2θ=0 よって、σyおよびσxが主応力の場合、τn=0であることが分かる。 このように求められる物体(FEMでは四辺形要素や三角形要素)内の任意の方向の面に対して、最大、最小の垂直応力を「主応力」と呼ぶ。 【最大せん断応力とは】 同様に式-2を微分し展開することで、せん断応力τの関数の最大値τmax、最小値τminも、σx、σy、τxyで表される。 τn=1/2(σy−σx)sin2θ−τxy・cos2θ・・・・(式-2) d τn/d θ=−(σy−σx)cos2θ+2τxy・sin2θ=0 よって sin2θ=(σx−σy)・cos2θ/2τxy ・・・・(式-8) ここで、式-8と公式-1から [(σx−σy)2/4(τxy)2](cos2θ)2+(cos2θ)2=1 これを変形し、 cos2θ=±2τxy/√At ,At=4(τxy)2+(σx−σy)2 ・・・・(式-9) 同様に、 (sin2θ)2+[4(τxy)2 /(σx−σy)2](sin2θ)2=1 これを変形し、 sin2θ=±(σx−σy)/√At, At=4(τxy)2+(σx−σy)2 ・・・・(式-10) 式-2に式-9、式-10を代入し、 τn=±√(At)/2, ただし、At=4(τxy)2+(σx−σy)2 ・・・(式-11) すなわち τn,max=+ (√At)/2 ・・・・(式-11.1) τn,min=− (√At)/2 ・・・・(式-11.2) このとき、次のθ=θtとなる。 tan2θt=(σx-σy)/2τxy ・・・・(式-12) (注)最大値と最小値を与えるθtは90度異なる。また、θtは主応力を与えるθと45度(π/4)の挟角をもつ。(これが、土木設計で多用される力や土圧線に使われる水平線から45度上下ラインの起源とみられる) FEMで地山の限界ひずみと比較される最大せん断ひずみはこのτmaxによるせん断ひずみを呼ぶ。 σn,τnの各最大値、最小値計算例 注)Excel三角関数はラジアン計算 θ°:θ(radian)=180°:π τxy≒0のためσxとσyは、ほぼ主応力(θ=0,90°,-90°) τn,max(θt=45°)、τn,min(θt=-45°) 上図と同じσx,σyでτxy=300kN/m2の場合 σn,max(θ=-30°),σn,min(θ= 60°) τn,max(θt= 15°)、τn,min(θt=-75°) 【モール円とは】 主応力σmaxをσ1、σminをσ2と呼び、主応力がはたらき、せん断力はたらかない平面要素を考える。任意の方向の面のσnとτは、X軸にσ、Y軸にτをとり、中心座標が(σ1+σ2)/2、半径が(σ1−σ2)/2のモール円で表現される。 今、三軸圧縮試験のように、X軸あるいはY軸と平行に主応力σ1とσ2がはたらく物体要素において、任意の面の法線応力とせん断応力を考える。 主応力σ1,σ2が作用している物体内部の任意仮想面応力 σn=1/2(σx+σy)+1/2(σy−σx)cos2θ+τxy・sin2θ ・・・・(式-1) τn=1/2(σy−σx)sin2θ−τxy・cos2θ・・・・(式-2) これらの式は、σy=σ1,σx=σ2とすると,τxy=0であることから、 σn=1/2(σ1+σ2)+1/2(σ1−σ2)cos2θ・・・・(式-13) τn=1/2(σ1−σ2)sin2θ・・・・(式-14) となる。 式-13と式-14を変形すると、 cos2θ=[2/(σ1−σ2)]・[σn−1/2(σ1+σ2)] ・・・(式-15) sin2θ=[2/(σ1−σ2)]・τn・・・・(式16) 式-15及び式-16をsin2θ+cos2θ=1(公式-1)に代入すると、 [2/(σ1−σ2)]2・(τn)2 +[2/(σ1−σ2)]2・[σn−1/2(σ1+σ2)]2=1 両辺に[2/(σ1−σ2)]2の逆数をかけて次のモール円の式を得る。 [σn−(σ1+σ2)/2]2+(τn)2=[(σ1−σ2)/2]2 ・・・・(式-17) この式は、中心の座標が(σ1+σ2)/2、半径が(σ1−σ2)/2の円を表し、この場合、σnとτnは、モール円の円上に存在する。 モールの応力円 (注)岩盤力学分野では、次のように一般に引張り応力を正に、圧縮応力を負で表す。また、主応力を絶対値で、数直線上で大きいほうからσ1、σ2、σ3と表わす。 圧縮性の主応力σ1,σ2が作用する物体内部の任意仮想面応力 モールの応力円(負号の主応力;圧縮) ※準拠文献:稲田善紀著「岩盤工学」森北出版(株)1997,pp54-59 【モール・クーロン破壊基準】Mohr-Coulomb failure criterion 一般に、FEMにおける地盤、岩盤、コンクリートの破壊基準は、下図のように、内部摩擦角φ、粘着力Cを用いて、τ=c+σ・tanφが用いられている。 また、さらに下図のように、FEMでは、モール円と破壊基準との離れや接近度で平面要素ごとの安全の程度を表現することが行われている。 1)破壊接近度=r/h (1.00未満で安全性高い) 2)安全率Fs=h/r (破壊接近度の逆数,1.00以上で安全性高い) 3)ゆるみ係数 R=k・dmin/(T−σm) k:弾性限界パラメータ(非線形解析) 破壊接近度の計算例 上半掘削・支保後の底版端部は破壊接近度が1以上で破壊している 破壊接近度1以上を示すモール応力円(応力点No.7) |
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