吹付コンクリートと鋼製支保工の合成部材 |
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2022.7.23 |
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NATMでは標準的に、トンネル掘削後、早急に吹付コンクリート、鋼製支保工、ロックボルトによって一次支保を行い、内空の変位が収束するのを確認後、防水シートを貼り、厚さ30cmの無筋の覆工コンクリートが打設され、トンネルが構築されていくが、特に吹付コンクリートと鋼製支保工は、異種材料の合成部材となっている。 実際の吹付コンクリートと鋼製支保工にかかる荷重割合は、現場計測され検討されており、現場ごとに違いがある。やや古いデータではあるが、新しい道路トンネル計測工指針(日本道路協会,国交省)でも掲載されているように、吹付コンクリートの強度が発現した段階では、双方の軸力比は、概ねNc:Ns=2:1 程度で、吹付コンクリートの軸力分担力は鋼製支保工のそれの2倍程度(断面積は異なる)に相当するとする考え方がある。 (出典1)土木学会 トンネル・ライブラリー第18号「より良い山岳トンネルの事前調査・事前設計に向けて」平成19年(2007),p149 式の解説に次のものがあります。 <剛性E> 応力とひずみ関係は、弾性論の定義から、応力σ=P/A=εE。コンクリートへの載荷荷重は、Pc=εc・Ec・Ac、鋼製支保工への載荷荷重は、Pc=εs・Es・Asとなる。このとき、コンクリートと鋼製支保工のひずみは合成梁のひずみと等しいと考えられる。よって、ε=εc=εs、合成梁の載荷荷重は、P=Pc+Psのため。 <断面二次モーメント> 同様に、曲げモーメントMと曲率ρ(曲げモーメント発生時の曲率半径のこと)の関係は、M=E・I/ρとなる。したがって、 ・コンクリートの曲げモーメント Mc=Ec・Ic/ρc ・鋼製支保工の曲げモーメント Ms=Es・Is/ρs このとき、コンクリートと鋼製支保工の曲率は合成梁の曲率と等しくなくてはならない。すなわち、1/ρ=1/ρc=1/ρs。また、合成梁の曲げモーメントは、M=Mc+Msであるため。 (出典2)地層科学研究所2Dσ説明書によるFEM解析における合成部材の変形係数と断面二次モーメント 表-1 合成梁の断面性能(標準断面DUの例)
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合成部材断面力の分担率についての考察 |
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2022.7.22 |
【鋼アーチ支保工と吹付けコンクリートの発生応力】 合成梁のFEM解析によって、合成部材としての軸力、モーメント、せん断力が、隣接する四辺形要素の節点ごとに得られる。ただし、各部材の応力度等を照査するために、計算された値を各部材毎の値に分解して評価する方法を試みる。 [検討の流れ] 合成はり(Econb,Iconb)→FEM解析→合成はりの軸力Nconb、モーメントMconb,せん断力Sconb→軸力、モーメント、せん断力の分解 →各部材の応力度算出(縁端応力度σ=N/A±M/Z)→許容応力度との比較照査(OK,OUT) A)軸力 吹付けコンクリート(c)と鋼アーチ支保工(s)それぞれに作用する軸力をNc、Ns、断面積をAc、As、弾性係数(ヤング係数)をEc、Es、軸方向応力をσc、σsとすると、 合成梁の軸力;Nconb=Nc+Ns 合成はりの部材長が応力発生下でも等しいことより、それぞれのヒズミは同じでなければならない。このヒズミをεとすると、 Nc=Ac・Ec・ε, Ns=As・Es・ε Nc+Ns=Ac・Ec・ε+As・Es・ε=(Ac・Ec+As・Es)・ε ∴ ε=Nconb/(Ac・Ec+As・Es) それぞれにかかる応力および軸力は、 σc=Ec・ε=Ec・[Nconb/(Ac・Ec+As・Es)] Nc=Ac・σc=Ac・Ec・[Nconb/(Ac・Ec+As・Es)] σs=Es・ε=Es・[Nconb/(Ac・Ec+As・Es)] Ns=As・σs=As・Es・[Nconb/(Ac・Ec+As・Es)] したがって、Nc:Ns=AcEc:AsEs・・・・式1 B)モーメント ここで 断面係数Z=断面二次モーメントI/中立軸距離y 吹付けコンクリート(c)と鋼アーチ支保工(s)それぞれに発生するモーメントをMc、Ms、断面係数をZc、Zsとすると、 Mc=Zc・Mconb/(Zc+Zs) Ms=Zs・Mconb/(Zc+Zs) ここで、一般に吹付コンクリートが薄肉で、モーメントの発生しない部材と評価されるため、 Zc=Ic/yc=0 Mc= 0 Ms=Zs・Mconb/(0+Zs)=Mconb したがって、Mc= 0,Ms=Mconb ・・・・式2 C)せん断力 平面ひずみ条件で、せん断ヒズミγとせん断力τは次の関係にある。 せん断力τ=E・γ/2(1+ν) 吹付けコンクリート(c)と鋼アーチ支保工(s)それぞれに発生するせん断力をτc、τsとし、両部材でせん断ヒズミおよびポアソン比が同じとして、軸力の分配と同様に考える。 A・τconb=Ac・τc+As・τs τc=Ec・γ/2(1+ν),τs=Es・γ/2(1+ν) Ac・τc+As・τs=(Ac・Ec+As・Es)・[γ/2(1+ν)] よって、A・τconb=(Ac・Ec+As・Es)・[γ/2(1+ν)] ∴ γ=2(1+ν)・A・τconb/(Ac・Ec+As・Es) 以上から、それぞれにかかるせん断応力は、 τc=Ec・γ/2( 1+ν )=Ec[A・τconb/(Ac・Ec+As・Es)] τs=Es・γ/2( 1+ν )=Es[A・τconb/(Ac・Ec+As・Es)] したがって、τc:τs=Ec:Es・・・式3 (以下略) |
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