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地山の物性値 


一軸圧縮強度および地山強度比
2022.7.26
【一軸圧縮強度】
 山岳トンネルの地山評価、地山区分、地山強度比、掘削工法の選定に使われる基本的で、かつ最も重要な試験値と言われる。

【地山強度比】一般地山
 GN=[地山の一軸圧縮強度qu]/[土被り圧(鉛直土圧)γH]
 ただし
  亀裂の多い地山のqu=岩石供試体のqu×K
   K=(地山の弾性波速度Vp/供試体の超音波速度vp)^2

【地山せん断強度比】軟弱な地山
 GT=(γHtanφ+C)/γH=tanφ+C/γH

 地山強度比は、次表のように塑性地圧を予想する指標として評価され、支保パターンを決める地山区分に組み込まれている。

表-1 地山強度比の評価(仲野+JR)
地山強度比
10以上
10〜4
4〜2
2以下
土圧特性
軟岩が良好
に自立する
塑性地圧生
ぜず
塑性地圧を生
ずることあり
塑性地圧を生ずることが多い
(参照;高山昭監修「NATMの理論と実際」土木工学社(1983,S58)

 地山強度比の算出には、地山の一軸圧縮強度の推定が必要となる。しかし、亀裂が発達し、粘土化部も含むような脆弱な地山(CL〜D級岩盤)では、ボーリングコアや切羽の岩石ブロックからの一軸圧縮試験供試体(円柱コアφ5cm×10cm)の作製が困難である(両端面の平行度を満足する供試体とならない)ことから、三軸圧縮試験はもとより、硬質部の一軸圧縮強度の把握も難しい場合がある。この場合は、地山の性状(物理的試験値)と地山弾性波速度(可能な限りトンネル断面での速度検層や坑内弾性波測定が望ましい)を用いて地山区分を行い、塑性地圧の評価をすることになる。
 

変形特性と破壊パラメータ
2022.7.26
(1)変形係数とせん断定数
 地盤の弾性係数(変形係数)は、一般に次の3つの方法で計測あるいは推定を行う。
1)岩石試料の一軸圧縮強度試験と同時に行った静弾性係数試験(Ds)
2)原位置地盤における孔内水平載荷試験による変形係数(Db)
3)標準貫入試験によるN値による推定変形係数(Dn)
  Dn=700×N値(kN/m2)(吉中龍之進の式)
(※)「変形係数」という用語は、地盤の弾性係数が開口したキレツやゆるみの閉合などの塑性的な変形を含めた値のため使用される。

 トンネル数値解析に用いる概略物性値の設定には、下表を参考にする場合がある。

表-2 地山物性の標準的値の例(国交省およびNEXCOより参照)
地山区分
γt(kN/m3)
Dfc(MPa)
ν
C(MPa)
φ(°)
25
5000
0.25
4.0
50
CT
24
2000
0.30
2.0
45
CU
23
1000
0.30
1.0
40
DT
22
500
0.35
0.4
35
DU
21
150
0.35
0.2
30
(記号)γt 単位体積重量,Dfc 変形係数,ν 初期ポアソン比,
     C 粘着力,φ 内部摩擦角
 ※CはNEXCOによる

 せん断定数は、FEM弾性解析では、モデル各要素の変形・応力には関係しないが、平面要素ごとにモール円での破壊近接度や安全率算出に使われる。弾塑性解析では破壊条件式を決定する重要なパラメータとなっている。

(2)引張り強度
表-3 仮想一軸圧縮強度qu’・脆性度Br・引張り強度T(参考)
地山区分
qu'(MPa)
Br
T(MPa)
Br'
T'(MPa)
40
10
4.0
50
0.80
CT
20
10
2.0
50
0.40
CU
10
10
1.0
50
0.20
DT
4
10
0.4
50
0.08
DU
2
10
0.2
50
0.04
※1:qu'当サイトの推定
※2:脆性(ぜいせい)度brittleness index;Br=qu/T
 一般に岩石でBr=10〜20,コンクリート8〜10,鋳鉄3〜4,軟鉄約1
  (山口梅太郎・西松裕一「岩石力学入門」東京大学出版会,1977)
※3:T 当サイト,T’ NEXCO(非線形解析のパラメータとして掲載されている)
(3)弾性係数あるいは変形係数
 一般に、FEM解析やフレーム解析で特に重要な弾性係数あるいは変形係数は、地質調査による原位置試験値、あるいはボーリングコア等のコア試験値の10%〜80%などが採用される。(地盤工学会「NATM工法の調査・設計から施工まで」1986,p110)
 道路橋示方書では、平板載荷試験の剛性Dpを基準として,Dp=4×Db(孔内水平載荷試験で求めた変形係数)=4×Dr(一軸圧縮試験で同時測定される静弾性係数)としている。一方、土木学会では、Dp/Db=1〜3とするデータが示されており(原位置岩盤試験法の指針,2000(H12),p233)、岩盤ではこの4倍の係数は危険側である可能性を指摘している。

 なお、当サイトの筆者が、いくつかのトンネル施工報告の計測結果をFEMによる再現解析と照らし合わせると、Db値の2倍程度の剛性が妥当のようにみえる。構造物基礎の地盤挙動は鉛直下向きであるが、トンネルは特に内空に対して変形の出入りがあるため、挙動の仕組みが違っていることが原因と思われる。
[解析例]
 グリーンタフ地域に位置する道路トンネルにおいて、一般部の低土被りで固結度の弱い凝灰質砂岩の掘削断面では、内空変位d=20〜30mm程度が計測された。この計測値は先行変位以後の60%の変位が現場計測されているため、解析における全変位は33〜50oにあたる。このため、実際の地山(風化岩及び基盤岩)の変形係数は、先受け工無しのケースで変形係数のパラメータスタディをすると、設計値Dbの2.0倍程度が妥当と推定された。


 図-1 FEM解析 横軸;Dbにかける係数,縦軸;内空変位(mm)


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