トンネルの計測工 |
---|
2022.7.20 |
(1)切羽観察工 おもに上半切羽(鏡)や全断面切羽(普通はミニベンチ踏まえ)において、地質構成、地質構造、岩石の硬軟、亀裂・節理の状況、湧水状況、岩盤分類、切羽の自立性 stand-up time、その他を観察し、データーシートに書き込み、集計点で切羽の状況を表す。支保ランクの妥当性や変更への示唆の基礎資料とする。発注者との協議(岩判定と呼ばれる)に用いるため、施工業者が観察表を作成する。地質調査会社や設計コンサルタントが参考に作成する場合もある。 (2)A計測(変位計測) NATMの一次支保工(吹付コンクリート、鋼製支保工、ロックボルト)の施工後に、10〜30m間隔で天端沈下、内空変位(水平と対角)を測定する。前者は天端から吊り下げた沈下用メジャーと光波測距儀、後者は高性能のスチールテープを用いたコンバージェンスメーター(精度;1/100mm〜1mm)などが用いられている。最近は高性能のレーザー距離計が開発され、利用が増えているものと思われる。 底盤沈下・隆起はスタッフとレベル(または光波測距儀)で計測可能ではあるが、底盤には仮設備や走行車両もあり、精密な計測は困難である。最近は、チューブと液体を用いた精密な底盤変位計も開発されている。 図-1 天端沈下,内空変位測定配置図 (注1)水平測線(実線)は必ず実施するが、対角測線(点線)は 必要に応じて実施すればよい。(トンネル標準示方書) (3)B計測(ひずみ・応力計測) 代表的断面や変位の大きい区間で、支保工の妥当性や変更の検討のため、ロックボルト軸力測定、吹付コンクリート応力測定、鋼製支保工応力測定、覆工コンクリート応力測定、鉄筋計、地中変位計等が行われている。 図-2 計測工計画図の例(DT-i) ・地中変位測定+ロックボルト軸力測定;天端1,上半側壁2,下半側壁2 ・吹付コンクリート応力測定+鋼製支保工応力測定;上記近傍5箇所 (4)前方探査 従来は水平ボーリングが行われていたが、近年はロックボルト削孔用のドリルジャンボ機を用いた切羽前方削孔検層と反射波を用いた前方弾性波探査(TSPなど)が行われ、切羽前方の地山評価・施工法修正に役立てている。なお、ドリル削孔はノンコアボーリングでもあり、掘削に先立つ地下水低下工の働きも大きい。 (5)岩石試料試験法 切羽から採取したブロックからコア供試体を整形して、密度試験、超音波速度試験(P波速度、S波速度、動弾性係数、動ポアソン比)、一軸圧縮試験(静弾性係数・ポアソン比)、三軸圧縮試験(C,φ)が行われる。 地山強度比の推定や掘削機械の能率検討に用いられる。軟岩地山では数値解析の物性値設定の基礎資料とする。 地山強度比は、Gn=[地山の一軸圧縮強度/土被り圧;(分母分子単位共通,kN/m2)等]で定義される。トンネルの上半断面と下半断面の水平境S.L.の側壁で岩石が一軸状態となり、弾性理論からは土被りの2倍の鉛直荷重が生じるため、一軸圧縮強度が土被り荷重の2倍以下ではトンネルが破壊に至る事になる。岩片は硬質であるが亀裂の発達した岩盤では、[一軸圧縮強度×(地山弾性波P波速度/供試体P波速度)の2乗]で表す準岩盤強度を地山の一軸圧縮強度として用いる。 また、膨潤性岩石やスレーキング性岩石の評価を行う試料試験も行われる。試験には含水量試験、乾湿による状態変化を見るスレーキング試験、エックス線回折装置による粘土鉱物試験、陽イオン交換容量試験(CEC)、膨潤圧試験(圧密試験機を用いる方法もある)等が実施される。 (6)支保材料試験 骨材生産者による各種の骨材試験、生コン工場による吹付コンクリート、覆工コンクリートの強度試験、スランプ等の配合試験、繊維入り吹付コンクリートの靭性(じんせい)試験等がある。問題が懸念されるコンクリートに対しては細骨材の塩分含有量試験、アルカリ骨材反応試験、打設後に生じた析出物試験、現場採取の水質試験が行われる場合がある。 |
|
トンネルの計測や解析で用いる許容値 |
---|
2022.7.20 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(1)地山の変位許容値 1)限界ひずみ 限界ひずみε0;コア試験の一軸圧縮強度あるいは静弾性係数から既往データによるグラフから求める方法がある。(桜井俊輔,NATMにおける現場計測と管理基準値,土と基礎,34-2(337),pp5-10,地盤工学会.1986.など) 一軸圧縮強度試験のグラフは横軸にひずみ、縦軸に一軸載荷方向の応力を表すが、通常、岩石は破壊前に直線関係(弾性)からそれて降伏が始まるため、下図に示すように「弾性変形のまま破壊強度に至るとした場合のひずみ」を限界ひずみと定義している。 したがって、 限界ひずみε0=一軸圧縮強度qu/初期弾性係数E0 限界ひずみε0<破壊ひずみεf 2)管理基準値 実際の変形モードや側圧係数など現場ごとに考え方の違いがあるが、管理基準値は、 T(レベルUの70%等),U(中央値),V(上限値の80%等)の3レベルで設定される場合が多い。 ここで、変位管理基準の中央値は次のように求める方法がある。 天端沈下管理基準値US(mm)=α×r×ε0 水平内空変位管理基準値UC(mm)=2×US ここで、 α;低減率(測定可能変位/全変位)=(全変位-先行変位)/全変位=40〜60%など r:トンネル半径(mm) 例えば、一軸圧縮強度=1.0MPaのとき、 ・中央値ε0=1.0%、r=5400mm、α=50%とすると、 US=0.5×5400×0.01=27mm UC=2×27mm=54mm ・上限値ε0=3.0%、r=5400mm、α=50%とすると、 US=0.5×5400×0.03=81mm(V・US=65mm) UC=2×27mm=162mm(V・UC=130mm) また、一軸圧縮強度=10MPaのとき、 ・中央値ε0=0.4%、r=5400mm、α=50%とすると、 US=0.5×5400×0.4/100=11mm UC=2×11mm=22mm ・上限値ε0=1.5%、r=5400mm、α=50%とすると、 US=0.5×5400×1.5/100=41mm(V・US=33mm) UC=2×41mm=82mm(V・UC=66mm) 一方、FEM解析では、Step1で初期地圧(土圧)解析時の変位をリセットし、Step2の上半掘削時以降の変位を累計していくので、上半、下半、インバートの支保工施工の掘削開放率100%時点ではα=100%とした値が、解析上の地山変状の基準値と考えられる。 (2)支保部材の物性と許容値 参考までに標準支保パターンの支保工の規格と物性値の一例を次に示す。値は設計計算や数値解析で使われる。詳しくは道路橋示方書(下部工編)および各該当事業者の基準書を参照して下さい。 表-1 支保工物性値(道路トンネル標準DUの例)
E:弾性係数(変形係数),ν:ポアソン比,γ:単位体積重量 I:断面二次モーメント,A:断面積,r:ボルト半径,t:厚さ,L:長さ fck;コンクリートの設計基準強度 表-2 支保工の許容応力度等(高速道路トンネルの例)
(参照)試験研究所技術資料第359号,トンネル数値解析マニュアル(都市トンネル解析留意事項編),JH試験研究所道路研究部トンネル研究室,2002.3(H14) |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|