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深海掘削計画(IODP)


地球科学的テクトニクス問題
2017.9.10
 2017年4月Vo1.123,No.4 地質学雑誌「125周年記念特集:深海掘削計画(IODP)10年の成果(その1)」p185-223

1)森下知晃「中央海嶺産海洋プレート深部起源岩石掘削の成果と展望」p185-205

 海洋掘削計画によって中央海嶺で形成された海洋プレートの基盤岩を掘削したボーリング孔は38掘削孔があり、その掘削深さは100m〜1800mである。

 

 これまで、一般的に高速拡大海嶺の地質はペンローズ・タイプ(Anonymous,1992)のオフィオライト層序(上位から玄武岩層、シート状岩脈群、斑れい岩、かんらん岩)が分布し、超低速〜低速拡大海嶺では斑れい岩や橄欖岩が一部で「海洋コアコンプレックス」と呼ばれる地形的な高まりを作る海洋底に露出していることが明らかにされてきた。

 

 本論では2003〜2013年の10年間のIODPで行われた掘削コアの内、中央海嶺で形成された海洋プレートの深部起源である斑れい岩やかんらん岩について、記載岩石学的、地球化学的内容を中心にまとめた。
 また、日本の掘削調査船「ちきゅう」を用いた将来的なマントル掘削を含む海洋深部岩石掘削計画と課題について述べた。

(私のコメント)1970〜1980年代、中央海嶺の岩石構成は陸上部のオフィオライト層序と類似のものと考えられていて、玄武岩層とシート岩脈群など上位層序を欠くものはDismenbered Ophioliteと呼ばれていた。低速拡大海嶺のマフィック、超マフィック岩石が浅部から確認される岩体は、たとえば日高西帯オフィオライトの南端にある幌満かんらん岩帯(層状な岩相変化を示す,Niida,1984)の新たな成因と定置過程モデルの出現を予想させる。

2)佐野貴司「巨大海台をつくる基盤溶岩の掘削成果」p207-223

 深海掘削計画IODPの1997年会議で設定された目標の一つに「巨大海台の成因と地球環境への影響の解明」がある。
 海洋底に存在する巨大海台は大陸洪水玄武岩と共に
大規模火成区LIPs(Large Igneous Provinces)と呼ばれる。

 

 図2 全地球的なLIPsの分布図
 図のLIPsは、Coffin and Eldholm(1994)が選出した大陸洪水玄武岩15地域と巨大海台29地域。LIPsの元来の定義は「通常の海洋底拡大軸でのマグマ生産とは異なり、マントルプルームやホットスポットの活動に起因してマントルで大量にマグマが生産されたもの」(Wilson,1963; Morgan,1971)。

 21世紀になって二つの巨大海台(西太平洋のオントンジャワ海台とシャッキー海台)で深海掘削行われ、最大200m厚さの枕状溶岩と大陸洪水玄武岩と類似の塊状層状溶岩流が確認された。

 

 両巨大海台の基盤岩の化学組成はN-MORBとは異なり、微量元素や同位体比からリサイクルした地殻物質がマグマをつくった起源マントルに含まれていたことが判明した。また、起源マントルのTpはN-MORBに比べて有意に高温であるという見積もりも行われた。しかしこれらの事実は、過去にLIPsの形成モデルとして提案された熱プルームモデルを満足には説明できない。

 現段階では、プルームモデルが複雑化した熱化学プルーム頭部の部分溶融により説明可能と考えている。これまでの掘削は両巨大海台の地殻が厚さ30kmを超えると推定される中でその1%未満であり、今後、深部までの掘削を行い、プルームモデルを検討する必要がある。

(私のコメント)北海道中軸部の神居古潭帯・空知層群は多量の超マフック岩(カンラン岩-蛇紋岩)と緑色岩(玄武岩質溶岩・火山砕屑岩)が分布し、マントルからのスーパープリューム起源の可能性を示唆されている(「空知海台」,「深海台ソレアイト」:榊原正幸ほか,1999)。中でも日高支庁沙流川支流の額平(ぬかびら)川流域(渡辺・新井田,1987)のおそらくジュラ系とみなされる空知層群下部は、枕状溶岩および細角礫状枕状溶岩ないし塊状溶岩(緑色岩類)が厚く分布し、巨大海台の一部の可能性があると思われる。

 ちなみに、オントンジャワ海台は、太平洋戦争の激戦地、ラバウル、ガダルカナル島の地名で知られるソロモン諸島の北部海域に位置する。シャッキー海台はハワイ諸島(ミッドウェー島含む)と日本列島の距離の1/3〜1/2程度の海域下にある。


深海底の資源・環境問題
2017.9.10
 2017年4月Vo1.123,No.4 地質学雑誌「125周年記念特集:深海掘削計画(IODP)10年の成果(その1)」p225-264

3)高井 研「沖縄トラフ熱水域の科学掘削(IODP331次航海)におけるポストドリリング研究展開」p225-235

 IODP331次調査は、深海熱水域における海底熱水直下生命圏の直接的証明をめざし、沖縄トラフ伊平屋北フィールドの深海熱水噴出域の掘削・コアサンプルの回収、人工熱水噴出孔の創成を行った。これらは、海底硫化金属鉱床の成因に対する重要な知見をもたらし、海底金属資源開発に関する新しい可能性を提示した。

 また、世界で初めて科学掘削による環境変化が熱水化学合成生物群集に新しい生息場の提供と移住をもたらすことを明らかとした。

4)石橋純一郎・柳川勝紀・高井 研「熱水域掘削に基づく新しい熱水系描像と生命圏の限界:IDOP331次航海の成果」p237-250

 本航海は中部沖縄トラフの伊平屋北海丘で2010年9月に実施された。熱水噴火を伴うマウンドの直下のサイトC0016では黒鉱鉱床に比する熱水鉱化作用を見出した。また、マウンド東側数100mに位置するサイトではかなり浅い深度の堆積岩まで熱水成分広がる事を示す様々な証拠が得られた。

 

5)山崎俊嗣・山本裕二・金松敏也「深海掘削による古地磁気・岩石磁気学の最近の進歩」p251-264

 古地磁気強度は地磁気ダイナモ過程を理解する上で重要である。本論では2003年の統合深海掘削計画開始以降の古地磁気学・岩石磁気学の進歩について、堆積物による相対古地磁気強度推定を中心に紹介した。
 北大西洋の掘削コアから得られた古地磁気強度データは、過去150万年間の高分解能古地磁気強度スタックの確立に結びつき、赤道太平洋の掘削コアからは始新世〜中新世の相対古地磁気強度記録が得られ、古地磁気強度の年代層序への適用可能年代が拡大した。

 一方、古環境変動に伴う堆積物の岩相変化、特に生物源・陸源磁性鉱物の割合や堆積速度の変化が相対古地磁気強度推定に混入する問題が明らかとなり、この解決方法を提案した。この問題が解決されると、地磁気強度と逆転間隔の関係や、地磁気変動、地球軌道要素、気候変動の間のリンケージなど、長年の問題解決につながることが期待される。


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