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コンクリ―ト


コンクリート
2017.5.12
 コンクリートは、石灰岩と粘土を焼成させたポルトランドセメント(18世紀から19世紀にかけてイギリスで発明)などのセメント、径5mm以下の岩石片・結晶片からなる細骨材(さいこつざい)、径5mm以上の川砂利・陸(おか)砂利あるいは人工的に破砕した岩石からなる粗骨材(そこつざい)、水、気泡から構成され、セメントの水和反応でポルトランダイトなどの鉱物質が生成し、結果、骨材を固めた硬質なコンクリートが出来きます。
 また、このコンクリートに鉄筋やPC鋼線を入れて、圧縮力に強いが引張り力に弱いコンクリートの欠点を補強し、コンクリート橋、トンネル、港湾施設、高層ビルや建築物などのコンクリート構造物が世界中に多量に作られ、社会資本と呼ばれています。 

 ただし、コンクリートは細かな気泡を多数内在し、大気の炭酸ガスと反応して中性化し、本来アルカリ性で鉄筋に不動態被膜を作って、鉄筋のさび劣化を防いでいる状態を破壊するという劣化が生じます。他にコンクリートの劣化には海浜の飛沫の及ぶ海岸地帯や凍結防止剤が道路に散布される寒冷地域で生じる「塩害」、セメントペーストのアルカリと安定性の低い骨材中のシリカ鉱物が反応し膨張を起こす「アルカリ骨材反応(ASR)」、北海道・東北・高地で起こる「凍害」、過剰な交通荷重のある橋梁床板などで生じる「疲労」などがあります。
 このようなコンクリートの劣化に対し、外観観察(近接目視点検)に加え、コア抜き等の採取試料について各種の試験を行い、劣化の原因(素因と誘因)、すなわち劣化発生機構を調べ、評価することを「コンクリート診断」といいます。有効な劣化対策はこの評価・判定に基づことが肝要で、診断に誤りがあると対策が的外れになり、その結果、補修・補強を繰り返す事が予想されます。

 日本コンクリート工学会


コンクリート診断の方法
2017.5.12
 硬化コンクリートの劣化診断の方法には次の肉眼観察(ルーペ・実体顕微鏡含む)、コンクリート試験、化学分析、偏光顕微鏡、精密化学分析機器などがあります。
1)肉眼観察 近接目視観察(点検)
2)コンクリートコア(φ75,100)採取と圧縮強度試験
3)コアの中性化試験
4)はつり中性化、鉄筋の配筋と腐食状況の調査
5)化学的分析(塩分含有量,セメント中のアルカリ量等)
6)偏光顕微鏡によるコンクリート組織、有害鉱物の観察
  (岩石記載学的検査)
7)粉末X線回折試験(XRD)によるシリカ鉱物、粘土鉱物の同定
8)EPMA,EDXA,EDS等の局部精密化学分析
9)走査型電子顕微鏡SEMによる生成物の微細組織観察と同定


   
 参考文献;小林一輔編著「コア採取によるコンクリート構造物の劣化診断法」森北出版,1998

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