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北海道横断道のトンネル群


北海道横断自動車道 空知-蝦夷帯・神居古潭帯を貫くトンネル群
2023.1.18

トンネルと地下 2011年(平成23年)12月,Vol.42,No.12
蛇紋岩の分布する日高山脈をトンネル群で貫く−北海道横断自動車道夕張〜占冠間−
東日本高速道路(株)北海道支社千歳工事事務所所長 水口和之,同 穂別工事区工事長 高橋俊長,同 工務課長 友尻正一

 北海道横断自動車道は,黒松内町を起点として小樽市,札幌市,千歳市,夕張市,帯広市近郊を経て根室市および網走市に至る694kmの高速道路である。このうち小樽〜札幌〜夕張間および占冠〜本別・足寄間が既に開通しており,残る夕張〜占冠間34.5kmの開通により,道央圏と道東圏を結ぶ高速道路ネットワークが概成される。
 夕張IC〜占冠IC間は,西に標高1,668mの夕張岳を有する夕張山地,東に高峻な日高山脈に挟まれた山岳地帯を東西に貫いていることから,これら山脈は日高造山作用に伴って生じた地質や地形の影響を考慮してさまざまな対策をとっている。
 本稿では,この間の8つのトンネル(夕張方から久留喜トンネル〜占冠トンネルまで)の概要を説明するとともに,その中でとくに技術的難易度の高かった穂別トンネル(4,318m)と占冠トンネル(3,824m)の計画と実施工内容を報告する。



 なお、本工事は、平成22年度「土木学会技術賞U;道東自動車道夕張〜占冠間建設事業〜蛇紋岩地帯を貫く長大トンネル群の建設〜」を受賞し、平成23年10月29日に開通している。

 1).久留喜トンネル(481m)
 東坑口に大規模な地すべり地形があり河川の切り替えと押え盛土を行った上で、坑口付けを行い施工した。機械掘削により約10か月で貫通した。また、覆工コンクリートの品質向上を目指し、中流動コンクリートを全面的に採用した。

 2).楓トンネル(1955m) 工事中名:ユーパロトンネル
 古第三紀泥岩地山で機械掘削。切羽崩落が頻発し、合計40シフト(1シフト9m)におよぶAGFの採用や鏡ボルト、注入式フォアポーリングを駆使し、33か月で貫通した。石炭ズリ山を約80m区間、試験施工を行った薬液注入にAGFを追加し、無事掘削を完了した。

 3).大夕張トンネル(4,172m)
 地山は白亜紀の砂岩・泥岩から成る。施工は西坑口から2,018m、東坑口から2,154mをそれぞれ掘進した。発破掘削により約30か月で貫通した。トンネル中央で本トンネル下約33mの土被りでJR石勝線の登川トンネル(昭和40〜45年施工)と交差するため、交差する前後100m区間で変位を逐次(ちくじ)計測し、鉄道監視員を配置し掘削を進めた。避難坑の施工は東西ともにレール工法を使って掘削した。

 4).長和トンネル(1,541m)
 地山は新第三紀の泥岩や白亜紀の泥岩から構成される。西坑口から片押し約24か月で貫通した。坑口から482m地点で約10m3の天端崩落発生。泥岩にスメクタイトが含まれており湧水により地山が膨張したものと推察された。29m区間で縫い返しを行い、その後の50mも上下半の沈下が進んだことから、上半仮インバート閉合、下半では吹付けインバート+インバートストラットによる断面閉合を実施した。

 5).タンネナイトンネル(816m)
 地質は、ジュラ紀〜白亜紀のハッタオマナイ層砂岩粘板岩および蛇紋岩で、それらを覆って地すべり堆積物や崖錐堆積物が分布する。また、トンネルの東坑口部上部には地すべりブロックが存在したため集水井の設置や水抜ボーリングを施工し、地山を安定させてから工事を行った。東坑口から片押し掘進で、約17か月で貫通した。


 タンネナイトンネル地質縦断図(中央部に大規模な蛇紋岩地すべり)
[出典]中野清人・森田 篤・西村和夫「施工事例にもとづく早期閉合の支保構造分析と支保の効果に関する考察」土木学会論文集F1(トンネル工学),Vol.75,No.1,7-25,2019.

 6).占冠中央トンネル(507m)
 トンネル中央部に国設占冠中央スキー場があり、土被り約3.5mのため、偏圧対策として土被り6mを確保するよう押え盛土を実施した(延長65m、セメント安定処理盛土約1,200m3)。タンネナイトンネルと同様に西坑口から片押しで進め、約11か月で貫通した。

 7).穂別トンネル(4,318m)
 当路線で最長のトンネルで道内の高速道路トンネルでも最長のトンネルである。地質はメランジェと呼ばれる岩石種の異なる岩体(泥岩、緑色岩、蛇紋岩)が複雑に入り組んだ地質構造となっており、中でも土被り200mを超えるトンネル中央部では約500m超にわたって存在する蛇紋岩の施工は難工事が予想された。



 工事は地質調査を兼ねて西坑口避難坑(2,150m)を先行し地山の変状量、メタンガス量、掘削時の湧水量等の施工実績を本坑の設計断面に反映させた。本坑は西坑口から1,951m、東坑口から2,367mをそれぞれ掘進し、約53か月で貫通させた。
 地山は切羽での集中湧水はないものの、一軸圧縮強度2MPa以下、地山強度比は0.2〜0.5mと極めて脆弱な地山が分布した。このため、JR石勝線の施工実績も参考にしたFEM解析をもとに、蛇紋岩地帯の設計断面を次のように設定した。
@軸構造に近づけるため、インバート半径を上半半径の1.5倍とした円形断面
A(補助ベンチ付き)全断面掘削工法とし、上半切羽離隔1D程度以下でインバート吹付けによる早期断面閉合
B高い押出し性土圧に対抗するため高強度支保部材採用による二重支保構造,すなわち1次支保工・インバートはHH-200+SC30cm、2次支保工・インバートはHH-154+SC25cmとした。
C全断面掘削を考慮した切羽安定のための補助工法採用(アーチ部長尺先受け工,鏡吹付け併用長尺鏡ボルトを用い、打設範囲や間隔は臨機に対応)

 早期閉合の施工手順は上半掘削、下半掘削、インバートの順に、おのおの2mサイクルで進める3分割施工で、断面閉合は切羽離れ10mの位置とした。変形余裕量は二重支保によるFEM解析の150oとメランジェ区間の変位傾向(100〜150o)から300oと設定し、早期閉合効果により2次支保工建込み後の変位総量200o程度で施工した。
 補助工法に多大な時間を要しため、サイクルタイムの短縮が必要となり、主要施工機械の2編成化で約30%のサイクル短縮を図った。二重支保工区間においては支保量の減量による設計の合理化と施工の効率化を図る目的で、1次・2次吹付けコンクリートともに初期強度の発現の優れた瞬結吹付けコンクリートを採用した。また、蛇紋岩区間のEパターンでの覆工コンクリートは、変位がトンネル標準示方書の1〜3o/月を満足するが微増する傾向があったため、長期的な変状対策として鋼繊維補強コンクリートによる対策を行った。
 本トンネルの避難坑はすでに貫通していたが、本坑掘削の影響で蛇紋岩部約500mのうち約370m区間でインバート部に変状が発生した。本坑と避難坑の離隔を50m(標準3D≒30m)で設計したが、本坑掘削による緩み領域が非常に大きく、強大な地圧が避難坑に作用したものと考えられた。側壁変状部は増し吹付け、全周変状部30mは円形断面による全断面縫い返しにより周辺地山の安定化を図った。

8).占冠トンネル(3,824m)
 地質は、ジュラ紀〜白亜紀のハッタオマナイ層砂岩、粘板岩が主体で、トンネル中央部は蛇紋岩を伴うメランジェ帯となっている。工事は西坑口から3,100mを掘進し、東坑口からはタンネナイトンネルと占冠中央トンネルを掘削してから本トンネルに取り掛かったこともあり、724mの掘進となり、着手から貫通に約60か月を要した。特に、東側坑口は大規模な地すべり地形が分布し、地すべり崩積土が厚いため、集水井、水抜ボーリング、抑止杭等の地滑り対策を実施している。
 蛇紋岩を複雑に取り込むメランジェ地帯の掘削では穂別トンネルと同様に二重支保構造とし早期閉合を採用した。避難坑で下半とインバートストラットが座屈した実績とFEM解析をもとに、1次鋼アーチ支保工とインバートストラットを一体型として計画した。2次支保工は上半切羽後方30〜50mで施工した。1次支保工の早期閉合と2次支保工設置の効果によって蛇紋岩を伴うメランジェ地帯の内空変位は200o前後で収束した。
 避難坑は穂別トンネルと同様に本坑と5D(約50m)を確保し、施工時の吹付けコンクリートひび割れおよび鋼製支保工の座屈変状に対しインバートの剛性を増し曲率半径を小さくして対策していたにも関わらず、西からの本坑掘削が近づくに従い、内側への変形や著しい盤ぶくれが発生した。このため、本坑掘削が完了してから円形断面に修復を行った。



膨張性蛇紋岩に対する早期閉合と二重支保構造
2023.1.18


トンネルと地下 2011年(平成23年)10月,Vol.42,No.10
蛇紋岩脆弱地山を早期閉合と二重支保工で掘る−北海道横断自動車道占冠トンネル西工事−
東日本高速道路(株) 北海道支社 千歳工事事務所 占冠トンネル西工事長 生方也寸志,(株)高速道路総合研究所 道路研究部主任 関 茂和,三井住友建設(株)・佐藤工業(株)特定建設工事共同企業体所長 三浦文明・同工事課長 萩 雅雄

1.概要
 占冠トンネルは,北海道横断自動車道(夕張〜占冠間)のうち占冠ICから西に約3 kmに位置する延長3,825mの避難坑を併設する2車線長大トンネルである。避難坑は本坑とほぼ平行に30〜50mの離隔をとって併設する。このうち,西工事(本坑3,100m,避難坑3,098m)は,粘板岩と蛇紋岩の破砕帯区間で施工が著しく難渋したJR石勝線鬼峠トンネルと地質状況が酷似していることから蛇紋岩脆弱地山での施工が課題であった。先行する避難坑の計測結果や近隣の穂別トンネル施工を参考に,本坑の支保や施工法を検討した結果,早期閉合と二重支保工による施工を採用した。本稿では,これらの支保検討(設計)や施工経緯と計測結果について報告する。

2.地形・地質の概要
 トンネルの地質構成、土被り、地質構造、速度層、岩石物性値は次のようであった。
@占冠トンネルの地質は、神居古潭帯のハッタオマナイ層、新第三紀中新世のニニウ層群滝の上層、第四紀の地すべり崩積土から成る。トンネル一般部中央ではハッタオマナイ層粘板岩が主体で蛇紋岩を伴うメランジェを挟在する。メランジェは切羽断面程度では混在岩と呼ぶ。
A土被りは最大400mで、STA723〜726の蛇紋岩脆弱地山の土被りは200〜150mである。この区間の地山は破砕質の混在岩から成り、粘板岩が主体で蛇紋岩や凝灰岩(ハイアロクラスタイト)などを伴う複雑かつ不均質な地質である。南北方向の断層・破砕帯が数多く分布し、褶曲構造も伴うため、地山には低強度区間や潜在応力が蓄積している区間が、トンネルルートを横断するように断片的に分布する。



BSTA723〜731区間の地山弾性波速度 (Vp) は3.2〜4.2km/secのなかに1.9〜2.0km/secの低速度帯が複数存在する。
C避難坑の切羽状況や実施した地山試料試験結果から以下が判明した。
・亀裂の非常に多い破砕帯であり、蛇紋岩・凝灰岩を多く伴う。
・地山強度比が非常に小さい(0.1)。
・蛇紋岩や凝灰岩は水に劣化しやすい。
・スメクタイトは微量である。
・変形係数は150〜190N/o2(MPa)である。

3.避難坑施工(変状)の経緯
3-1 STA723+13〜726+30区間の概要
 当区間の掘削では、小崩落が頻繁に発生し、きわめて不安定な切羽状態で、変位が大きく収束がきわめて遅いのが特徴であった。切羽は粘板岩、チャート、緑色岩と蛇紋岩が混在する混在岩であった。蛇紋岩は葉片状〜粘土状を呈し、切羽では湧水も確認された。地質はJR鬼峠トンネルで施工に難渋した破砕帯の分布区間に相当する」と考えられた。
 STA.723+13で天端崩落が発生し、以降は切羽安定対策としてフォアポーリング、鏡ボルトを採用し、支保パターンDU-3-B-Pに変更したが、掘削後数日経過して以後、吹付けコンクリートのひび割れ、鋼製支保工の座屈などの変状が発生したため、支保剛性を増し、インバートの曲率を大きくしたBU-7-B-Pパターンに変更した。しかし、本坑掘削の接近・通過に伴い、再び盤膨れ・支保工の座屈・破断などの変状が発生し、支保構造の破壊に至った。
3-2 計測工
 A計測の結果、天端沈下に比較し側方変位が卓越した挙動を示した。内空変位は掘削後30日で30〜50oでいったん収束後、変位が進行し、掘削後170日、約140mm程度で初期の変位増加が終了したが、以後微増し、300日以降、さらに増加し最終的の180o以上の変位が発生した。これらは、インバートストラットの剛性不足により外周支保工とインバートストラットの接合部付近が降伏し、断面閉合効果が損なわれたことによると考えられた。

4-5 本坑支保構造の検討
 再現解析で得られた地山物性を用いて、二重支保を含めた各種支保パターンが適用可能か否かを、STA723+80以外にも、FEM解析にて検討した。対象支保パターンは3パターン(DUパターン2、E二重支保パターン1)を設定した。本検討における着目点は次の2点である。
@支保応力
A二重支保工を用いた場合の「いなし」の効果

 本稿では、「いなし」を「一次支保で『ある程度の内圧を与えながら』地圧の開放および変位の発生を促すことで、二次支保の部材発生応力と変位が軽減する効果」と定義する。

表-4 本坑支保パターン諸元
名称
支保の構造
DU-a2
1次支保

アーチ・側壁
・吹付けコンクリート:
 250o (36N/o2)
・鋼製支保工:H-200(SS400)
・ロックボルト:L=4.0m(TD24)
・溶接金網:Φ5×150×150
インバート
・吹付けコンクリート:
 250o (36N/o2)
・鋼製支保工:H-200(SS400)
変形余裕量:全周150o
覆工
・覆工厚:300o
(インバートも同一厚)
・非鋼繊維補強(アーチのみ)
・インバート内R:11,200mm
(上半内空R×2.0)
DU-a3
1次支保

アーチ・側壁
・吹付けコンクリート:
 300o(36N/o2)
・鋼製支保工:H-200(SS400)
・ロックボルト:L=4.0m(TD24)
・溶接金網:Φ5×150×150
インバート
・吹付けコンクリート:
 300o(36N/o2)
・鋼製支保工:H-200(SS400)
変形余裕量:全周200o
覆工
・覆工厚:400o
(インバートも同一厚)
・非鋼繊維補強(アーチのみ)
・インバート内R:11,200mm
(上半内空R×2.0)
ET
1次支保

DU-a3の1次支保と同じ
2次支保
アーチ・側壁
・吹付けコンクリート:
 250o(36N/o2)
・鋼製支保工:H-150(SS400)
インバート
・吹付けコンクリート:
 250o(36N/o2)
・鋼製支保工:H-150(SS400)
覆工
DU-a3の覆工と同じ
適用 DU-a3は変位が増大したときは2次支保を設置しE1に変更することが出来る




 発生応力の評価法は、鋼アーチ支保工応力と吹付けコンクリート応力に着目し、支保応力評価基準により支保構造の健全性を評価した。具体的には、鋼アーチ支保工が評価基準値(設計値または終局値)を超過した場合、超過分を吹付けコンクリートが負担すると考えてモデル化し、その際の合計吹付けコンクリート応力と評価基準(設計値または終局値)を比較して支保構造を評価した。
 本稿では合成支保応力を次のように定義する。
 σA=(σs−σ^)(As/Ac)+σc
ここに、
 σA:合成支保応力(N/m2)
 σs:鋼アーチ支保工応力(N/m2)
 σ^:鋼アーチ支保工応力の設計値または終局値(N/m2)
 σc:吹付けコンクリート応力(N/m2)
 As:鋼アーチ支保工の断面積(m2)
 Ac:吹付けコンクリートの断面積(m2)

  表-5 支保応力評価基準

設計値
終局値
備考(As追記)
鋼アーチ支保工
応力 (SS400)
240N/o2
(降伏応力)
400N/o2
(圧縮強度)
As(H200)=6353o2
As(H150)=3965o2
吹付けコンクリート
応力(高強度)
13.5N/o2 36.0N/o2 13.5=36×1.5(仮設割増)
÷4(安全率)

(当サイト注釈)
例えば、DU-a2パターンで、σs=440N/o2、σc=20N/o2と解析または計測し、設計値で評価する場合、
σA=(340−240)(6353/(250×1000))+σc
 =100×0.0254+20=2.54+20=22.5<36.0N/o2・・・設計値を超え終局値以下
 また、EIパターンで、σs=440N/o2、σc=34N/o2と解析または計測し、終局値で評価する場合、
σA=(440−400)((6353+3965)/(550×1000))+σc
 =40×0.0188+34=0.75+34=34.75<36.0N/o2・・・設計値を超え終局値以下

  表-9 2次支保設置時期
2次支保の施工時期
変位状況
上半切羽後方10m以内 初期変位速度≧30o または
一次支保閉合までの変位量≧70o
上半切羽後方30〜50m 初期変位速度<30o かつ
一次支保閉合までの変位量<70o

5.本坑施工実績
 5-1 切羽状況
 5-2 施工状況
6.二重支保構造の検証
 6-1 変位と周辺地山の状況
 6-2 支保の状況
  6-2-1 ロックボルト軸力
  6-2-2 吹付けコンクリート応力
  6-2-3 鋼アーチ支保応力
  6-2-4 合成支保応力
7.まとめ
 占冠トンネルでは、蛇紋岩脆弱岩において二重支保構造を採用し、以下の知見を得た。
1)一次支保工が降伏に至っても、二次支保工を設けることにより、一次二次支保が一体となった支保構造全体の健全性は損なわれていないことを確認できた。
2)一次支保により地圧を開放および変位の発生を促すことで、二重支保の部材の発生応力と変位が軽減する効果を実施工により確認することが出来た。
3)初期変位速度が極端に大きくない本トンネルの地山では、今回の「いなし」概念と施工方法は有効であった。

(以上、早期閉合方法を中心に抜粋)

【穂別トンネルの早期閉合と二重支保】

(1)トンネルと地下 2010年1月号,Vol.41,No.1,pp15-25.
高耐力支保による早期閉合で押出し性地山に挑む−北海道横断自動車道穂別トンネル東工事−
 東日本高速道路(株)北海道支社千歳工事事務所 高橋俊長・向井 隆
 清水建設(株)・株木建設(株) 井上孝俊・垣見康介
(要旨)
 脆弱で自立度の低い粘板岩・緑色岩メランジュのトンネル掘削に標準パターンDUで施工を開始したところ大変位とトンネル支保構造体の破壊が生じ,縫い返し施工を余儀なくされた.この以奥には,粘板岩・葉片状蛇紋岩メランジュと大規模な粘土状蛇紋岩体が分布するので,厚肉円筒理論を用いて必要支保耐力を算定し,支保部材の多重化による高耐力の二重支保構造を設計し,切羽から1D(D:掘削幅) 以内で早期閉合する補助ベンチ付き全断面掘削を採用した.
 その結果,支保構造体の厚肉,高耐力化により,変形余裕の範囲内でトンネルの力学的安定が確保でき,この設計,施工方法の有効性が示された.また,縫い返し施工を含めた力学挙動特性が明らかになった.

(2)トンネルと地下 2010年5月号,Vol.41,No.5,pp7-18.
蛇紋岩地山を早期閉合と二重支保で変位制御−北海道横断自動車道穂別トンネル西工事−
 東日本高速道路(株)北海道支社千歳工事事務所 高橋俊長
 鴻池・飛島JV 大村修一・高田 篤,(株)鴻池組 山田浩幸
(要旨)
 穂別トンネルは,全畏4,323mの山岳トンネルである.西工事では西側の延長1,951mをNATMで掘進している.本工事のうち,土かぶり250m以上の大土かぶりにおける脆弱地山(蛇紋岩)区間で,数値解析の結果を参考に変位を制御した高規格二重支保の早期閉合を実施した.
 また,EUパターンの191mを,切羽の安定性を確保する目的でトンネル前方外周にグラウンドアーチを形成する「トンネル外周補強工」および「長尺鏡ボルト」などの補助工法を駆使して施工した.
 本稿は,変位制御による高規格二重支保の支保構造の段計の考え方と施工結果について報告する.

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