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津波・高潮ハザードマップマニュアル


津波・高潮ハザードマップマニュアル(2004)
2025.8.10
「津波・高潮ハザードマップマニュアル」平成16年(2004年)4月,監修 内閣府(防災担当),農林水産省農村振興局,農林水産省水産庁,国土交通省河川局,国土交通省港湾局,発行(財)沿岸開発技術研究センター,定価2,100円
(注)委員会(ハザードマップ研究会,座長:京都大学河田恵昭教授)及び編集・発行が,2004年12月インドネシアのスマトラ沖で発生したインド洋大津波の以前,2011年3月東日本太平洋沖地震津波発生7年前であることに注意.まえがきによると,この時点では,日本海溝,千島海溝に沿った地震津波,東海・東南海・南海地震津波が想定されている.また,気候変動による海面上昇と台風の規模増大による高潮被害が警戒されている.

【概要】
 平成16(2004)年 津波・高潮ハザードマップマニュアルパンフレット

目次
本編
序章 はじめに
 津波・高潮ハザードマップとは,津波・高潮災害に対する地域住民の避難や施設整備等の検討のために,浸水が予測される区域と浸水の程度を示した地図(浸水予測区域図)に,必要に応じ避難場所,避難経路などの防災情報を加えたものである.
1)定義
・「住民避難用ハザードマップ」;住民が避難のために用いる
・「行政検討用ハザードマップ」;各行政部署が防災のための諸検討に用いる
・想定外力(津波・高潮);本マニュアルでは以下の3つの外力レベルを設定する.
 外力レベル1:現実に実感できる発生頻度の外力
 外力レベル2:防護目標にかなう施設設計上の外力
 外力レベル3:最悪の浸水状況をもたらす外力
2)マニュアルの対象者
 津波・高潮ハザードマップの整備主体
 同ハザードマップ作成を支援する関係者

第1章 津波・高潮ハザードマップの必要性と位置づけ
 1.1 津波・高潮に対する防災対策の現状
 1.2 津波・高潮に対する防災対策の課題
 1.3 津波・高潮に対する防災対策の方向性
 1.4 津波・高潮防災対策におけるハザードマップの位置付けと役割

第2章 津波・高潮ハザードマップの概要
 2.1 津波・高潮ハザードマップの作成目的
 2.2 津波・高潮ハザードマップの作成範囲及び対象災害
 2.3 津波・高潮ハザードマップの整備主体と役割分担
・「住民避難用ハザードマップ」;「各市町村」が,国や都道府県の支援を受けつつ,住民の参加をうながして作成する.
・「行政検討用ハザードマップ」;「市町村または都道府県の各担当部署」が,国や都道府県の支援下で,特に防災関係機関や海岸管理者等の積極的な支援を受けて作成する.


  図-1 津波・高潮ハザードマップの整備主体と支援関係
 (H16津波・高潮ハザードマップマニュアルパンフレットより)

 2.4 ハザードマップの形態及び表現
 2.5 津波・高潮ハザードマップの作成手順
 当ハザードマップの作成手順は,(1)浸水予測区域の設定,(2)津波・高潮防災情報の表示の順で行う.
 なお,浸水予測区域の設定においては,外力条件の設定や施設条件の設定等の条件設定を行うと共に,浸水予測や施設危険度評価といった各種シミュレーションを実施する.
 また,津波・高潮防災情報の表示においては,記載事項の設定や表現方法の設定といった表示すべき防災情報の内容設定と,必要事項の記載,必要情報の図化といった具体的な表示情報の作成を行う.その際,ワークショップ等により地域独自の情報を盛り込むなど地域での工夫が重要である.


 図-2 津波ハザードマップ(住民避難用&行政検討用)作成の流れ

 2.6 ハザードマップの避難時の活用

第3章 浸水予測区域の検討方法
 3.1 津波・高潮の特徴
 津波・高潮はそれぞれの発生原因や現象が異なっており,それぞれの特徴を認識した上で,浸水予測区域の検討を行うことが重要である.
(1)津波の特徴
 津波は,ほとんどの場合,その原因となる地震や地すべり・火山爆発などの発生時期や規模の予測が困難である。
 地震に起因する津波の場合は,震源に沿岸地域では,地震直後に津波が来襲し,浸水するなど,避難や住民への通報,水門や陸閘等の操作のための時間的余裕が少ない.
 津波は流速が大きく,特に引き波による構造物の被害が考えられる.さらには,地震動や押し波に伴う船舶の衝突による防護施設の被災により浸水が生じる可能性もある.
 浸水域の広さは,主として津波高と地盤の高さによるが,津波高は地震の規模や震源位置及び海底の地形によっても異なる.
 津波は,第一波だけではなく複数回にわたり来襲し,最大の津波高が二波目以降に生じる場合も多い.
 波力による施設への影響として,津波の流体力を考慮する.また,河川からの浸水等については必要に応じて検討する.
(2)高潮の特徴
 高潮は,ほとんどの場合,大規模な台風に伴って発生するため,ある程度は予測が可能である.
 顕著な高潮浸水が生じるケースは,天文潮の満潮と,潮位偏差の極大値が重なった場合において発生することが多いが,勢力の強い台風では,台風の来襲が満潮等に重ならなくても浸水被害が生じることがある。
 また,一度破堤した場合には,堤外地(堤防の海側)全体の水位が高いため,その被害はかなり広範囲に及ぶことになる.

 3.2 浸水予測区域の設定における条件設定の考え方
(1)条件設定項目
 浸水予測区域の設定にあたり,災害対策を検討するための対象外力(外力条件)と災害時の施設の破壊形態・機能状況(施設条件)を適切に設定する.複数地域にまたがる災害を対象とする場合には,隣接市町村における条件設定との整合性に留意する必要がある.

 表-1 津波・高潮ハザードマップに一般的に条件設定が必要な項目
 区分  津波ハザードマップ  高潮ハザードマップ
 外力条件  1.地震規模  1.台風規模
 2.震源域(波源域)  2.台風進路
 3.地盤変位  3.潮位(天文潮)
 4.潮位(天文潮)  4.河川条件
 5.河川条件  −
 施設条件  1.施設の破壊条件  1.施設の破壊条件
 2.施設機能状況  2.施設機能状況

(2)外力条件の設定
 浸水予測区域の設定に際しての外力条件は,最悪の条件設定を基本として,作成目的及び作成対象地区の特性に応じ,合理的な外力レベルを検討・設定する.

 表-2 津波・高潮検討と外力条件の対応
 外力種別  津波  高潮
 外力レベル1 養殖施設等に影響する津波
(地上に影響しない)
発生頻度の高い高潮
 外力レベル2 設計外力(既往最大津波)
 施設設計上の整備目標
設計外力(既往最大又は想
定最大[当該地域の既往最
大規模・最悪経路])
 外力レベル3 想定最大津波(想定地震規
模,最悪震源位置)
想定最大高潮(わが国既往
最大規模・最悪経路)

(3)施設条件設定の考え方
 浸水予測区域の設定に際しての施設条件は,災害の特性,作成目的,作成対象地区の特性に応じて設定する.

 3.3 浸水予測手法の考え方
 浸水予測は,外力条件や施設条件を適切に反映し,作成目的・作成対象地域の特性に応じた精度を有する手法で実施するものとする.基本的には時系列を考慮した数値シミュレーションにより予測することが望ましい.
 予測に用いた諸データや浸水予測結果はハザードマップへの加工,今後の見直しを考慮し,地理情報システム(GIS)で取り扱いができる形式で作成し,共有できるようにすることが望ましい.
 また,浸水予測結果は不確実性を有することに留意が必要であるとともに,予測結果の妥当性についての適切な評価も重要である.


 図-3 時系列を考慮した数値シミュレーションによる浸水予測図
  左図;最大の浸水域・浸水深コンタ図,右図;時間経過を図示

「潮位(天文潮)と波高について」
 津波・高潮計算に用いる潮位(天文潮)は,朔望平均満潮位(H.W.L)を基本とする.

 図-4 津波における潮位,波高,津波高,浸水深,遡上高の関係


 図-5 高潮における潮位,潮位偏差,浸水深の関係

【参考】20011年以後の岩手県津波浸水情報提供システム留意事項(岩手県HP,2025)
「津波浸水想定」は、最大クラスの津波が悪条件下において発生した場合に想定される浸水の区域(浸水域)と水深(浸水深)を表したものです。最大クラスの津波は、現在の科学的知見を基に、過去に実際に発生した津波や今後発生が想定される津波から設定したもので、「発生頻度は極めて低いものの、甚大な被害をもたらす津波」 であり数百年から千年に一度あるいはそれよりももっと発生頻度が低いものですが、これよりも大きな津波が発生する可能性がないというものではありません。
「津波浸水想定の浸水域や浸水深」は、「何としても人命を守る」という考えの下、避難を中心とした津波防災地域づくりを進めるためのものであり、津波による災害や被害の発生範囲を決定するものではないことにご注意下さい。
「浸水域や浸水深」は、津波の第一波ではなく、第二波以降に最大となる場所もあります。浸水域や浸水深は、局所的な地面の凹凸や建築物の影響のほか、地震による地盤変動や構造物の変状等に関する計算条件との差異により、浸水域外でも浸水が発生したり、浸水深がさらに大きくなったりする場合があります。
「津波浸水想定」では、津波による河川内や湖沼内の水位変化を図示していませんが、津波の遡上等により、実際には水位が変化することがあります。今後、数値の精査や表記の改善等により、修正の可能性があります。
「津波浸水想定図作成の主な計算条件」
(1)構造物・造成知等の反映条件:現況
  ・令和2年度末時点の整備状況を反映
(2)各種構造物の地震による沈下条件
(3)耐震評価結果がある場合:結果を反映
(4)耐震評価結果がない場合:
  ・盛土構造の堤防・防潮堤等は「地震前の高さ25%まで沈下」
  ・コンクリート構造の水門・防潮堤等は「構造物がない状態」
(5)各種構造物の津波の越流に対する状況:
  ・津波が越流し始めた時点で「破壊」
  ・「破壊」後の形状は「構造物がない状態」
(6)計算時の潮位:朔望平均満潮位

第4章 浸水予測結果からの津波・高潮ハザードマップ作成方法
 4.1 目的別ハザードマップの記載内容

 表-3 災害の各段階におけるハザードマップの利用主体と利用方法
災害の段階 利用主体     利用方法
災害発生前  住民 避難活用情報・災害学習情報・地域情報
(土地利用等)提供
 行政 予防対策(避難場所の整備,防災施設の
整備等)策定・実施
災害発生直前
(高潮)
 住民 災害情報(高潮の高さ,避難場所等)提
 行政 応急対策(避難計画,救援計画等)策
定・実施
災害発生後  住民 避難後の情報(自治体の指示等)提供
 行政 応急対策(避難計画,救援計画等)策
定・実施

 津波・高潮ハザードマップ作成においては,津波・高潮災害の特徴に留意し,その危険度及び関連情報を適切にする必要がある.

 表-4 住民避難用ハザードマップ作成における代表的な留意点
区分 住民避難用ハザードマップ作成における代表的な留意点
津波災害  地震直後に津波が来襲する地区がある→揺れを感じた段階で即時に避難する必要がある
 地震により建物倒壊が発生する→道路閉塞による避難困難の可能性がある
 津波特有の被害がある→引き波,流速等にも注意が必要
高潮災害  台風接近により事前に把握できる→住民の避難判断の時間が比較的ある
 台風最接近時は暴風雨の中である→暴風雨の中は避難困難
共通  災害イメージの固定化は避ける→間違った認識を持たせない(イメージ固定につながるシミュレーションの詳細な結果等は災害学習情報として別冊にする)

 4.2 住民避難用ハザードマップの記載内容

【避難活用情報】
(1)浸水予測区域,避難場所,避難経路など避難に不可欠な情報を記載する必要がある.


  図-6 津波の浸水深,津波の浸水高および遡上高(T.P.基準)

 表-5 2011東日本大震災後の新しい警報・注意報(気象庁)

 

 図-7 2階建て家屋などによる津波・高潮浸水深ランク
 (参考図書;令和5(2023)年 水害ハザードマップ作成の手引き, 
   国交省 水管理国土保全局 河川環境課 水防企画室)


  図-8 津波避難ビルを想定した津波浸水深ランク
    (地方自治体の津波ハザードマップを参考にした)8

(2)想定外の外力に対する留意を明記するとともに,確実な避難のために浸水予測区域の外側に「バッファゾーン」を設け,「要避難区域」の形で示す工夫も考えられる.
(3)津波については,浸水開始時間や浸水の方向,浸水深が把握でき,浸水しない建物や避難場所,避難経路などの判別が可能な表現とする.
(4)高潮については,詳細な浸水深・浸水区域が把握でき,避難場所や避難経路の判別,個々の建物の確認が可能なシンプルで分かりやすい表現の情報とする.

【災害学習情報】
(1)地域住民が「津波災害とはどのようなものか」,「高潮災害とはどのようなものか」などを理解するための情報である.
(2)「過去の被災履歴(浸水域等)」,「これまでの防災施設等の整備状況とその効果」についても,地域住民の防災意識の向上,「自助」「共助」の意識喚起,防災関係施設整備への住民理解の促進の点で有効な災害学習情報であると考えられる。

 4.3 行政検討用ハザードマップの記載内容

    表-6 行政検討用ハザードマップの活用方法の例 
用途 活用方法
予防対策用 1)避難場所や避難路の整備
2)災害対策本部の適地選定
3)職員等に対する防災教育
4)土地利用計画,地域計画
5)施設整備の検討
応急対策用 1)避難計画,救援計画
2)施設運用計画

   表-7 行政検討用ハザードマップの基本的な記載事項
区分 基本情報 目的別情報の例
外力情報 想定している1つの外力 その他の外力を含む
浸水に関す
る情報
浸水予測区域 過去の災害
予測最大浸水深ランク
予測浸水開始時間,浸水開始箇所
要避難区域
防災情報 防護ライン 防災拠点
人口分布 警察・消防
土地利用 公共・公益施設
緊急輸送路 要救護者施設
耐震バース 電力施設
避難施設 海岸保全施設等
避難場所
避難経路


 図-9 津波警報・津波注意報に関する伝達メディア

 4.4 浸水予測区域及び要避難区域の表現方法
 浸水予測区域及び要避難区域は,浸水予測結果をハザードマップの作成目的に応じて加工して作成する.なお,予測された浸水域は不確実性を有していることに留意が必要である.
 避難を検討するための浸水に関する情報としては,浸水域,浸水深,浸水開始時刻及び流速などが挙げられる.また,確実な避難のために災害特性,地形・居住状況を考慮して,浸水予測区域の外側にバッファゾーン(予測上は浸水しないが予測の不確実性を考慮すると浸水の恐れがある区域)を設け,浸水予測区域とバッファゾーンと合わせて要避難区域として示す工夫が必要である.


   図-10 要避難区域=浸水予測区域+「バッファゾーン」

   表-8 要避難区域の設定方法の例
     区 分    設定方法
地形的なものか
ら設定する方法
1)標高による設
標高〇m(最大浸水深の予測結果から見て[例えば最大水位のX割増し]設定)以下の領域を要避難区域として設定
行政から見た避
難指示領域区分
から設定する方
2)幹線道路等に
よる設定
浸水予測区域の外側に位置する幹線道路等で囲まれた領域を要避難区域として設定
3)町丁目界によ
る設定
浸水予測区域に近接する町丁目領域を要避難区域として設定
 ※1)の方法の割増し係数について当マニュアルでは言及がない.実際には,波源の不確かさを考慮すると,割増し係数=1.5程度が妥当ではないかと思われます。(当サイト感想)


  図-11 要避難区域の検討のフロー

第5章 津波・高潮ハザードマップの周知,住民理解,利活用等
 5.1 津波・高潮ハザードマップの周知
 (1)津波・高潮ハザードマップの周知の重要性
 (2)周知方法
 5.2 住民理解の促進方策
 (1)住民参加の必要性
 (2)ワークショップの開催
 (3)災害学習を通じた津波・高潮ハザードマップの住民理解の促進
 5.3 津波・高潮対策における津波・高潮ハザードマップの利活用
 5.4 津波・高潮ハザードマップの検証及び見直し
 5.5 整備促進方策


参考資料編
2025.8.10
参考資料-1 時系列を考慮した数値シミュレーションによる浸水予測
第1章 津波浸水予測計算
 1.1 津波浸水予測計算の流れ
 1.2 地震断層モデル
 1.3 地震断層モデルで表現される初期水位
 1.4 格子間隔
 1.5 標高
 1.6 河川地形条件
 1.7 潮位(天文潮)
 1.8 構造物条件
 1.9 構造物の地震被害
 1.10 津波数値解析手法

第2章 高潮浸水予測計算
 2.1 高潮浸水予測計算の流れ
 2.2 台風規模及び台風経路
 2.3 潮位(天文潮)
 2.4 計算波高
 2.5 格子間隔
 2.6 標高
 2.7 河川遡上
 2.8 構造物の破壊条件
 2.9 施設の機能状況
 2.10 高潮数値解析手法

参考資料-2 津波・高潮防災対策における津波・高潮ハザードマップの活用例
 @ ソフト面での活用例,A ハード面での活用例
 1. 住民避難用ハザードマップを活用した住民の自衛力の向上方策
 2. 津波・高潮ハザードマップを活用した避難計画の策定(行政対応)
 3. リアルタイム情報を活用した応急対策・復旧計画の検討

参考資料-3 関連ホームページリスト
補足:用語説明
 

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