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玄武岩の噴火様式


(1)玄武岩質’洪水’噴火 Basaltic flood eruption
2019.2.20
 アイスランド式噴火あるいは玄武岩質広域割れ目噴火とも呼ばれる。
 この噴火形式は,流動性の高い多量の玄武岩質溶岩の流出によって特徴づけられ,火山砕屑物は初期にごく少量噴出するに過ぎない。一回の噴火によって流出する溶岩の量は,0.1q3以下のこともあるが,10q3を超えることもある。
 この噴火形式の最大の特徴は,広域の割れ目から噴火が起こることであって,これを広域割れ目噴火という。このような噴火が,広範囲にわたって長い間繰り返して行なわれると,インドのデカン,北米のコロンビア川・南米のパタゴニアなどにみられるような玄武岩の溶岩台地がつくられる。また割れ目を充填したマグマは,延々と続く平行岩脈群として残されている。海洋底,とくに中央海嶺沿いや大規模な海台では,このような形式の多量の玄武岩流出を主とする噴火が行なわれてきたと考えらえている。






  アイスランドの最近の火山活動(2023など)

 広域割れ目噴火の典型的なものは,1783年に南アイスランドのラキで起こり、1961年に北アイスランドのアスキアでも起こった。
 前者は火山活動に先立ち地震に伴って長さ24kmの割れ目が生じ、この割れ目から流出した溶岩は約12q3におよび565q2の面積をおおったが,火山灰などの火山砕屑物はわずか0.28km3全噴出物の2%にすぎなかった。
 後者は約3週間にわたる地震と激しい噴気活動のあと,600mの割れ目から玄武岩溶岩の流出が約5週間続いた。この噴火では0.1km3の溶岩が11km2の面積をおおったと報告されている。
(勝井義雄,1976より)

(2)海洋島・ハワイ式噴火 Hawaiian eruption
2019.2.20
 上述のアイスランド式噴火と同じように,流動性に富む玄武岩マグマがあふれだす噴火で,一般に溶岩泉の活動を伴うのが特徴的である。溶岩泉の高さは,ふつう10〜50mであるが,まれに300〜500mに達することもある。しかしこのような場合でも,活動は決して爆発的ではなく,ちょうどホースから水が噴き出すように,ひきちぎれた溶岩は流動性を保ったまま周辺に落下して溶岩餅となる。






  キラウエア火山の最近の火口の火山活動(2023)

 噴火は頂上の火口とリフト・ゾーンとよばれる山腹〜山麓の割れ目から対で行なわれることが多い。この山体を横切るリフト・ゾーンの噴火では,はじめ割れ目沿いに溶岩泉がみごとな火のカーテンとなって活動し,その後,しだいに活動が局地化するのが一般的傾向である。しばしば溶岩湖がつくられ,その表面からはガスが小粒の泡となって噴出し、ペレーの毛・涙がつくられる。

 流出した溶岩は薄くひろがり,その厚さは一般に十数m以下で,時に数km2におよぷ面積をおおう。溶岩は,パホイホイ溶岩またはアア溶岩である。このような形式の噴火が繰り返されれば,ハワイのような盾休火山が生じる。また山腹のリフト・ゾーンから多量の溶岩が流出すると,頂上火口下のマグマ溜りが収縮して陥没が起こり,カルデラができる。
(勝井義雄,1976より)

(3)ストロンボリ式噴火 Strombolian eruption
 ストロンボリ式噴火は、玄武岩〜苦鉄質安山岩質火山砕屑物・溶岩の混合噴火を繰り返すことによって円錐形の成層火山を形成する噴火様式をいう。
 有名な地中海のストロンボリ火山は,古代ギリシャの頃から間欠的に火山灰・火山礫・火山岩塊などを高さ数10〜数100mに噴き上げ,ときには溶岩を流出してきたと伝えられている。このような活動をストロンボリ式噴火と名付けられている。
 この噴火は,マグマがいつも火口底まで上昇している状態で行なわれる。マグマは,玄武岩〜〜苦鉄質安山岩質で,上述のハワイ式噴火にくらべ,やや粘性に富むため,マグマから火山ガスの分離がたやすく行なわれない。そのため,小爆発が起こり,半溶融状態の溶岩塊を噴き上げる。噴出物には,しばしば紡錘状火山弾を混える。
 時々、流出する溶岩流も,ハワイ式噴火にくらべ粘性が大きいため,一般に短く,厚い。溶岩はアア溶岩または塊状溶岩が一般的で,まれにパホイホイ溶岩のこともある。このような火山砕屑物と溶岩の噴出を繰り返すことによって,円錐形の成層火山がつくられる。このように火山砕屑物と溶岩を同時期に噴出する活動を混合噴火とよぶことがある。
 

 イタリア半島周辺の火山分布図


 ストロンボリ火山(Stromboli Volcano)


火口から浅い所にマグマだまりがあり、小噴火を繰り返す。

 中米のイサルコ火山は1770年から1958年まで約2世紀にわたってストロンボリ式噴火を続け,基底からの高さ900mの成層火山として成長したものである。
 わが国の諏訪の瀬島,阿蘇(中岳),伊豆大島(三原山)などの近年の活動も,ストロンボリ式噴火といってよく、特に伊豆大島の中央にある三原山の活動は,ストロンボリ式噴火の典型的なものである。また秋田駒ケ岳の1970〜1971年の活動は,きわめて短期間であったがこの形式によく似ている。
(勝井義雄,1976より)

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