GEOENG 地質学と建設コンサルタント(理学と工学の融合へ)

鋼およびコンクリート


曲げを受ける部材の設計
2022.11.16
【鉄筋コンクリートの単鉄筋長方形はり】

[RC仮定条件]
(1)はじめに平面であった部材の横断面は部材の変形後も平面である。
(2)コンクリートの引張り強度を無視する。
(3)鉄筋およびコンクリートのヤング係数は一定とする。
(4)鉄筋と周辺のコンクリートのひずみは同じとする。

 ここで、(3)については、鉄筋のヤング係数をEs、コンクリートのそれをEcとすると、
 一般的な値として次のような値がある。
・Es=2.10E+05 N/o2(MPa)=2.10E+08 (kN/m2)
・Ec=1.40E+04N/o2=1.40E+07(kN/m2)
このとき、n=Es/Ec=21.0/1.40=15となる。


 鉄筋コンクリート 単鉄筋長方形はり

Step.1
条件(1)および(4)より、
εc/x=εs/(d−x)    相似形  (式01)
条件(3)について、応力σ=E・εだから、
  εc=σc/Ec,εs=σs/Es    (式02)
式02を式01に代入すると、
  σc/(Ec・x)=σs/{Es(d−x)}
  σc/x=(Ec/Es)・σs/(d−x)
よって σc=(σs/n)・x/(d−x)  (式03)
    σs=σc・n・(d−x)/x   (式04)


 単鉄筋長方形はり断面図 (b×h断面)


 ひずみ関係図


 応力関係図

Step.2
コンクリートの圧縮応力の総和C=鉄筋の引張り力の総和Tである。
 C=σc・xb/2 (xb;中立軸より圧縮側のはりの断面積)(式05)
 T=σs・As   (As;鉄筋の有効断面積の総和)(式06)
式04より
 σc・xb/2=As・σc・n・(d−x)/x
 (b/2)x2= As・n・(d−x)
整理すると
  x2+(2nAs/b)・x−(2nAs/b)d=0
この式は、K=2nAs/bとするとx2+Kx−Kd=0
  x2+Kx+(K/2)2−(K/2)2−Kd=0
  (x+K/2)2=(K/2)2+Kd
  x+K/2=√{(K/2)2+Kd}
  x=−K/2+√{(K/2)2+Kd}
   =−K/2+K/2√{1+4d/K}
Kを元に戻すと、
  x=−nAs/b+(nAs/b)√(1+2bd/nAs)
よって、x=(nAs/b){√(1+2bd/nAs)−1}  (式07)

ここで、k=x/d,,p=As/bd  [p; 鉄筋比]と置くと、
   k=(nAs/bd){√(1+2bd/nAs)−1}
   k=np・{√(1+2/np)−1}
   k=√(n2p2+2np)−np  (式08)

 すなわち、式08によって、鉄筋比pを与えられると、上縁から中立軸までの距離xを求めるための係数kを直ちに求めることができる。

Step.3
 次に、外力による曲げモーメントMと、断面内におこっている抵抗モーメントは等しくなければならない。
 いま、コンクリートの中立軸まわりのモーメントMcは、
 Mc=(σcbx/2)・(2x/3)=(σcb)x2/3  (式09)
鋼材の中立軸まわりのモーメントMsは、
 Ms=σs・As・(d−x)  (式10)
となる。
ここで、中立軸まわりの合計モーメントMは、M=Mc+Msであり、
 M=(σcb)x2/3+σs・As・(d−x)
この式は、(式04)より、σs=(σc/x)・n・(d−x)だから、
 M=(σcb)x2/3+(σc/x)・n・As・(d−x)2
よって、M=(σc/x){bx3/3+・n・As・(d−x)2} (式11)

断面係数Z=I/xで、σc=M/Z=Mx/Iから、
 σs=(Mx/I)・(1/x)・n・(d−x)
   =(nM/I)・(d−x)
また、I=(x/σc)・Mで、式11から
 I=bx3/3+・n・As・(d−x)2    (式12)

Step.4


 応力・モーメント関係図

 図のzが圧縮応力の総和Cの作用点と、また引張り応力の総和Tの作用点(鉄筋の図心)との距離であることを考えると、
 M=C・z=T・z   (式13)


  単鉄筋長方形はり断面図 (b×h断面)

 ここで、再度k=x/d, p=As/bd  [p; 鉄筋比]、
 すなわち、x=kd,As=pbd、とする。
 
また、図から
z=2x/3+(d−x)=d−x/3=d(1−k/3)=jd (式14)
      ただし、j=1−k/3   (式15)

式05 C=σc・x・b/2、式13、14から、
 M=C・z=σc・x・b・z/2=σc・kd・b・jd/2
  =σc・k・j・b・d2/2
よって、σc=2M/(kjbd2)   (式16)

また、式06 T=σs・As、式13、14から、
 M=T・z=σs・As・z
 σs=M/(As・z)=M/(pbd・jd)
よって、σs=M/(pjbd2)    (式17)

 応力度の計算にあっては、まず中立軸の位置を示すxを求め、次いで外荷重によるモーメントMからσc、σsを求めるのであるが、式08、16、17を使うと便利である。このとき、pに対するk、j計算結果表が利用できる。
 また、σc、σsを許容応力度としてdおよびAsを求め所要の断面を決定することができる。

[参考文献]八十島義之助ほか著「土木工学通論」改訂版,技報堂出版株式会社,1968

コンクリート診断士の問題例
2022.11.19
【出典】浅野慎一著「合格のためのコンクリート診断士試験講座'06」山海
堂,p287-288、【練習問題】(平成15年度問題48を改題)解説を、解読・補
足(私案)をしてみました。(注)ただし、参考にとどめてください。

(設計条件)
・鉄筋コンクリート単純はりの鋼板接着補強工
・諸元;図-2.1に示す。
(課題)
・補強後の活荷重による曲げモーメントが、M=3.45 E+08(N・o)である
とき、鋼板の引張り応力度を求めよ。
・ただし圧縮縁から中立軸までの距離は、補強後においてx=347oであると
する。


   図-2.1 鋼板接着補強工概要図


        図2.2 曲げ応力度分布図

次の各計算は、基本的にSI単位を用いる。

Step01.中立軸の確認(原本になく私案です)
・鉄筋について As1=506.7(o2)×4本=2026.8(o2
=2.0268E03(o2)=2.027E03×1.0E-06(m2)=2.027 E-03(m2
 鉄筋比p1=As1/bd=2.027 E-03(m2)/(0.35m×0.70m)
=2.027 E-03/0.245=8.273 E-03
・鋼板について As2=0.25(m)×6.0E-03(m)=1.5 E-03(m2
 鉄筋比p2=As1/bd=1.5 E-03(m2)/(0.35m×0.783m)
=1.5 E-03/0.274=5.474 E-03
・ここで、概略的に合成p=p1+p2、合成d=(d+h)/2と考える。(こ
こから私案)
・合成p=p1+p2=(8.27+5.47 )E-03=13.74 E-03 =0.0137
 よって、p-k-j表から、k=0.468,j=0.844
・合成d=(700+783)/2=742(o)
・圧縮縁から中立軸までの距離x=kd=0.468×742=347(mm)=0.347(m)

Step02. 力、応力およびモーメントの関係式
 コンクリートの圧縮応力の合力Cは三角形の重心に作用する。鉄筋および
鋼板の引張り応力の合力T1,T2はそれぞれの鋼材位置に作用する。鋼板補
強後も、コンクリートの圧縮応力の総和C=鉄筋及び鋼板の引張り力の総和
Tであるから、
 C=T1+T2   (式2.1)
また、コンクリートの圧縮応力と補強後の鋼材の引張り応力によるモーメン
トが、この断面に作用する曲げモーメントMとつり合いを保つので、
 M=Z1×T1+Z2×T2  (式2.2)
 図より、Z1=2x/3+(d−x)=d−x/3=700−347/3
=584.3(o)=0.584(m)
Z2=2x/3+(h−x)=h−x/3=783−347/3=667.3(o)=0.667(m)
よって、M=Z1×T1+Z2×T2=0.584×T1+0.667×T2  (式2.3)
弾性論から、T=As・σ=As・E・εであり、
 M=0.584×As1×σ1+0.667×As2×σ2  (式2.4)
ただし、σ1:鉄筋の引張り応力度、σ2:鋼板の引張り応力度

Step03. σ2を求めるため、σ1をσ2で表す。
一般に鉄筋と鋼板はヤング率が同じとみなされ、上の記事の(4)RCで鉄
筋(鋼材)と周辺のコンクリートのひずみは同じとすることから、
ε1:ε2=Eε1:Eε2=σ1:σ2
すなわち、σ2・ε1=σ1・ε2となり、σ1=σ2・ε1/ε2 (式2.5)
さらに、平面保持の法則から、
ε1/ε2=(d-x)/(h-x)
 =(0.700−0.347)/(0.783−0.347)= 0.353/0.436=0.810
これより、式2.5は次式となる。
 σ1=0.810σ2  (式2.6)
式2.4に式2.6を代入し、
 M=0.584×As1×σ1+0.667×As2×σ2
  =0.584×As1×0.810σ2+0.667×As2×σ2
よって、M=(0.473×As1+0.667×As2)×σ2  (式2.7)
ここで、先に求めたように、鋼材の面積を再掲する。
  As1=2.027 E-03(m2)、As2=1.5 E-03(m2
M=(0.473×2.027 E-03+0.667×1.5 E-03)×σ2=1.96 E-03×σ2
したがって、鋼板の引張り応力度σ2は、次式で求められる。
 σ2=M/(1.96 E-03)
設計条件のMをSI単位で表示すると、
 M=3.45E+8(N・o)= 3.45E+5(N・m)であるから、
σ2=M/(1.96 E-03)= 3.45E+5・E+3(N・m)/1.96
   =1.76E+8(N/m2)
すなわち、σ2=176(MN/m2)=176(N/o2)<400(N/o2)SS400σsa

以上

inserted by FC2 system