定数係数のn階線形微分方程式の基本系の求め方 |
---|
2025.5.5 |
引用元「解析学教程 改版」,第7章微分方程式,大学自然科学教育研究会(1972) (1)微分演算子による特性多項式と特性方程式 定数a0,a1,・・・,anを係数とするn階線形微分方程式 an y(n)+an-1 y(n-1)+an-2 y(n-2)+・・・+a0 y=q(x) ・・・式1 の解を求めるには,次の微分演算子を用いるほうが簡単である. Dy=(d/dx)y=dy/dx Dky=(dk/dxk)y=dky/dxk 一般にtの多項式は次のような式となる. P(t)=an t(n)+an-1 t(n-1)+an-2 t(n-2)+・・・+a0 ここでtに形式的にDを代入した P(D)=an D(n)+an-1 D(n-1)+an-2 D(n-2)+・・・+a0 によって P(D)y=an D(n)y+an-1 D(n-1)y+an-2 D(n-2)y+・・・+a0y を対応させる. よって、式1は,P(D)y=q(x)と表される. このとき,P(t)を特性多項式,P(t)=0を特性方程式という. [定理1] y,zをxの関数とするとき,次の式が成立する. [分配法則]P(D)(y+z)=P(D)y+P(D)z {P(D)+Q(D)}y=P(D)y+Q(D)y [交換・結合法則] {P(D)・Q(D)}y=P(D){Q(D)y}=Q(D){P(D)y} このようにDの多項式は加減乗法については普通の計算規則が適用できる. [定理2] P(D)(eλxy)=eλx P(D+λ)y [証明]D(eλxy)=eλxDy+λeλxy=eλx(D+λ)yより論証 (2)定数係数の同次線形微分方程式の解法 [定理3] P(D)y=0の一般解を求める. 特性方程式P(t)=0において P(t)=an(t−α1)m1(t−α2)m2・・・(t−αr)mr (m1+m2+m3+・・・+mr = n) ならば,P(D)y=0の一般解は次のようになる. y=P1eα1x+P2eα2x+・・・+Preαrx ただし,P kはxの(m k−1)次の多項式を表す.(k=1,2,・・・,r) [例1]y"'−2y"−5y'+6y=0を解け. [解](D3−2D2−5D+6)y=0 (D+2)(D−1)(D−3)y=0 特性方程式の解は,−2,1,3であるため 一般解は,y=C1e−2x+C2ex+C3e3x [例2]y"'−3y'+2y=0を解け. [解](D3−3D+2)y=0 (D+2)(D−1)2y=0 特性方程式の解は,−2,1,1(重根)であるため 一般解は,y=C1e−2x+C2ex+C3 xex [例3]y"'+6y'+20y=0を解け. [解](D3+6D+20)y=0 (D+2){(D−(1+3i)}{(D−(1−3i)}y=0 特性方程式の解は,−2,1±3i(虚根)であるため 一般解は,y=C1e−2x+C2ex・sin 3x+C3ex・cos 3x |
|
定数係数のn階線形微分方程式の一般解 |
---|
2025.5.5 |
(3)定数係数のn階線形微分方程式の一般解 [定義]逆演算子 P(D)はDの多項式であって0ではないとする.xの関数yに この演算子P(D)ほどこしたら,q(x)になったとする.すなわち, P(D)y=q(D) このとき,y=P(D)−1q(x)またはy={1/P(D)}q(x)と書き, P(D)−1または1/P(D)を,P(D)の逆演算子という. 特にD−1=1/D=∫dxである. [定理4]非同次線形微分方程式 P(D)y=q(x)の一般解は,その余関数をu,特殊解をP(D)−1q(x)とすると,次式で表される. y=u+P(D)−1q(x) [定理5]P(D),P(D+α)の逆演算子を,1/P(D),1/P(D+α)とすれば次の関係式が成立する. {1/P(D)}(eαx ・y) =eαx ・{1/P(D+α)} y [証明]定理2を用いる. [定理6]微分方程式 P(D)y=eαxの特殊解の1つは (@) P(α)≠0 ならば y=eαx/P(α) (A) P(α)=0 ならば y=(eαx・xr)/Q(α) r! ただし,P(D)=(D−α)r Q(D) (Q(α)≠0,r≧1) [例4]y"'−3y'+2y=8e3xを解け. [解] (D3−3D+2)y=8e3x (D+2)(D−1)2y=8e3x 特性方程式の解は,−2,1,1(重根)であるため 余関数は,C1e−2x+(C2+C3 x)ex 特殊解は,{1/(D3−3D+2)}8e3x ={1/(33−3・3+2)}8e3x=(8/20)e3x ゆえに一般解は,y=C1e−2x+(C2+C3 x)ex+(2/5)e3x [例5]y"'−3y'+2y=8exを解け. [解] (D3−3D+2)y=8ex (D+2)(D−1)2y=8ex 余関数は[例4]と同じで,C1e−2x+(C2+C3 x)ex 特殊解は,{1/(D+2)(D−1)2}8exにおいてα=1,r=2 から, {1/(1+2) 2!}8ex ・x2=(8/6)ex・x2 ゆえに一般解は, y=C1e−2x+{C2+C3 x+(4/3)・x2}ex (4)Eulerの線形微分方程式 次の形の式をEulerの線形微分方程式という. xny(n)+a1xn-1 y(n-1)+a2xn-2 y(n-2)+・・・+an-1xy1+any=q(x) ・・・(式1) これは定数係数の微分方程式ではないが,x=etと置き換えると,定数係数の線形微分方程式として解くことができる. x=etであるから,t=log x, dt/dx=1/xであり,d/dt=Dと書くと, dy/dx=dy/dt・dt/dx=(1/x) dy/dt=(1/x)Dy d2y/dx2=(1/x) d2y/dt2・dt/dx−(1/x2) dy/dt =(1/x2) d2y/dt2−(1/x2) dy/dt ∴d2y/dx2=(1/x2)(D2−D)y=(1/x2)・D(D−1)y したがって,一般に, dry/dxr=(1/xr)・D(D−1)・・・・・(D−r+1)y でるから,これらを式1に代入すれば (D(n)+A1D(n-1)+A2D(n-2)+・・・+An-1D+An)y=q(et) ・・・(式2) となり,定数係数線形微分方程式に帰着する. [例6]x2・d2y/dx2−4x・dy/dx+6y=x のEulerの線形微分方程式を解け. x=etと置き換えると,t=log x, dt/dx=1/xであり,d/dt=Dと書くと x2・(1/x2)・D(D−1)y−4x・(1/x)Dy +6y= et D(D−1)y−4Dy +6y=et {D(D−1)−4D +6}y=et (D2−5D +6)y=et (D−2)(D−3)y=et 余関数は,C1e2t+C2e3t 特殊解は, {1/(D−2)(D−3)}et={1/(1−2)(1−3)}et=(1/2)et ゆえに一般解は,y=C1e2t+C2e3t+(1/2)et 最期にx=etを戻して, ∴y=C1 x2+C2 x3+(x/2) 以上 |
|