定数係数の2階線形微分方程式の基本系の求め方 |
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引用元「解析学教程 改版」,第7章微分方程式,大学自然科学教育研究会(1972) (式3.1)n階線形微分方程式 y(n)+p1(x)y(n-1)+p2(x)y(n-2)+・・・+pn(x)y=q(x) において, p1, p2, ・・・,pn(x)がすべて定数のとき,これを定数係数のn階線形微分方程式という. この節ではn=2の場合を考え,解の基本系を求める方法を説明する. a, bを定数とし,次の定数係数の2階同次線形微分方程式 y"+ay'+by=0の解の基本系が求められれば、高階微分方程式(1)で記述の『解の基本系が既知の場合の特殊解の求め方』の方法を使い,基本系による余関数と特殊解を組み合わせて,y"+ay'+by=q(x)の一般解を求めることができる. ここで,t2+at+b=0を,微分方程式y"+ay'+by=0の特性方程式(あるいは補助方程式)という. この場合の解の基本系は以下のようにして求められる. (1)特性方程式 t2+at+b=0が相異なる2実根α,βをもつとき, eαx,eβxは解の基本系である. 実際,y=eαxとすると y"+ay'+by =α2eαx+a αeαx+beαx = (α2 + a α + b)eαx =0 y =eβxについても同様である. このとき,Wronskian≠0となり,二つの解は一次独立といえる. W (eαx,eβx)= 行列式(1行目:eαx ,eβx , 2行目:αeαx , βeβx)= (β−α)e(α+β) x ≠0 したがって,eαx,eβxは1次独立であり,解の基本系である. (2)特性方程式が重根αをもつとき,eαx,xeαxは解の基本系である. 実際,y=xeαxとすると,y'=eαx+α xeαx, y"=αeαx+αeαx+α2 xeαxとなるから y"+ay'+by=(2α+α2 x)eαx+a (1+αx)eαx+bxeαx= (α2 +aα+ b)xeαx + (2α+a)eαx=0 ここで,α2 +aα+b=0,両辺αで微分し2α+a=0のため, xeαxは解である. また,1)と同様にして,eαxもまた解である. このとき,Wronskian≠0となり,二つの解は一次独立といえる. W (eαx , xeαx) =行列式 [1行目:eαx , xeαx , 2行目:αeαx , (1+αx)eαx]=e2αx ≠0 したがって,eαx,xeαxは1次独立であり,解の基本系である. (3)特性方程式が虚根α ± βi (i≠0)をもつとき, eαxcosβx,eαxsinβx解の基本系である. 実際,y=eαxsinβxとすると y'=eαx(α sinβx+β cosβx), y"=eαx{(α2−β2) sin βx+2αβ cosβx)}となるから y"+ay'+by=eαx [{(α2−β2) sinβx+2αβ cosβx)} + a (α sin βx+β cosβx)+b sinβx] ここで,虚根α ± βiを特性方程式 t2 +at+b=0 に入れると (α2 −β2+2αβi )+a (α+βi)+b=0 (第1式) (α2 −β2−2αβi )+a (α−βi)+b=0 (第2式) 第1式から第2式を辺々引いて,4αβi+2aβi=0 よって 2α+a=0 ∴a =−2α 第1式と第2式を辺々加算し,(α2−β2)+aα+b = 0, (α2−β2)−2α2 +b=0 ∴b=α2 +β2 したがって y"+ay'+by =eαx [{(α2−β2) sin βx+2αβ cosβx)} −2α (α sin βx+β cosβx)+(α2+β2) sinβx]=0 すなわち,eαxsinβxは解である.eαxcosβxについても同様である. このとき,Wronskian≠0となり,二つの解は一次従属ではない. W (eαxcos βx,eαxsin βx)= 行列式 [1行目:eαxcosβx,eαxsinβx ,2行目: eαx(α cosβx−β sinβx),eαx(α sinβx+β cosβx)] =βe2αx ≠0 したがって,eαxcosβx,eαxsinβxは1次独立であり,解の基本系である. |
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定数係数の2階線形微分方程式の一般解 |
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【例1】y"+ y =sec x を解け (解)y"+ y =0の解の基本系は上記(3)からcos x , sin xである. y" + y=0の特性方程式は,t2+0 t+1=0 , t2+1=0 ∴t=0 ± 1i 特性方程式が虚根α ± βi (i≠0)をもつとき,eαxcosβx および eαxsinβxは,解の基本系であるから, α=0,β=1であり,y"+y=0の基本系はe0xcos x,e0xsin x, すなわち,cos x , sin xとなる. よって,特殊解を y=u1(x) cos x+u2(x) sin x・・・式1 とおくと次の連立方程式を得る. u1'(x) cos x+u2'(x) sin x =0 ・・・式2 −u1'(x) sin x +u2'(x) cos x =1/cos x ・・・式3 式1×cos x u1'(x) cos2x+u2'(x) sin x・cos x =0 ・・・式2' 式2×sin x −u1'(x) sin2x+u2'(x) cos x・sin x=sin x/cos x・・・式3' 式2'− 式3'から u1'(x)・(cos2 x +sin2 x)=−sin x/cos x ∴u1'(x) =−sin x/cos x =−tan x ・・・式4 式4を式2に代入し −(sin x/cos x)・cos x+ u2'(x) sin x = 0 −1 +u2'(x)=0 ∴u2'(x)=1 よって u2(x)=∫1dx=x・・式5 式4はt=cos xとおいて dt=−sin x dxのため u1(x)=−∫(sin x/cos x) dx =∫(1/t)dt=log |t| =log |cos x| したがって,特殊解の1つは式1から y = cos x・log |cos x|+x・sin x ・・・式6 以上から,求める一般解は次式の通り. ∴ y = C1・cos x+C2・sin x+cos x・log |cos x|+x・sin x 【例2】y"+2y'+2y=0の一般解を求めよ. (解)y"+2y'+2y=0の特性方程式t2+at+b=0は,t2+2t+2=0 2次方程式ax2+bx+c=0の解は,x=(1/2a)・{−b±√(b2−4ac)} であるから t= 1/(2×1) ・{−2±√(22−4×1×2)}= −1±i 特性方程式の解は虚根であり, α±βi = −1±i のとき,α=−1,β=1 よって,当該の微分方程式の解の基本系は, eαx・cosβx =e−x・sin x,eαx・sinβx =e−x・sin x この微分方程式は右辺=0の同次微分方程式だから,次の余関数が一般解となる. ∴ y = C1・e−x・cos x + C2・e−x・sin x 【例3】y"+3y'+2y=cos 2xの一般解を求めよ. (解)y"+3y'+2y=0の特性方程式(t2+at+b=0)は, t2+3t+2=(t+2)(t+1)=0 となる. したがって,特性方程式の解は t= −2,−1 である. よって,当該の微分方程式の解の基本系は,e−2x,e−x となり 余関数は,y= C1・e−2x +C2・e−xとなる. 次に特殊解を求める.特殊解は次式を想定する. y= u1(x)・e−2x +u2(x)・e−x ・・・式1 よって,特殊解を求めるための連立方程式は次の2つの式となる. u1' (x)・e−2x +u2' (x)・e−x =0・・・式2 −2u1' (x)・e−2x − u2' (x)・e−x = cos 2x・・・式3 この連立方程式を解いて u1' (x)= −e2x・cos 2x および u2' (x)=ex・cos 2x 各々積分形は u1(x)= ∫u1' (x) dx = −∫e2x・cos 2x dx u2(x)= ∫u2' (x) dx = ∫ex・cos 2x dx いずれも、部分積分法を2度繰り返し u1(x)= −∫e2x・cos 2x dx = −(e2x/4)・(cos 2x+sin 2x) u2(x)= ∫ex・cos 2x dx = (ex/5)・(cos 2x+2sin 2x) したがって,特殊解は次のようになる. y= u1(x)・e−2x + u2(x)・e−x =−(1/20)・(cos 2x−3sin 2x) よって,一般解は式1から次のようにまとめられる. ∴ y = C1・e−2x+C2・e−x − (1/20)・(cos 2x−3sin 2x) |
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