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高階微分方程式(2) 


定数係数の2階線形微分方程式の基本系の求め方
2025.5.2
引用元「解析学教程 改版」,第7章微分方程式,大学自然科学教育研究会(1972)

(式3.1)n階線形微分方程式 
 y(n)+p1(x)y(n-1)+p2(x)y(n-2)+・・・+pn(x)y=q(x) において,
 p1, p2, ・・・,pn(x)がすべて定数のとき,これを定数係数のn階線形微分方程式という.
 この節ではn=2の場合を考え,解の基本系を求める方法を説明する.
 a, bを定数とし,次の定数係数の2階同次線形微分方程式
 y"+ay'+by=0の解の基本系が求められれば、高階微分方程式(1)で記述の『解の基本系が既知の場合の特殊解の求め方』の方法を使い,基本系による余関数と特殊解を組み合わせて,y"+ay'+by=q(x)の一般解を求めることができる.
 ここで,t2+at+b=0を,微分方程式y"+ay'+by=0の特性方程式(あるいは補助方程式)という.
 この場合の解の基本系は以下のようにして求められる.

1)特性方程式 t2+at+b=0が相異なる2実根α,βをもつとき,
αx,eβxは解の基本系である.

実際,y=eαxとすると
y"+ay'+by =α2αx+a αeαx+beαx
  = (α2 + a α + b)eαx =0
y =eβxについても同様である.
このとき,Wronskian≠0となり,二つの解は一次独立といえる.
W (eαx,eβx)= 行列式(1行目:eαx ,eβx
2行目:αeαx , βeβx)= (β−α)e(α+β) x  ≠0
したがって,eαx,eβxは1次独立であり,解の基本系である.

(2)特性方程式が重根αをもつとき,eαx,xeαxは解の基本系である.
実際,y=xeαxとすると,y'=eαx+α xeαx
   y"=αeαx+αeαx+α2 xeαxとなるから
y"+ay'+by=(2α+α2 x)eαx+a (1+αx)eαx+bxeαx
2 +aα+ b)xeαx + (2α+a)eαx=0
ここで,α2 +aα+b=0,両辺αで微分し2α+a=0のため,
xeαxは解である.
また,1)と同様にして,eαxもまた解である.
このとき,Wronskian≠0となり,二つの解は一次独立といえる.
W (eαx , xeαx) =行列式 [1行目:eαx , xeαx
2行目:αeαx , (1+αx)eαx]=e2αx  ≠0
したがって,eαx,xeαxは1次独立であり,解の基本系である.

(3)特性方程式が虚根α ± βi  (i≠0)をもつとき,
 eαxcosβx,eαxsinβx解の基本系である.

実際,y=eαxsinβxとすると
y'=eαx(α sinβx+β cosβx),
y"=eαx{(α2−β2) sin βx+2αβ cosβx)}となるから
y"+ay'+by=eαx [{(α2−β2) sinβx+2αβ cosβx)}
       + a (α sin βx+β cosβx)+b sinβx]
ここで,虚根α ± βiを特性方程式 t2 +at+b=0 に入れると
2 −β2+2αβi )+a (α+βi)+b=0 (第1式)
2 −β2−2αβi )+a (α−βi)+b=0 (第2式)
第1式から第2式を辺々引いて,4αβi+2aβi=0
よって 2α+a=0   ∴a =−2α
第1式と第2式を辺々加算し,(α2−β2)+aα+b = 0,
2−β2)−2α2 +b=0  ∴b=α2 +β2
したがって
y"+ay'+by =eαx [{(α2−β2) sin βx+2αβ cosβx)}
−2α (α sin βx+β cosβx)+(α2+β2) sinβx]=0
すなわち,eαxsinβxは解である.eαxcosβxについても同様である.
このとき,Wronskian≠0となり,二つの解は一次従属ではない.
W (eαxcos βx,eαxsin βx)=
行列式 [1行目:eαxcosβx,eαxsinβx ,2行目:
αx(α cosβx−β sinβx),eαx(α sinβx+β cosβx)]
=βe2αx ≠0
したがって,eαxcosβx,eαxsinβxは1次独立であり,解の基本系である.

定数係数の2階線形微分方程式の一般解
2025.5.2
【例1】y"+ y =sec x を解け
(解)y"+ y =0の解の基本系は上記(3)からcos x , sin xである.
y" + y=0の特性方程式は,t2+0 t+1=0 , t2+1=0 ∴t=0 ± 1i
特性方程式が虚根α ± βi  (i≠0)をもつとき,eαxcosβx および
αxsinβxは,解の基本系であるから,
α=0,β=1であり,y"+y=0の基本系はe0xcos x,e0xsin x,
すなわち,cos x , sin xとなる.

よって,特殊解を y=u1(x) cos x+u2(x) sin x・・・式1
とおくと次の連立方程式を得る.
 u1'(x) cos x+u2'(x) sin x =0       ・・・式2
 −u1'(x) sin x +u2'(x) cos x =1/cos x ・・・式3
式1×cos x
 u1'(x) cos2x+u2'(x) sin x・cos x =0   ・・・式2'
式2×sin x
 −u1'(x) sin2x+u2'(x) cos x・sin x=sin x/cos x・・・式3'
式2'− 式3'から
 u1'(x)・(cos2 x +sin2 x)=−sin x/cos x
∴u1'(x) =−sin x/cos x =−tan x       ・・・式4
式4を式2に代入し
 −(sin x/cos x)・cos x+ u2'(x) sin x = 0
 −1 +u2'(x)=0 ∴u2'(x)=1 よって u2(x)=∫1dx=x・・式5
式4はt=cos xとおいて dt=−sin x dxのため
u1(x)=−∫(sin x/cos x) dx =∫(1/t)dt=log |t| =log |cos x|
したがって,特殊解の1つは式1から
y = cos x・log |cos x|+x・sin x ・・・式6
以上から,求める一般解は次式の通り.
∴ y = C1・cos x+C2・sin x+cos x・log |cos x|+x・sin x

【例2】y"+2y'+2y=0の一般解を求めよ.
(解)y"+2y'+2y=0の特性方程式t2+at+b=0は,t2+2t+2=0
 2次方程式ax2+bx+c=0の解は,x=(1/2a)・{−b±√(b2−4ac)} であるから
 t= 1/(2×1) ・{−2±√(22−4×1×2)}= −1±i
特性方程式の解は虚根であり,
 α±βi = −1±i のとき,α=−1,β=1
 よって,当該の微分方程式の解の基本系は,
 eαx・cosβx =e−x・sin x,eαx・sinβx =e−x・sin x
 この微分方程式は右辺=0の同次微分方程式だから,次の余関数が一般解となる.
∴ y = C1・e−x・cos x + C2・e−x・sin x

【例3】y"+3y'+2y=cos 2xの一般解を求めよ.
(解)y"+3y'+2y=0の特性方程式(t2+at+b=0)は,
   t2+3t+2=(t+2)(t+1)=0 となる.
 したがって,特性方程式の解は t= −2,−1 である.
 よって,当該の微分方程式の解の基本系は,e−2x,e−x となり
 余関数は,y= C1・e−2x +C2・e−xとなる.
 次に特殊解を求める.特殊解は次式を想定する.
 y= u1(x)・e−2x +u2(x)・e−x ・・・式1
 よって,特殊解を求めるための連立方程式は次の2つの式となる.
 u1' (x)・e−2x +u2' (x)・e−x =0・・・式2
 −2u1' (x)・e−2x − u2' (x)・e−x = cos 2x・・・式3
この連立方程式を解いて
 u1' (x)= −e2x・cos 2x および u2' (x)=ex・cos 2x
各々積分形は
 u1(x)= ∫u1' (x) dx = −∫e2x・cos 2x dx
 u2(x)= ∫u2' (x) dx = ∫ex・cos 2x dx
いずれも、部分積分法を2度繰り返し
 u1(x)= −∫e2x・cos 2x dx = −(e2x/4)・(cos 2x+sin 2x)
 u2(x)= ∫ex・cos 2x dx = (ex/5)・(cos 2x+2sin 2x)
したがって,特殊解は次のようになる.
y= u1(x)・e−2x + u2(x)・e−x =−(1/20)・(cos 2x−3sin 2x)
よって,一般解は式1から次のようにまとめられる.
∴ y = C1・e−2x+C2・e−x − (1/20)・(cos 2x−3sin 2x)


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