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Kirschの解の適合条件式 


厚肉剛性理論のひずみ応力適合条件式
2025.3.22
文献1;S.P.Timoshenko and J.N.Goodier「Theory of Elasticity」,
     McGraw-Hill,Inc. 3rd.Edit.(2010)

(1)直交座標系の適合条件式と応力関数
 平面ひずみ条件の適合条件式を検討する.
・外力(X,Y)がある場合
 (∂2/∂x2+∂2/∂y2)(σx+σy)
  =−{1/(1−ν)}(∂X/∂x+∂Y/∂y)・・(式2.1)
・外力が自重の場合や0の場合
 (∂2/∂x2+∂2/∂y2)(σx+σy)=0 ・・(式2.2)
・Airyの応力関数φは次式で与えられる.
 σx=∂2φ/∂y2,σy=∂2φ/∂x2
 τxy=−∂2φ/∂x∂y          ・・・(式2.3)

(2)厚肉剛性円筒の適合条件式と応力関数
 外力が自重の場合や0の場合の直交座標系の適合条件式を,極座標系の適合条件に変換すると次のようになる.
(∂2/∂r2+1/r・∂/∂r+1/r2・∂2/∂θ2)・
(∂2φ/∂r2+1/r・∂φ/∂r+1/r2・∂2φ/∂θ2)=0 
                     ・・・(式2.4)
 極座標系のAiryの応力関数φは次式が導かれている.
  σr=1/r・∂φ/∂r+1/r2・∂2φ/∂θ2
  σθ=∂2φ/∂r2              ・・・(式2.5)
  τrθ=1/r2・∂φ/∂θ−1/r・∂2φ/∂r∂θ
    =−∂/∂r(1/r・∂φ/∂θ)


 A hollow cylinder model [文献1,pp.70]

 厚肉剛性円筒問題では応力はrにのみ依存し,θには依存しない(円筒の周辺で中心からの距離Rが同じなら,応力は全周で等しい)ことから,適合条件は次式のように簡単になる.
(d2/dr2+1/r・d/dr)(d2φ/dr2+1/r・dφ/dr)=0 (式2.6)
ここで、次のような関数の積の微分に注意して展開する.
例えば,
 d/dr(1/r・dφ/dr)=−1/r2・dφ/dr+1/r・dφ2/dr2
したがって,
4φ/dr4+2/r・d3φ/dr3−1/r2・d2φ/dr2+1/r3・dφ/dr=0
・・・(式2.7)

(3)適合条件式の微分方程式の解法
 r=e^tとして,t=log r,dt/dr=1/r   ・・・(式2.8)
 ここで,d/dt=Dとする微分演算子を設定すると次式が導かれる.
 dφ/dr=dφ/dt・dt/dr=1/r・dφ/dt=1/r・Dφ
 d2φ/dr2=1/r2(d2φ/dt2−dφ/dt)=1/r2・D(D-1)φ
 d3φ/dr3=1/r3・D(D-1)(D-2)φ
 d4φ/dr4=1/r4・D(D-1)(D-2)(D-3)φ  ・・・(式2.9)

したがって,適合条件式の式2.7は
 1/r4・D{(D−1)(D−2)(D−3)φ+2(D−1)(D−2)φ
                     −(D−1)φ+φ)=0
 1/r4・D2(D2−4D+4)φ=0
 1/r4・D2(D−2)2φ=0      ・・・(式2.10)
と成るため,特性方程式の解は4個となる.
 D=0(重根),D=2(重根)      ・・・(式2.11)
よって,φの一般解は
 φ=C1・e0+C2・te0+C3・e2t+C4・te2t
  =C1+C2・t+C3・e2t+C4・te2t
ここで,r=e^t,t=log rと戻して
 φ=C1+C2・logr+C3・r2+C4・logr・r2 ・・・(式2.12)
φ=A・logr+Br2・logr+C・r2+D 
          ・・・(式2.13)[文献1,pp.69]

極座標の応力関数式から,σr,σθ,τrθは次のように求められる.
 σr=1/r・∂φ/∂r=A/r2+B(1+2logr)+2C
 σθ=∂2φ/∂r2=−A/r2+B(3+2logr)+2C
 τrθ=0       ・・・(式2.14)[文献1,pp.69]

定数A〜Dは境界条件を代入して決定する.
以上 文献1,pp.68-71.を元に追加説明を試みた.

Kirschの解のひずみ応力適合条件式
2025.3.22
(1)Kirschの解に導くひずみ応力適合条件
 Kirschの解のモデルで,円孔のない条件での応力関数は次の形となる.
    φ=f(r)cos2θ   ・・・(式3.1)


 G.Kirsch solution model [文献1,pp.90]

ここで,既に述べたように極座標系の適合条件式は次の通りであった.
(∂2/∂r2+1/r・∂/∂r+1/r2・∂2/∂θ2)・
(∂2φ/∂r2+1/r・∂φ/∂r+1/r2・∂2φ/∂θ2)=0 
                    ・・・(式3.2)
式3.1から
 ∂φ/∂θ=−2fsinθ,∂2φ/∂θ2=−4fcos2θ
   1/r2・∂2φ/∂θ2=−4f/r2・cos2θ ・・・(式3.3)
 ∂2φ/∂r2=∂2f/∂r2・cos2θ     ・・・(式3.4)
  1/r・∂φ/∂r=1/r・∂f/∂r・cos2θ ・・・(式3.5)
よって
 ∂2φ/∂r2+1/r・∂φ/∂r+1/r2・∂2φ/∂θ2
  =(∂2f/∂r2+1/r・∂f/∂r−4f/r2)cos2θ・・(式3.6)
したがって,f(r)を決定するための適合条件式は,(cos2θ)^2で除し,次のように考えられる.
d2/dr2+1/r・d/dr−4/r2)・
    (d2f/dr2+1/r・df/dr−4f/r2)=0
               ・・・(式3.7)[文献1,pp.90]
展開して
4f/dr4+2/r・d3f/dr3−9/r2・d2f/dr2
                 +9/r3・df/dr=0
                     ・・・(式3.8)
(2)Kirschの解の適合条件の解法
 ここでも厚肉剛性理論の解法と同様にrを指数関数に置き換える.
 r=e^tとして,t=log r,dt/dr=1/r   ・・・(式3.9)
ここで,d/dt=Dとする微分演算子を利用すると適合条件式(式3.8)は次のようになる.
1/r4・D{(D−1)(D−2)(D−3)+2(D−1)(D−2)−9(D−1)+9)f=0
1/r4・D(D3−4D2−4D+16)f=0
1/r4・D(D+2)(D−2)(D−4)f=0     ・・・(式3.10)
よって,この微分方程式の特性方程式の根は次の4個となる.
 D=0,−2,2,4  ・・・(式3.11)
したがって,fの一般解は
 f=Ae2t+Be4t+Ce(−2t)+De0t  ・・・(式3.12)
ここで e^t=rと戻して
 f(r)=Ar2+Br4+Cr(−2)+D
∴f(r)=Ar2+Br4+C/r2+D・・(式3.13)[文献1,pp.91]
したがって,φの一般解は次式のように表現される.
φ=(Ar2+Br4+C/r2+D)cos2θ
              ・・・(式3.14)[文献1,pp.91]
極座標の応力関数式から,σr,σθ,τrθは次のように求められる.
σr=1/r・∂φ/∂r+1/r2・∂2φ/∂θ2
  =−(2A+6C/r4+4D/r2)cos2θ
σθ=∂2φ/∂r2=(2A+12Br2+6C/r4)cos2θ
τrθ=−∂/∂r(1/r・∂φ/∂θ)
   =(2A+6Br2−6C/r4−2D/r2)sin2θ
             ・・・(式3.15)[文献1,pp.91]
A〜Dの係数は境界条件から決定する.

 以上 
  

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