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Eulerの公式利用 


オイラー(Euler)の公式
2024.9.8
引用元
・「解析学教程 改版」,第3章微分法,大学自然科学教育研究会(1972)
・原岡喜重(2013)「オイラーの公式がわかる」ブルーバックス,講談社,p200.
(1)Taylorの展開式
f(x)が高次導関数をもてば,平均値の定理を拡張したTaylorの定理を得る.
【Taylorの定理】[a, b]で定義された関数f(x)について,f(n−1)(x)が[a, b]で連続であり,かつ微分可能ならば,
 f (b)=f (a)+f'(a)(b−a)+ {f''(a)/2!} (b−a)2
     ・・・+ {f (n−1) (x)/(n−1)!} (b−a)n−1+Rn
 ただし,Rn={f(n)(ξx)/n!} (b−a)n,a<ξ<bとなるξが
 少なくとも1つは存在する.

【Taylor展開式】
Taylorの定理で b=x と置くと,
 f (x)=f (a)+f'(a)(x−a)+ {f''(a)/2!} (x−a)2+・・・
   + {f (n−1) (a)/(n-1)!} (x−a) n−1+Rn
ただし,Rn={f(n)(a+θ(x−a))/n!} (x−a) n,0<θ<1
ここで,ξ=a+θ(x−a)とおいて,θ=(ξ−a)/(x−a)としている.
この式を「x=aにおけるf(x)のTaylor展開式」という.

【Maclaurin展開式】
さらにx=a=0におけるf (x)のTaylor展開式をMaclaurin展開式という.
 f (x)=f (0)+{f'(0)/1!}(x)+ {f''(0)/2!} (x)2+・・・
    +{f (n−1) (0)/(n−1)!} (x) n−1+Rn
ただし,Rn={f(n)(θx)/n!} (x) n,0<θ<1

(2)指数関数と三角関数のMaclaurin展開式
【指数関数の展開式】
 指数関数の定義,e0=1,x<0のときex=1/e−x,
 指数定理ex+y=ex・ey,(ex)y=exy
 また,(ex)'=ex であることから
 ex=e0+( e0/1!) x+( e0/2!) x2+( e0/3!) x3
   +( e0/4!) x4+( e0/5!) x5+・・・
∴ex =1+ x/1!+ x2/2!+x3/3!+x4/4!+x5/5!
    ・・・+xn−1/(n−1)!

【sin xの展開式】
sin xを連続的に微分すると,
sin x → cos x→ −sin x → −cos x → sin xと繰り返し,
かつx=0では,0→ 1→ 0 → −1 → 0を繰り返すため,
 sin x=sin x+(cos x/1!)x+(−sinx/2!)x2+(−cosx/3!)x3
   +(sin x/4!)x4+(cos x/5!)x5+・・・
  =sin 0+(cos 0/1!)x+(−sin0/2!)x2+(−cos0/3!)x3
   +(sin 0/4!)x4+(cos 0/5!)x5+・・・
 =0+(1/1!)x+(−0/2!)x2+(−1/3!)x3+( 0/4!)x4+(1/5!)x5
  +・・・
∴sin x=x−x3/3!+x5/5!−x7/7!+・・+(−1)n−1・x2n−1/(2n−1)!

【cos xの展開式】
cos xを連続的に微分すると,
cos x→ -sin x → - cos x → sin x → cos xと繰り返し,
かつx=0では,1→0 → −1 → 0 → 1を繰り返すため,
 cos x=cos x+(−sin x/1!)x+(-cosx/2!)x2+(sinx/3!)x3
   +(cos x/4!)x4+(−sin x/5!)x5+・・・
  =cos 0+(−sin 0/1!)x+(-cos0/2!)x2+(sin0/3!)x3
   +(cos 0/4!)x4+(−sin0x/5!)x5+・・・
  =1+(0/1!)x+(−1/2!)x2+(0/3!)x3+( 1/4!)x4+(0/5!)x5
   +・・・
∴cos x=1−x2/2!+x4/4!−x6/6!+・・+(−1)n・x2n/(2n)!

(3)オイラーの公式
 指数関数exのMaclaurin展開式でxを大胆に虚数に置換える.
すなわちx=ixとするとi2=−1であるから
 eix =1+( 1/1!)(ix)+( 1/2!)(i x)2+( 1/3!)( ix)3
    +( 1/4!)(i x)4+( 1/5!)( ix)5・・・
   =1+( 1/1!)ix−( 1/2!)x2 −( 1/3!) ix3
    +( 1/4!)x4+( 1/5!) ix5・・・
   ={1−x2/2!+ x4/4!−x6/6!+x8/8!・・}
    +i {x/1!− x3/3!+x5/5!−x7/7!+x9/9!・・}

 ∴eix=cos x+i・sin x (Eulerの公式)


Eulerの公式を用いた微分方程式の解法例
2024.9.12
【参考図書】原岡喜重(2013)「オイラーの公式がわかる」ブルーバックス,講談社,p200.

(1)Eulerの公式を用いた微分方程式の解法
 次の一般化した微分方程式の解き方を考える.
   y"+ay'+by=0・・・式-1  (a,bは実数で定数)
 ここで,解の形を次式と仮定する.
   y(t)=ect・・・式-2  (cは定数)
 上式を微分すると
   y'(t)=c・ect,y"(t)=c2・ect ・・・式-3
 式−2,3を式−1に代入し
   c2・ect+ac・ect+b・ect =0
   (c2+ac+b)・ect =0
 ここで,ect≠0のため、
   c2+ac+b=0・・・式-4
 これは,cを未知数とする2次方程式といえるため,c=xとして方程式的表記にする.
    x2+ax+b=0・・・式-4.1
 この2次方程式の2つの解は複素数の場合に次式の形とする.
    x=p±iq  (p,qは実数)
 これを式−2のcに入れると
  φ(t)=e(p+iq)t , ψ(t)=e(p−iq)t・・・式-5
加法定理とオイラーの公式を使って
 φ(t)=ept ・e+iqt =ept ・(cos qt+i・sin qt)・・・式-6.a
 ψ(t)=ept ・e−iqt =ept ・(cos qt−i・sin qt)・・・式-6.b
 重ね合わせの原理から実数値の次の2つの解が得られる.
  1/2φ(t)+1/2ψ(t) = ept ・cos qt・・・式-7.a
  (1/2i)φ(t)−(1/2i)ψ(t)) = ept ・sin qt・・・式-7.b
 したがって一般解は,
  y(t)=Aept ・cos qt+Bept ・sin qt・・・式-8
∴ y(t)=ept ・(Acos qt+Bsin qt)・・・式-8.1

(2)解法例その1;対応する2次方程式の解が実数の場合
 微分方程式 y"−5y'+6y=0 を解く.
 解の形を次式と仮定する.
   y(t)=ext
 微分方程式に対応する2次方程式は
 x2−5x+6=0, (x−2)(x−3)=0, ∴ x=2, x=3
 したがって,y(t)=e2t, e3t
  よって、一般解はA,Bを任意定数として
   y(t)=Ae2t + Be3t

(3)解法例その2;対応する2次方程式の解が複素数の場合
 微分方程式 y"−5y'+8y=0 を解く.
 解の形を次式と仮定する.
   y(t)=ext
 微分方程式に対応する2次方程式は
   x2−5x+8=0
 ここで,2次方程式 ax2+bx+c=0 の解は次式で与えられる.
  x={−b±√(b2−4ac)}/2a
 したがって,
  x={ 5±√(25−32)}/2=(5±√7i)/2
 これより微分方程式の解が次のようになる.
  φ(t)=e {(5+√7i)/2}t=e (5/2)t・e (√7i/2)t
    =e (5/2)t・{ cos (√7/2)t+i・sin(√7/2)t}
  ψ(t)=e {(5−√7i)/2}t=e (5/2)t・e (−√7i/2)t
    =e (5/2)t・{ cos (−√7/2)t+i・sin(−√7/2)t}
    =e (5/2)t・{ cos (√7/2)t−i・sin(√7/2)t}
 この二つの解を組み合わせることで
 φ(t)/2+ψ(t)/2=e(5/2)t・{cos (√7/2)t}
 φ(t)/2i−ψ(t)/2i=e(5/2)t・{sin (√7/2)t}
 という実数値の解が得られる.
よって、一般解はA,Bを任意定数として次のように表される.
 y(t)=Ae(5/2)t・{cos (√7/2)t} +Be(5/2)t・{sin (√7/2)t}

 以上   

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