微分法の基礎的事項 |
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2024.8.27 |
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応力関数の微分方程式を解く,あるいは弾塑性理論解などの理解を助けるため,微積分法の諸定理や基礎的解法例を整理,抜粋し,また微分方程式の概念と変数分離形の常微分方程式について解説します. (引用元)大学自然科学教育研究会 改版 解析学教程(1972) (1)導関数あるいは微分係数 【定義】解析学による導関数(微分係数)の定義;y = f(x)を開区間で定義された関数とする. x∈(a,b)を固定して limh→0 [f(x+h)−f(x)]/hが存在するならば、f(x)はxにおいて微分可能であるという. この極限値をxにおけるf(x)の微分係数と名付け, dy/dx, , y', y(上に・), f'(x), Df(x)で表す. 物理学的には、dy/dxは,無限小変化dxとそれ対応する無限小変化dyの比とみてよい.したがって,x−y座標系におけるdy/dxは関数y=f(x)の曲線の勾配を意味する.定義から、Cを定数とするとCf(x)の導関数はCf'(x), f(x)+Cの導関数はf'(x)に等しい. (定理1)xの関数u=f(x), v=g(x)の和・差・積・商の導関数 1)(ku)'=ku' ここでkは定数 2)(u+v)'=u'+v' 3)(uv)'=u'v+uv' 4)(u/v)'=(u'v−uv')/v2 (定理2)合成関数の微分法 y = f(x), x=φ(t)のとき,合成関数y=F(t)=f(φ(t))の導関数は, F'=f'(x)・φ'(t) あるいは dy/dt=dy/dx・dx/dt 例 x=A sin (ωt+α) をtで微分せよ. φ=ωt+αと置くと,x=A sin (φ)の合成関数とみなせるから, dx/dt=dx/dφ・dφ/dt=Acos(φ)・ω=Aωcos(ωt+α) (定理3)逆関数の微分法 y=f'(x)≠0のとき逆関数x=φ(y)が微分可能で φ'(y)=1/f'(x) すなわち dx/dy=1/(dy/dx) (定理4)媒介変数の微分法 x=f(t), y=g(t)が微分可能なとき,x=f(t)の逆関数はt=f-1(x)となり, y=g(t)=g(f-1(x))でyをxの関数と考えることが出来き,微分可能となる. dy/dx=g'(t)/f'(t) すなわち dy/dx=dy/dt・dt/dx= (dy/dt)/(dx/dt) 表-1 べき乗関数,指数関数,対数関数,三角関数の微分係数の例
(※)cosecA=1/sinA, secA=1/cosA, cotA=1/tanA 一部、確かめると次の通り. 3. dy/dx= d ex/dx= limh→0[(ex+h−ex)/h] = ex・limh→0[(eh−1)/h]=ex 4. y=axとして対数微分法を利用して両辺対数を取るとlog y=xlog aとなり,両辺をxで微分すると(1/y)・y'=log aとなるのでy'=y log a よってy'=ax log a 5. y= log x とするとx=eyであり逆関数の微分法から dy/dx = 1/(dx/dy) = 1/ey = 1/x 6. y= sin-1x ただし −1≦x≦1,−π/2≦x≦π/2とする. x= sin y だから dx/dy=cos y=√(1−sin2 y)=√(1−x2 ) 逆関数の微分法を適用して dy/dx = 1/(dx/dy) =1/√(1−x2 ) (2)偏導関数 1)2変数関数z=f(x,y)のとき,zのxまたはyによる偏微分係数は, ∂z/∂x=limh→0 [f(x+凅,y)−f(x,y)]/凅 ∂z/∂y=limh→0 [f(x,y+凉)−f(x,y)]/凅 例えば、z = f (x2+y2)のとき ∂z/∂x=f '(x2+y2)・∂(x2+y2)/∂x=f '(x2+y2)・2x ∂z/∂y=f '(x2+y2)・∂(x2+y2)/∂y=f '(x2+y2)・2y したがって,y(∂z/∂x)=x(∂z/∂y);一種の偏微分方程式 2)2変数関数z=f(x,y)の全微分は dz=(∂f/∂x)dx+(∂f/∂y)dy で表す.ここで全微分の幾何学的意味を考える. z=f(x,y)は一般に3次元空間の局面を表す.この全微分はx,y,zの一次式であり,曲面z=f(x,y)のある点P(a,b)の接平面を表すことが出来る. 3)x=x(t),y=y(t)とすると,合成関数z = f(x(t),y(t))がtで微分可能の場合, dz/dt=(∂z/∂x)・dx/dt+(∂z/∂y)・dy/dt |
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積分法と微分方程式の概要 |
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2024.9.1 |
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(3)積分法 【定義】関数f(x)が関数F(x)の導関数となっているとき,すなわち F'(x) = f(x) となっているとき,F(x)をf(x)の原始関数または不定積分といい, F(x) = ∫ f(x) dx で表す。このようにF(x)を求めることを,f(x)を積分するという. 次に,G'(x)=f(x)となる他の関数をG(x)とすれば G(x)−F(x)=C (ここでCは定数) でるから G(x)=F(x)+C=∫f(x) dx +C したがって原始関数は定数を除けば一意に定まるから,この定数を省略して書かない場合がある.この定数を積分定数という. 定義からα,βを定数とするとき ∫(αf(x)+βg(x)) dx = α∫f(x) dx + β∫f(x) dx 表-2 応用上重要な原始関数 F(x)=∫f(x)dx
記号 [ ]絶対値,cosecA=1/sinA, secA=1/cosA, cotA=1/tanA 1)置換積分法の公式 f(x)の原始関数をF(x)とし,F'(x) = f(x) あるいは F(x)=∫f(x) dx さらにxをtで置換しx=φ(t)とすると,F(x)=F(φ(t))と書け,これをtで微分すると合成関数の微分法から dF/dt=dF/dx・dx/dt = f(x)・φ'(t) ゆえに F(x)=∫f(x) dx= ∫f(φ(t))φ'(t) dt (例)∫R(sin x,cos x)dxの積分法 一般にはt=tan(x/2)とおくと,sin x=2t/(1+t2), cos x=(1-t2)/(1+t2) 逆関数はx=2tan-1tのため,dx= {2/(1+t2)}dt このように,tに関する有理数の積分に帰着する. ここで ∫(sin x/(1+sin x)) dx を求めると, ∫(sin x/(1+sin x)) dx=∫{ 2 t/(1+t2)/(1+2 t/(1+t2) }dx =∫{ 2 t/(1+t2)/(1+t)2/(1+t2) }dx =∫{ 2 t/(1+t)2 }dx =4∫{ t/(1+t)2 }{1/(1+t2)}dt =2∫{1/(1+t2)}-1/(1+t)2}dt =2{tan-1t+1/(1+t)}=2(x/2)+ 2/(1+ tan(x/2)) ∴∫(sin x/(1+sin x)) dx= x + 2/(1+ tan(x/2)) ちなみに、∫{1/(1+t)2}dtは、s=1+tとおくと、dt/ds=d(s-1)/ds=1となり ∫{1/(1+t)2}dt=∫(1/s2)ds = -1/s=-1/(1+t)+C 2)部分積分法の公式 関数の積の微分は (f(x)g(x))'= f'(x)g(x)+f(x)g'(x) であるから f(x)g(x)=∫f'(x)g(x)dx +∫f(x) g'(x) dx よって ∫f'(x)g(x)dx=f(x)g(x)−∫f(x)g'(x)dx 例 ∫eax cos bx dx (a≠0) を部分積分法で求める. ∫eax cos bx dx = (1/a)eax cos bx + ∫(b/a)eax sin bx dx ここで、右辺第二項にさらに部分積分法を適用して ∫(b/a)eax sin bx dx = (b/a2)eax sin bx−∫(b2/a2)eax cos bx dx となるから, ∫eax cos bx dx = (1/a)eax cos bx+(b/a2)eax sin bx −∫(b2/a2)eax cos bx dx よって、 (1+b2/a2)∫eax cos bx dx = (eax/a2)(a cos bx+b sin bx) ∴ ∫eax cos bx dx = { eax/(a2+b2)}(a cos bx+b sin bx) 3)定積分 閉区間で連続な関数f(x)の原始関数をF(x)とすると,その区間の任意の点a, b に対して ∫baf(x)dx=F(a)- F(b)=[F(x)] ba 定積分にも置換積分法と部分積分法は適用される. (4)微分方程式とは 1)常微分方程式の例 (式1) y'=2x または dy/dx=2x (式2) (1−x2)y"−xy'=0 または (1−x2) d2y/dx2−x dx/dy=0 独立変数xとそれの未知関数y,および未知関数の逐次導関数y', y", ・・を含む方程式を常微分方程式という. また,未知の導関数の最高次数を階数という. 微分方程式を満足する関数を微分方程式の解といい,微分方程式の解を求めることを微分方程式を解くという. 式1は,1階常微分方程式で,y=∫2xdx ∴y=x2+C が解である. 式2は,2階常微分方程式で,y=C1 sin-1x+C2 が解である. 確認すると y'=C1/√(1-x2), ここでt=1-x2として, dt/dx=-2x d2y/dx2=C1・d(t-1/2)/dt・dt/dx =C1・(-1/2)(t-3/2)・(-2x)=C1(t-3/2)x =C1・{x/(1-x2)√(1-x2)} よって,(1−x2) d2y/dx2−x dx/dy =C1・x/√(1-x2)−C1・x/√(1-x2)=0 2)偏微分方程式 (式3) ∂2w/∂x2 = c2 ∂2w/∂y2 (式4) w(x+2y)∂w/∂x−w(y+2x)∂w/∂y=y2−x2 2個以上の独立変数x,y,・・とそれらの未知関数wおよびその逐次偏導関数を含む方程式を偏微分方程式とよぶ. 式3は,2階偏微分方程式で,w=φ(y+cx)+ψ(y-cx) は解である. 確認すると ∂w/∂x=cφ'(y+cx)−cψ'(y-cx) ∂2w/∂x2=c2φ"(y+cx)+c2ψ"(y-cx) ∂w/∂y=φ'(y+cx)+ψ'(y-cx) ∂2w/∂y2=φ"(y+cx)+ψ"(y-cx) ∴∂2w/∂x2 =c2 ∂2w/∂y2 式4は,1階偏微分方程式で,解は x2+y2+w2=φ(x2+y2+(x+y)2) すなわち w2=φ(x2+y2+(x+y)2)−(x2+y2 )・・・未確認 3) 1階常微分方程式 1階微分方程式(ここでは,偏微分方程式には触れず,1階微分方程式と略す)の一般形は,F (x, y, y')= 0 あるいはこれをy'について解いた形の y'= f(x, y)である.後者の形を正規形という. 幾何学的にみれば,1階微分方程式は,x−y平面上のある曲線状の座標と,その点における接線の傾きとの関係を表している.一般に微分方程式の解に対応する曲線を,その微分方程式の積分曲線という. 微分方程式y' = f (x)よりその解を求めることは,f (x) の不定積分を求めることであるから, y =∫f (x) dx + C で与えられる.このように任意定数を含む解を微分方程式の「一般解」という. 1階微分方程式の一般解は,1つの任意定数を含む.任意定数Cに特定な値を与えたとき,この解を「特殊解」という.y=x2+Cは微分方程式y'=2xの一般解であり,(境界条件などの制約により決定する)y= x2+1, y= x2+5などは特殊解である. また,クレローClairautやラグランジェLagrangeの微分方程式のように,正規形でない1階微分方程式 F (x, y, y') = 0 の中には,その一般解には含まれない別の解をもつことがある.このような解を「特異解」という. 4)変数分離形の微分方程式 微分方程式が,y'= f(x) g(y)の形で表されるとき,これを「変数分離形」の微分方程式とよぶ. 両辺をg(y)でわり,{1/g(y)}・dy/dx=f (x) 両辺をxで積分すれば,∫{1/g(y)}・dy/dx・dx=∫f (x)dx+C すなわち,変数分離形の一般解は次式の通り. ∫{1/g(y)}・dy =∫f (x)dx + C (例)(x+y)dx+dy=0を解け. 変数分離形にするためy=v−xとおくと, dy=dv−dx. 上式に代入してvdx+dv−dx =0 より (v−1)dx+dv=0 すなわち (1/(v−1))dv = −dx 両辺を積分し ∫(1/(v−1))dv =∫−dx → log [v−1]=−x±C したがって v−1=e(−x±C)=e(−x)・e±C ∴ (x+y−1) ex =C' ただしC'=e±C |
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