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解析モデルと設計条件 


トンネルの解析モデルと設計条件
2022.7.3
(1)解析モデルとメッシュ
 2次元解析の場合、モデルの全体域の形状は次の3種類がある。
1)坑口部や低土被り部の地形を入れた断面モデル;設計横断図に準ずる
2)半断面矩形モデル;トンネルセンターラインの縦方向で切った半断面。地形を考慮しない土被りの大きなトンネル部を対象とし、解析計算の省力化を図ったモデル。センターラインはX方向を拘束し、Y方向をフリーとするモデル。
3)矩形モデル;上記と同様であるがトンネル全断面をモデル化し、路面や軌道の傾斜、歩道・監査路を含めた実設計のトンネル内空を表現したモデル。土被りがさらに深い場合は、解析域上面に土被り圧を再現する分布荷重を追加設定する(第1ステップの自重解析時のみ)


   解析モデル領域(簡略化した設計図CADを利用)


     境界条件(拘束条件)の設定

[参照]NATMにおける数値解析;伊藤淳,村西佳美・兜x士総合研究所科学技術第2部主任研究員,安藤知明・同上副部長,ジェオフロンテ研究会「山岳トンネルの新技術」土木工学社1991,p49-62)

・トンネルのモデルは、大枠のブロックメッシュモデル(地層・物性ブロック)すなわち、トンネル及び地山全体モデル域を決定した後、鋼アーチ支保工、ロックボルト、吹付コンクリートの一次支保、及びAGF等の補助工法、覆工、本インバート、仮インバートを考慮した『キーポイントと線分で区分されたモデル』を作成する。次いで全ブロックを解析区域として認識させ、その後、試行的に四辺形及び三角形要素から成る細かなメッシュを発生させる。この時、各ブロックの各辺の分割数を調整し、トンネル及び周辺は詳細に、外側は疎にし、荷重の流れやトンネル周辺のゆるみ域を表現しやすいメッシュモデルに決定する。


 物性構造を見通したブロックの作成


  ブロックの分割を行いメッシュを発生
  (空洞を有する既設トンネルの例)
 
(2)設計条件
 設計条件には次のものがあり、事前に図表で整理し、解析ソフトのプレソフトで設定、入力を行う。
1)力学モデル;線形弾性,非線形弾性,弾塑性解析モデル。粘弾性(クリープ解析),地山物性劣化解析,地震・慣性力解析や熱解析の設定が可能なアプリ(プログラム)もある。
2)構造解析の基本設定;平面ひずみ、平面応力,軸対称解析
3)地層断面図と平面要素(四辺形及び三角形)物性値の整理(単位体積重量,初期弾性係数,ポアソン比、せん断定数,引張り強度=一軸圧縮強度/脆性度)


 各層の物性値入力(蛇紋岩トンネル再現解析の例)

 地山の物性値として弾性係数(ひずみによって変化するモデルでは変形係数という)がFEMでは特に重要であり、地質調査による原位置試験値、あるいはボーリングコア等のコア試験値の1/10などが採用される。試験値の無い調査以前の検討では、ダム岩盤分類やトンネル地山区分から機関の提唱する標準値(DUでE=150MPa,DTでE=500MPaなど)が用いられる。

4)支保工物性(はり;弾性係数,断面二次モーメント,有効断面積,棒要素;弾性係数,半径等,吹付コンクリートや覆工コンクリートの平面要素物性)
   表-1 地山および支保工のモデル化(二次元FEM)
対象部材
要素モデル
地山 平面要素 Quad:四辺形要素,三角形要素(出力;節点変位,要素内主応力,鉛直・水平応力,せん断応力,最大せん断ひずみ,破壊近接度,安全率,破壊域)
不連続面 ジョイント要素Joint(断層,すべり面)
吹付コンクリート 平面要素 Quad,棒要素 Rod(出力;軸力),合成はり要素
鋼製支保工 はり要素 Beam(出力;軸力,曲げモーメント,せん断力),合成はり要素
ロックボルト 棒要素 Rod(出力;軸力),特殊結合要素(地山とのすべり)
覆工およびインバート
コンクリート
平面要素 Quad,はり要素 Beam(出力;軸力,曲げモーメント,せん断力)

5)補助工法物性値と補助工法の挿入ブロック確保(モデル化で行う)。AGFなどのアンブレラ工法は地山と鋼材の合成物性(等価物性)を計算しておく。
6)施工ステップと各ステップの工種組み合わせ
 S1;自重解析,S2:上半掘削,S3:上半支保,S4:下半掘削,S5:下半支保,S6:インバート掘削,S7:インバート打設,S8:覆工コンクリート打設など


 

  施工ステップ(蛇紋岩トンネル再現解析)の例

7)側圧係数 K0 =水平地圧Ph/鉛直地圧Pv
 トンネルの天端と側壁の変形傾向(変形モード)に係わる重要な定数。土被り小さな土質系のトンネル部では、ポアソン比νから弾性力学[K0=ν/(1-ν)]で計算し、土被りが深い場合は既往文献の経験則から定める(例えば土被り75m以上ではK0=1.0とする考え方)などが行われている。(土被りと側圧係数の関係式は、鉄道総研と道路トンネルを扱う土研やNEXCOでは多少異なる)
 FEMでは一般に解析の第1ステップで自重解析によりモデルの地圧場を求めるため、側圧係数はこの第1ステップで使われる。
8)掘削(土圧)解放率
 一般的に上半掘削時に40%、上半支保時に60%などと設定する。AGF等の長尺先受け工によって事前に前方の地山の補強を行う場合は、実際の計測結果を参考に、解放率は上半掘削時25%、上半支保時75%などとする調整を行う。
9)粘弾性解析(クリープ解析)をする場合の、経過日数やクリープ係数
10)外力のある場合の荷重設定(等分布荷重や集中荷重)
11)強制変位がある場合の変位設定

【参考文献】
(1)山岳工法トンネル技術全般
1)道路トンネル技術基準(構造編)・同解説,(社)日本道路協会,2003.11
2)道路トンネル観察・計測指針,(社)日本道路協会,2009.2
3)設計要領第三集トンネル編トンネル本体工保全編(近接対策),日本高速道路株式会社2006,5.p24
4)地盤工学・実務シリーズ24,山岳トンネル工法の調査・設計から施工まで,(社)地盤工学会,2007.7
5)大成建設(株)土木本部土木設計部(2010)「トンネルの設計」考え方がよくわかる設計実務 7
6)道路橋示方書(共通編,下部構造編),(社)日本道路協会

(2)山岳工法トンネルの数値解析
7)桜井俊輔,NATMにおける現場計測と管理基準値,土と基礎,34-2(337),pp5-10,地盤工学会.1986.2
8)トンネルにおける調査計測の評価と利用,(社)土木学会,1987.9
9)山岳トンネルの新技術 4-7.NATMにおける数値解析(伊藤・村西・安藤),ジェオフロンテ研究会編纂,土木工学社,1991.11
10)土木研究所資料第3232号,トンネル掘削時地盤変状の予測対策マニュアル(案),建設省土木研究所トンネル研究室,1994.2
11)試験研究所技術資料第358号,トンネル数値解析マニュアル,JH試験研究所道路研究部トンネル研究室,1998.10(H10)
12)試験研究所技術資料第359号,トンネル数値解析マニュアル(都市トンネル解析留意事項編),JH試験研究所道路研究部トンネル研究室,2002.3(H14)
13)二次元地盤解析FEM(2Dシグマ)ソフト及び同マニュアル,地層科学研究所
 

トンネル解析で用いる単位系
2019.2.7
 トンネル解析で用いる単位系を、SI単位系と従来単位系を関連させて置きます。これは、過去の優れたFEM関連の書籍や論文(専門誌「トンネルと地下」掲載論文や計測・施工報告)を有効に活用するためです。

    表-2 山岳トンネル設計で良く使う物性値
物性名
SI単位系
旧単位系
活荷重
盛土・擁壁
10kN/m2
1.0tf/m2
1,000kgf/m2
群集荷重
5kN/m2
0.5tf/m2
500kgf/m2
土と岩の境界
一軸圧縮強度
1.0E+3kN/m2
1.0MPa
10kgf/cm2
変形性軟岩の
一軸圧縮強度
上限値
2.0E+4kN/m2
20MPa
200kgf/cm2
吹付コンクリ
ート圧縮強度
標準値
1.8E+4kN/m2
18N/mm2

(18MPa)
180kgf/cm2
変形性軟岩の
変形係数上限
5.0E+5kN/m2
500MPa
5,000kgf/cm2
不安定土塊の単位堆積重量
18kN/m3
1.8tf/m3
良い支持層
地耐力
300kN/m2
30tf/m2

【SI単位変換】 トンネルのFEM解析で用いる旧来系との関係式

1)荷重:1.0kgf≒1.0kg×10.0m/s2=10N
 1.0 gf=0.001kg×9.80665m/s2≒0.01 N
 1.0 kg=1.0kg×9.80665m/s2≒10.0 N
 1.0 tf=1,000kg×9.80665m/s2≒10,000N=10.0 kN

2)応力および弾性係数:1.0kgf/cm2=10.0tf/m2=100kN/m2
 10kN/m2=1.0tf/m2=0.1kgf/cm2
 100kN/m2=10.0tf/m2=1.0kgf/cm
 1,000kN/m2=1.0M Pa=100tf/m2=10.0kgf/cm2
 10,000kN/m2=10 M Pa=1,000tf/m2=100kgf/cm2
 100,000kN/m2=100 M Pa=10,000tf/m2=1,000kgf/cm2

 ※1.0tf/m2=1,000kgf/m2=1,000/(100×100)kgf/cm2=0.1 kgf/cm2
 ※1.0tf/m2=1,000kg×(9.8m/s2)/m2≒1,000kg×10m/s2/m2
   =10,000N/m2=10kN/m2
 ※コンクリート(fck=24N/mm2=24×1,000×1,000N/m2=24M Pa
    =240kgf/cm2):
 Econ=2.5×10+4N/mm2=2.5×E+04M Pa=2.5×E+05 kgf/cm2
     =2.5×E+06 tf/m2
 ※鋼材:Estl=2.0×10+5N/mm2=2.0×E+05MN/m2=2.0E+08kN/m2
   =2.0×E+06 kgf/cm2=2.0×E+07 tf/m2

3)密度、質量:1.0gf/cm3=1.0tf/m3=10kN/m3
 ※1.0tf/m3=1,000kg×(9.8m/s2)/m3≒1,000kg×(10m/s2)/m3
  =10,000N/m3=10kN/m3
 ※地すべり土塊など;1.8tf/m3=18kN/m3
 ※無筋コンクリート;2.30 tf/m3=23.0 kN/m3
 ※鉄筋コンクリート;2.45 tf/m3=24.5 kN/m3
 ※岩石供試体密度;2.354g/cm3=2,354kg/m3
  =2354kg×(9.8m/s2)/m3=23,069N/m3=23.07kN/m3

以上


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