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カンラン岩と蛇紋岩


カンラン岩と蛇紋岩 産状と岩石学

 カンラン岩 peridtite は主にカンラン石 olivine(※)から構成される深成岩であり、マントル起源とされる。造山帯に産出し、蛇紋岩に加水・変成していることが少なくない。
(※)[化学式は(Mg,Fe2+2SiO4
 蛇紋岩化したカンラン岩の野外での産出状況は、変成帯によって異なり、例えば、南部北上帯に位置する早池峰構造帯・宮守岩体では塊状岩を呈する場合が多いが、北海道夕張山地の神居古潭構造帯では葉片状を呈する場合が多い。
 カンラン岩は含まれる輝石によって、ダナイト dunite、レルゾライト lherzolite、ハルツバージャイト harzburgite、ウェーライト wehrliteに分類される。



超マフィッ岩類の分類と命名(IUGSによる)

 注)構成造岩鉱物がカンラン石(Oivine)90%以上でダナイト,カンラン石40〜90%で他が斜方輝石(Orthopyroxene)のみから成るとハルバージャイト、単斜輝石(Clinopyroxene)のみから成るとウェーライト、両種類の輝石を含むとレルゾライト(Lherzolite)に分類される。
 カンラン石40%未満は大部分が輝石岩(輝岩):パイロキシナイト(Pyroxenite)およびウェブステライト(Websterite)と呼ばれ、一般にカンラン岩やハンレイ岩のマフィック岩体に伴われ、小型の岩体を形成する。

 蛇紋岩 serpentiniteは主要構成鉱物が蛇紋石serpentineであるが、蛇紋石は同じ化学組成で同質異像(異なる結晶構造)のアンティゴライト antigorite、リザルダイト lizardite、クリソタイル chrysotileに分類される。クソタイルはしばしば絹糸状・針状の結晶の集合となる脈として産出し、アスベストの原料となる。

日高変成帯 幌満カンラン岩体の研究の進展と展望


(1)地質学雑誌第127卷第5号269-291ページ,2021年5月
Jour. Geol. Soc. Japan, Vol. 127, No.5, p.269-291,May 2021
総説「マントルの圧力−温度−変形−時間経路の解読:幌満かんらん岩体研究の現状と新提案」
Decoding pressure-temperature-deformation history of the mantle:Critical review on the Horoman peridotite complex and new proposal
秋澤紀克,小澤一仁,芳川雅子 Norikatsu Akizawa,Kazuhito Ozawa and Masako Yoshikawa

[要旨]
 地球表面に露出しているかんらん岩は、過去においてマントルに存在していた物質であり、マントル物質の化石である。かんらん岩が経験した圧力-温度-変形史(P-T-d-t経路)を復元することが出来れば、どのようにマントルが地球内部で運動し、それに伴いどのように温度変化と変形が進行したのかを明らかにすることが出来る。
 そのP-T-d-t経路をかんらん岩の地表への上昇による"化石化"の時点から連続的かつできるだけ過去に遡ることが出来れば、長期間にわたるマントルダイナミクスの理解を深めることが出来る。
 日高変成帯南部に位置する幌満かんらん岩体では、かんらん岩に記録された過去のP-T-d-t経路を詳細に読み解く研究が盛んに行われてきた。本稿では、幌満かんらん岩体のP-T-d-t経路に焦点をあてレビューを行い、定置に至るまでの最終上昇からできるだけ過去に遡って幌満かんらん岩体が辿った運動・熱。変形史を整理・概観し、新たな提案をする。
 Keywords:mantle peridotite, mafic rock,P-T-d-t pass, thermobarometry, symplectite, Horoman

1.はじめに

「幌満かんらん岩体のレビューは、2002年に実施された国際レルゾライト会議の際に制作された巡検案内書(Niida et al.,2002)や地質学会の巡検案内書(新井田・高澤,2007)ですでになされている。しかし、その後もP-T-d-t経路に関する新たな知見が積み重ねられてきた。
 幌満かんらん岩体が露出する日高変成帯は、新生代に形成された島弧地殻の衝上断片と考えられており、変成度は非変成からグラニュライト相にまで達する(例えば、Komatsu et al.,1983)。Osanai et al.(1992)の見積りによると、最高で0.7GPa-870℃に達する変成作用を被ったとされる。地殻構造の復元による日高変成帯の厚さは最大で20〜23kmと見積もられ(小松ほか,1982)、最高P-T条件は幌満かんらん岩が位置する日高変成帯の西側が記録している。
 それに対して、幌満かんらん岩体は最高で2.3GPa-1070℃から上昇を始め、0.8GPaで800℃以下まで冷却したと推定されている(Ozawa,2004)。
 このような地殻物質とマントル物質に記録されるP-T条件から、幌満かんらん岩体は、日高変成帯を構成する地殻物質より高温かつ深部にあったマントルが、低温であった日高変成帯中にもたらされることで放熱・冷却したリソスフェアマントルの化石であると考えられる。」



日高変成帯の地質図(komatsu et al.1989)
 MASAYUKI KOMATSU(1999) Geology and Structure of the Hidaka metamorphic belt;A review of recent research works, TECTONIC EVOLUTION OF ASIA,The Second Joint Meeting of Korean and Japanese Structure and Tectonic Reseach Groups.pp19.

2.幌満かんらん岩体の地質概観

 幌満かんらん岩体は、西側は変はんれい岩、緑色片岩、黒色片岩および非変成日高累層群と、東側はマイロナイト化したグラニュライト相の片麻岩および角閃岩と接し、その広がりは8km×10kmに達する(Niida,1984)。
 岩体はせん断作用を受けた組織を示すが、接触変成作用を受けた痕跡がなく、蛇紋岩化作用も局所的である。幌満かんらん岩体は周囲の地質体と境界断層で接しており、西側は東に傾斜した低角断層が想定されている(Yamamoto et al,2010)。
 「詳細な地質学的、構造地質学的な研究によって(Niida1974,1984; Sawaguchi,2004)、幌満かんらん岩体は緩やかな向斜構造をもつ層状岩体であることが明らかにされており、全体の厚さは〜3000mと見積もられている。」



共立出版 藤田至則・鈴木尉元「構造地質」pp85
「北海道幌満超塩基性岩体の地質図及び断面図」
Niida,Kiyoaki.(1974)Structure of the Horoman ultramafic massif of the Hidaka metamorphic belt in Hokkaido,Japan,J.Geol.Soc.Japan,80-31-44.



Fig2.Geological map of the Horoman peridotite complex

「幌満かんらん岩体において特筆すべき点は岩石の新鮮さであり、蛇紋岩化など、低温の変成・変質作用をほとんど被っていない。変形構造も特徴的であり、露頭では、輝石、スピネル、両輝石−スピネルシンプレクタイトの示す面構造や線構造が容易に観察できる(例えば、Niida1974; Sawaguchi,2004)。」
「幌満かんらん岩体は、地質学的・岩石学的特徴から、層厚約2000mの岩体下部(Lower Zone)と、層厚約1000mの岩体上部に分けられる(Niida,1984: Ozawa,2004)。
一方で、構造岩石学的解析結果から、岩体は構造的下位より次の5つに区分される。(1)基底せん断帯,(2)ポーフィロクラスト帯,(3)遷移帯,(4)内部せん断帯,(5)等粒状帯.(Sawaguchi,2004)。」

3.かんらん岩の多様性の形成史
 1)Main harzburgite-lherzolite suite (MHL)
  岩体の98%を占める(Takahashi,1991)
 2)Spinel-rich dunite-wehrite suite (SDW)とMHLの関係性

 年代測定値の検証、同位体岩石学、岩体が受けた溶融・メルト程度の整理、形成場の検討・・・受動的大陸縁辺部に囲まれた中央海嶺下

4.マフック岩層の形成史(層状マフック岩)
5.旧採石場に産する巨晶ダナイト層の形成史
6.幌満かんらん岩体の上昇史
 放射性年代,シンプレクタイトの成因や形成ステージ
7.放射性同位体年代が推定されていない小規模岩体

8.まとめ
 本稿で最も妥当であると考える幌満かんらん岩体の履歴は次の通りである(以下は概要、抜粋)
 幌満かんらん岩体は1Ga前後に中央海嶺下に断熱上昇したアセノスフェアであり、日高変成帯に定置する50Ma以前に島弧リソスフェアに転化した。50〜20Maに上昇がはじまり、日高変成帯の火成作用と変成作用を駆動した。
 幌満かんらん岩体は、最終上昇直前には島弧リソスフェアの地温勾配を記録しており、岩体下部は1.9GPa-950℃、岩体上部は2.3GPa-1070℃に存在していた。つまり岩体下部が上部より浅所のリソスフェアを構成していた。この逆転は、アセノスフェアがリソスフェア内から日高下部地殻に流動上昇するにつれて、鉛直上昇から水平流動に移行し逆転することで説明できる。

(作業中)
 
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