大陸移動説から発展したプレート・テクトニクス |
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2019.4.28 |
「大陸と海洋の起源−大陸移動説−」アルフレッド・ヴェーゲナー,都城 秋穂・紫藤文子訳,岩波文庫(1981年10月)上巻p244,下巻p249.(Alfred Wegener,Die Entstehung der Kontinente und Ozeane,1929) 有名な大陸移動説で、当時のドイツが科学の世界最高峰であったことから 総合的に考察された理論。ヴェーゲナーは気象学が専門であったが、大西洋 の両岸が浅海までを大陸とした場合、大西洋を無くすると見事に接合するこ とに着目し、古気象学、古生物学(当時の陸橋説に反論)、地球物理学的観 測結果(測地学,地震学,古地磁気学)を総合し、大陸(シリカとアルミニ ウムに富むシアル層;花崗岩質)が海洋地殻(シリカとマグネシウムに富む シマ層;玄武岩質)の上にのって漂移(漂い移動)するとした説。大陸の移 動をもたらす外力として、月の引力やシマ層の対流を考えた。 この大陸移動説は当時、地質学会に支持された地球収縮説による造山運動 論に対抗する学説であり、外力が不明で、地球物理学的観測精度や海底の調 査が進んでいなかったため、当時の科学界では、一部の科学者を除き、受け 入れらえない状況が続いた。 「新しい地球観」上田誠也著,岩波新書(1971年3月) 地球は地殻と上部マントルの厚さ約100kmのリソスフェアのいくつかのプ レートに分割しており、大洋の深海に長くそびえる中央海嶺において玄武岩 質の火成活動によって形成され、これが大洋底をベルトコンベアのように送 られ、日本海溝やマリアナ海溝で代表される海溝で沈み込む(subduction) とする地球構造論(テクトニクス)。海洋底拡大論を含み、第二次大戦後、 大陸移動説が復活、進展した学説となった。 ![]() H.H.Hess”History of Ocean Basin” 海洋底拡大説,地球詩 (IWANAMI GRAPHICS 11.生きてる地球・上田誠也.p41) 中央海嶺の両側に地磁気の正逆模様が観測され、中央海嶺から離れるほど 年代が古くなることが推察されること、中央海嶺を胴切りにする特殊な断層 (トラスフォーム断層)があること、海洋地殻の形成年代が中央海嶺から遠 ざかるほど古くなること、沈み込み帯での地震や火山活動がプレートの沈み 込みsubductionによることなどを理論の根拠としている。 ![]() 世界の海底地形と海洋拡大 力武・萩原「物理地学」(1976)東海大学出版会,p251 ![]() 世界の海底地形鳥瞰図 (B.C.ヒーゼンによる) 太平洋西側(日本側)か海底火山や海底火山台地が多く起伏に富んでい る。海洋底拡大説の証拠とされる海洋地殻の年代や性状はこの地域では不詳 の段階。 ![]() 世界のプレート区分 力武・萩原「物理地学」(1976)東海大学出版会,p255 日本海のプレート境界など、マイクロプレートの新たな区分認識もある。 |
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プレート・テクトニクスの課題 |
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2019.4.28 |
1)海洋プレートの沈み込みを自重によるものとしている(テーブルクロス理論)が、力学的な根拠付けが不十分である。 2)大きな地震の発生に伴い、マイクロプレートを想定せざるを得ない(日本海の地震源で隠される幅せまの北米プレート、中米のココスプレートなど)が、形状が力学的には不自然ではないか。 3)大西洋では中央海嶺によって発生したプレートが南北アメリカ大陸とアフリカ・ヨーロッパ大陸縁辺で地震多発帯、海溝・沈み込み帯が発生していない。 一方で、太平洋では南北アメリカに近い海底に中央海嶺(海膨)があり、活発な火山活動・熱水活動を行っており、アジア側と南米アメリカ側でともに沈み込み帯を形成している。 また、東太平洋では北アメリカでは中央海嶺が大陸下にもぐり込んでいる。 このような各形態は、中央海嶺で生じたプレートが大陸を載せて移動し、沈み込み帯でマントルに没するとする太平洋型が決して一般的ではないことが分かる。各形態に場合分けすることは、十分な理論的解明がなく、理論がまだ完成していないことを示唆している。 ![]() プレートテクトニクスから見た造山論 NHK人間大学「地球・海と大陸のダイナミズム」上田誠也,p100 上から、大西洋型(大陸押し出し型)、太平洋型(海洋プレート沈み込み,縁海形成型)、インド-ヒマラヤ型(大陸衝突型) 4)深海底の情報は、深海台(大型の海底洪水玄武岩台地)の科学掘削船の調査が進行中であり、太平洋底の知識の蓄積で、新たな理論に変遷する可能性がある。 佐野貴司「地球を突き動かす超巨大火山」(2015) ブルーバックス,講談社 LIP:Large Igneous Province(大規模火成区)について オントンジャワ海台等:本格的な調査がこれから 5)別に述べる新しい全地球史・プルームテクトニクスとの理論的調和が研究途上で、今後の展開が大いに注目される。 深発地震の震源(深度100〜670km付近,上部マントル〜下部マントル上面付近まで)はプレート・スラブの沈み込み角度を示しており、観測データの蓄積によって、日本海溝-東北日本では30度、トンガケマディック海溝では45度、マリアナ海溝では90度に近い鉛直性など、沈み込み帯の個所によって違いがある、ことが分かってきた。 ![]() 引用:中島淳一「日本列島の下では何が起こっているのか」(2018),ブルーバックス,講談社,p152-159 本書は地震学専門の研究者が、主に日本列島とその周辺を対象にプレートの沈み込みによる地震発生と火山噴火メカニズムについて、広い分野の学識から総合的見地で最新の理論に基づき解説を行っている。 本書ではまず第1章から第4章で日本列島の地球科学を理解するための基礎知識を整理している。すなわちプレートとは何かを説明し、次いで地球の構造を概観し、その後、日本列島の地質の生い立ち、日本列島周辺のプレートの配置、沈み込む太平洋プレートやフィリピン海プレートの発達史を解説している。 次に、第5章から第9章で、沈み込む前の海洋プレートで起こる「含水化」(蛇紋岩化)に注目し、プレート内での水の挙動を説明し、そこから本書の目的である「日本列島の下」に目を移し、プレート境界地震、沈み込むプレート(スラブ)内の地震、マントルでのマグマ発生と上昇メカニズム、内陸地震の発生を紹介し、スラブから日本列島の地表にまで見られる一連の変動現象について述べている。沈み込む海洋プレートと大陸型プレートの境界で生じるスロースリップ地震について、2011年の東日本太平洋沖地震と南海トラフ地震を例に詳しく解説している。また、沈み込む海洋プレート(スラブ)内の圧縮と引張りを示す震源の二枚構造が最近発見されたこと、沈み込み帯の個所によってスラブの沈み込み角度に大きな違いがあることが分かってきた、が特に目を引いた。 最後に第10章で関東地方直下のプレートの構造と発生しうる地震について、2014年の地震調査研究推進本部の長期予測等から解説を加えている。 |
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