GEOENG 地質学と建設コンサルタント(理学と工学の融合へ)

ASR診断の方法

コンクリート診断(ASR等)最新技術書
2017.8.26
鳥居和之監修、山田一夫編集『コンクリート診断(ASRの的確な診断/抑制対策/岩石学的評価)』2017年4月11日発行,森北出版(株),全484ページ

 本書の目的は、第1部「実用面を意識したASRに関するコンクリート診断学」、および第2部「診断の基盤技術である骨材の岩石学的評価のための専門知識」の提示であり、合わせてアメリカやカナダ等の欧米のASRの国際的最新技術を提供している。本書は従来出版されているようなASRに関する日本国内の知見をまとめた入門書ではなく、海外の研究成果も含めた専門性の高い技術書となっている。

 日本国内では1986年のASR抑制対策制定(建設省)以降、新設構造物のASR発症が減少したとはいえ、1970年代〜1980年代にかけて作られた構造物を中心に、現在も北陸地方や全国各地で顕著な発生事例があり、鉄筋の破断例も問題化した。

 また、近年は国際学会によるASRのリスク管理と診断フローの提唱、および国内の原子力発電所のASR診断法の高度化が行われており、高い技術レベルの診断知識(急速膨脹性および遅延膨脹性ASR劣化の詳細事例、反応性生成物であるアルカリシリカゲルのカルシウムイオン交換や結晶化現象、外部硫酸塩劣化、遅延エトリンガイト生成劣化などのASRと異なる劣化)が詳細に解説されている。

本書の構成は次のようになっている。

第T部 ASRに関するコンクリート診断学
 1章ASR研究の系譜と展望
 2章ASR劣化に対する維持管理
 3章ASR診断のフローの実際の詳細
 4章骨材のアルカリ反応性評価と抑制対策
 5章新しい方法の提案

第U部 ASR診断に必要な基礎技術と専門知識
 6章ASRの作用機構
 7章多様化する骨材に起因する様々な問題
 8章コンクリートと骨材および混和材の詳細分析・評価方法
 9章骨材の岩石学的評価
 10章骨材の岩石学的産状とASRの可能性

付録 劣化事例集及びCD-ROM(豊富なコンクリートの顕微鏡写真を収納)

ASRの二大分類
2017.8.26
1)【急速膨張性ASR】安山岩・流紋岩などの火山岩のシリカ鉱物が反応したアルカリ骨材反応。一般に反応性骨材が100%の場合より、30%程度(無害骨材70%)の方が膨張性が顕著(ペシマム効果)である。
・モルタルバー試験で6か月以内に有害と判定できるもの。
・rapid expansive

2)【遅延膨張性ASR】堆積岩の微小・陰微小質石英が反応し、長期間にわたるアルカリ骨材反応を生じる。ペシマム効果が不明瞭
・モルタルバーで6か月以内に有害と判定できないが、コンクリートプリズム試験で1年以内に有害と判定できるもの等。
・late expansive, or slow reactive

(注)従来、カナダ等、世界的に報告されたアルカリ炭酸塩反応は、不純な石灰岩中の陰微小質石英のアルカリ−シリカ反応であったことが判明している(Katayama,2010)


 
inserted by FC2 system